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転生先は勇者の婿  作者: 蓮子蓮男
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第1話 姫勇者のプロポーズ 7

「え?異世界って…」

「はい。あなたが違う世界から来たということはわかっています。」

 王女はさっき『異世界』と言った。違う国と言う意味なら『異国』や『異邦』というのが適切だ。ヨシトの心に緊張が走る。違う世界、違う国、自分とは違う存在を受け入れる事というのは容易ではない。人が未知なる存在に出会った時、否定的な反応をすることは想像に難くない。まして、違う世界の人間などもってのほかだ。

「闘技場の魔力残滓とあなたから出る魔力反応から確信しました。」

「じゃあ、さっき言っていた結婚するというのは…」

「はい。もちろん本気ですよ。」

 フォリアは笑顔でそう言った。

意味がわからない。

 ヨシトはフォリアの意図を読もうと考えるも、理解できなかった。

「まあ、本題に入る前にあなたの名前を教えてくださいますか?」

 ヨシトは焦るあまり自分が名前すら告げていないことを失念していた。

「失礼しました。僕は…」

「どうしました?」

どうしてだろう。苗字を呼ぼうとしても言葉に詰まる。そもそも苗字が何であるか完全に忘れてしまっている。

「いえ、なんでもありません。僕はヨシトです。」

「では、ヨシトさんとお呼びしましょう。」

 ヨシトは女性に名前で呼ばれるなんて変な感じがしたが、今はそんなことを気にしている場合ではないと気を引き締めた。

「ヨシトさんはどうして異世界の何も知らない男に王女である私が結婚宣言などしたのか、大層疑問を持たれたと思います。それは当然だと思います。」

「そうです。僕はフォリアさ…様の言ってることはめちゃくちゃだと思います。」

「そんな、様だなんて。他人行儀な。さん付けでも呼び捨てでも構いませんよ。」

フォリアはそう言うと意地が悪そう笑った。ヨシトは勘弁してくれと思いながら話を進めた。

「僕はそんな容姿が良い方だとは思っていませんし、そもそもこんな話裏があるとしか思えないですよ。」

「ええ、そうです。何もあなたと一生を添い遂げようとは私も思っていませんよ。要は婚約者になって欲しいのですよ。」

「婚約者?それではあまり変わらないんじゃないんですか?」

「いえ、実際に結婚することと婚約することは違います。婚約は結婚の約束話するだけで実際に結婚するかどうか決まっていませんからね。まあ、王族間の結婚でそんなことが行われてしまうと、最悪戦争にまで発展することになるかもしれませんが。」

 ヨシトは戦争と言う単語を聞き唾を飲んだ。

「なら、尚のこと引き受けるわけにはいきません。第一結婚なんて早すぎますよ。」

 ヨシトがそう言うとフォリアは数刻前までの自分の言動を思い出し、我ながら飛んだ心変わりをしたものだ。と少し笑ってしまった。

「申し訳ありません。そうですね。私もそう思います。ですが、これはかなり効率のいい問題解決の仕方なのですよ。」

 フォリアはそう言うとまた少し悪い顔になった。ヨシトはなんか嫌な予感がするが続きを聞くことにした。

「それで、効率がいいとは?」

「そうですね。では、ヨシトさんが私の婚約者にならない場合どうなります?」

 フォリアがそう言うとヨシトは考える間もなく即答した。

「死にますね。あの国王様に殺されます。」

 当然の帰結だ。

 あの鬼のような形相、それに国王であるため権力は絶大。仮にあの場で異世界の住人と証明したとしても、生かすメリットがない限り九分九厘殺されるだろう。

「そうですね。まあ、運良く逃げたとしても土地勘の無いヨシトさんを捕まえられない程、我が国の騎士団は無能ではありませんからね。では、多少強引にでもヨシトさんを婚約者にしてしまった場合どうなるでしょう。」

 ヨシトはなんとなくフォリアが言いたいことが分かってきた。

 ヨシトが婚約者となればヨシトの身の安全は保証される。それに父とはいえ王様にあの態度を取れるという事は、フォリアの発言を無下にはできないのだろう。

しかし、だとすると…

ヨシトはもっとも単純でこの話の根幹に関わる疑問を呈した。

「なぜ、僕を助けるんですか。あなたにメリットは何も無いのに。」

 あまりに良い話すぎるのだ。何のメリットも無しに異世界人であるヨシトの身の安全を補償する事は常識的に考えてありえない。ヨシトはフォリアから出る次の言葉を恐る恐る恐る待った。

「そうですね。ヨシトさんにやっていただきたいことは…」

 ゴーン ゴーン

 フォリアの話を遮るようにどこかで鐘が鳴った。

「12時ですか。お昼ですが、ヨシトさんはお腹空いてますか?」

返事をするようにヨシトの腹が鳴った。

確かにこっちに来てから碌に飲食していなかったと思い照れるように「はい。」と返事をした。

「では、城下にいきましょう。私が案内しますよ。」

 フォリアは嬉しそうにそう言った。


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