第1話 姫勇者のプロポーズ 5
レーヴ城2階、謁見の間。高校の体育館以上ある部屋の前方、絢爛な二つの玉座の前。玉座の前の数段ある段の前に、ヨシトは縄で手と腰を縛られ腰布だけの状態で跪いていた。部屋を見渡すと自分の左右に甲冑姿の騎士が二名、玉座の奥の左右に二名、部屋の中央にある入り口から続くレッドカーペットの側には数名が間隔をあけ規律正しく立っていた。
「国王のにゅーじょーう!」
玉座の奥にいる騎士が高らかに宣言すると、奥から三人の人物が出てきた。国王ルキウスと王妃シャーロット、そして白基調のローブを着た男だ。
ルキウスとシャーロットは玉座に座り、その右に男が立った。その直後、騎士達が敬礼し即座に直立の姿勢に戻った。
「我はレーヴ王国国王ルキウスである。貴様何者だ。魔族の手のものか?嘘偽りなく答えよ。嘘をつけばその分、貴様の寿命が縮むと思え。それに娘の前で汚らしい裸体を見せたのだ!ただで済むと思うなよ…!」
ヨシトが愛娘の目を汚した事でルキウスは怒髪天を衝いていた。娘が知りもしない男の裸を見せられたら誰だってこうなるだろう。
どうする—————
ルキウスの怒りに気圧されながらヨシトは考えていた。正直に話しても信憑性は皆無だ。ここが異世界である確証はあるが、自分は違う世界の人間だと話したところで証拠がない。しかし、この世界の実態がわからず嘘をつけば最悪の事態を招く可能性もある。何が正解かわからず、ヨシトは沈黙してしまう。
「沈黙を貫くかそれもいいだろう。お前たちその者を地下牢に連れて行け。然るのち沙汰を下す。」
ヨシトが考えている内に王の意思は固まったらしい。ヨシトは騎士たちに連行されていく。
「ちょっ、ちょっと待ってください。僕は…」
「お待ち下さい。お父様。」
透き通った綺麗な声だった。
背後の扉が開かれ女の子が入ってきた。綺麗な金色の髪に赤色の瞳。髪は背中の中程まであり、桃色のドレスを来ていた。背格好はヨシトより少し高い程度だと思うが、姿勢が良いせいかより高く見える。誰が見ても見惚れてしまうような美女だった。女の子はゆっくりとヨシトの右前方に立った。
この子は—————
髪型や服装が変わっていた為少し気づくのが遅れたが、おそらく闘技場で見たで女の子だ。ヨシトはあまりの美しさに思わず見惚れてしまっていた。
「フォリア。一体どうしたのだ。お前が来る場では…」
「お父様。私は言いましたね。結婚相手は自分で選ぶと。」
「何だ。今その話は…」
「私はこの男と結婚いたします。」
女の子はとびきりの笑顔でそう言った。
ヨシトやその場にいたフォリア以外の人達はフォリアの言った内容を頭で理解するのに数秒を要した。
「何じゃとーーーー!?」
「えーーーー!?」
数秒後、ルキウスとヨシトの声が城内全域に響いた。