第1話 姫勇者のプロポーズ 4
ヨシトが墜落する数秒前。
試合後、ギルバースとヴァンは闘技場中央に移動すると、セルダイやフォリアのいる特別席に向かってレーヴ王国流の敬礼をした。(右手を握り左胸に、左腕は体に平行におろし、左足は右足より半足分後ろにずらしお辞儀する。)
場内に再び喝采と拍手の渦が巻き起こった。
フォリアもいつものように笑顔を作り拍手していると、空にとてつもない魔力を感じた。空を見ると何かが闘技場に向かって落ちて来ているのがわかった。
フォリアはすかさず転移魔法の応用の転装魔法を使用し、戦闘用の防武具を召喚、装着し特別席から飛び出した。結界を遠隔強制解除し一般観覧席を飛び越えアリーナに入った。フォリアの突然の行動により闘技場内の何人かがそれに気づき始めた。
フォリアは聖剣ネイアーデに魔力を込め落ちて来ている物に目をむける。
何?あれは、人?—————
落ちて来ているものが人であり、生きていることがフォリアの判断を鈍らせた。
ダメ、間に合わない。なら、—————
もう闘技場にいるほとんどの人が視認できるほど近づいてきていた。フォリアはこの距離の撃墜は被害が出ると判断し、剣を地面に突き刺し闘技場全体に結界を張る。
「みんな伏せて!」
フォリアは結界を最大展開し衝撃に備えた。結界と落ちてきた人がぶつかる。激しい光の後、衝撃が来た。アリーナの中央にいた二人落下に巻き込まれ、観覧席にいた騎士達は敵襲と判断し武器を取った。土煙の中に魔力の波を感じたフォリアは土煙を切り裂いた。
「ふぇ?」
そこには裸の男がいた。齢は自分と同じかそれより下に見える。体つきはこの世界の男にしては小柄で肉付きもそんなに良くなかった。土煙が晴れ全体像があらわになる。
「あ、あわ…ああ!」
言葉にならない声が出る。男子の裸など一度も見たことないフォリアの顔は見る見る内に赤くなっていった。何とも言えない空気の中、男と目が合う。
「え〜と、どうも?」
困まったように頭を掻き、首を傾げながら男が喋った。
「きゃーーーーーーー!」
「ひっ、引っ捕らえよ!!」
フォリアの人生で初めての悲鳴とともに思考を取り戻した王は騎士達に命令し男を取り押さえさせた。男はそのまま王城に連行されていった。
フォリアはしばらくの間気が動転してしまい休んでいたが、落ち着くと墜落場所を確認し何かに気づいたように足早に王城へと向かった。