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第一話「産声」

「おんぎゃあおんぎゃあ!」


 甲高い産声が部屋いっぱいに響き渡たる。その声に誘発されたのか、木製の扉の外からは歓喜の声が上がっていた。


 出産用に改造している寝台の上では赤髪赤眼の女性が息を切らしながら横になっている。


「うふふ。どう?ストーネ。……私の子供は男の子?それとも女の子だったかしら?」


 赤子を産み終えたばかりであるマルティベスは笑みを溢し、産婆を務めてくれた白いエプロン姿の膨よかな女性に自身の子供の性別を尋ねた。


 新しい命の誕生はいつだって尊いもので喜ばしいものである。だが、両手の中にいる生まれたばかりの赤ん坊を見たストーネは、マルティベスの質問に答えることはなく、まるで質問なんか聞こえていなかったかのように戸惑いの声を発した。


「これはいったいどういうことだい……!?」


 部屋の窓からは、茜色をした眩しいほどの日差しが差し込んできている。次期、夜になるであろう時間帯に生まれた赤ん坊の髪は、日差しの色をそのまま取り込むように同調する緋色で、泣いている間に時々見える左右の小さな瞳は浅い緑色で彩られている男の子であった。


 至って普通の容姿の赤ん坊ではある。見た目だけならば、そこら辺の赤ん坊より頭一つ抜き出て可愛いほどだ。彼のお腹に蹲っている異端なもの一点を除けばの話だが。


 小さな赤ん坊のお腹の上に、成人男性の足の小指ほどで、全身を真っ白に覆われた耳の長い毛玉が、目を閉じて小さくまとまりながら、ちょこんと乗っているのである。


 兎?と言えばわかりやすいだろうか。兎に角その異質なものを見たストーネは、声にならない驚きを抱くのであった。


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