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第6話

アルフォンス・ノーテンブルクは、兄のクリストファーとは違うタイプの美形だった。

栗色の髪に、濃い青の目。ただ、何よりも決定的に違うのはまとう雰囲気だ。

(何て言うか・・ダークだわ。)

話しかけにくい雰囲気。エリーゼも、婚約者として、困る時もあるだろう。

「こんにちは、アルフォンス様。」

エリーゼが話しかけると、アルフォンスはこちらをちらりと一瞥した。

(婚約者に、無言かい!)

私は内心ツッコミをいれながら笑みを絶やさない。

「今日は、お友だちを紹介したいのです。フィリア・フォンテーヌですわ。」

果敢に挑むエリーゼ。これは、本当にすっきりパートナーとダンスパーティーに行きたくて必死だな、と察する。

私は、身につけた最高級マナーと可能な最大の笑顔でアルフォンスに話しかけた。

「初めまして、アルフォンス様。フィリアと申します。エリーゼに頼み込んで紹介していただきました。お話したくて。ご一緒してもよろしいですか?」

アルフォンスは、私をちらりとみて、

「・・今日は忙しい。」

と短く告げると、そのまま席を立ってしまった。

(やっぱり簡単には難しいか。)

「上手く紹介できなくてごめんなさい。」

小さくなるエリーゼに、私はにっこり笑ってみせる。

「いいえ、充分です。ありがとうございます。」

ここからは、自分で頑張るしかない。武器はこの身一つだけなのだ。

次の日から、私は作戦を決行することにした。

作戦一 笑顔であいさつ。

とにかく接する機会を増やすべく、出没場所を分析して毎日どこかで挨拶する。さすがは王族。無視はされない。

作戦二 小さなおせっかいとちょっかい。

基本的にアルフォンスは一人でいる。

読書をしているか、ボーッとしているか。

お茶やお菓子を準備したり、本について質問したり、ちょっとした会話を試みる。

作戦三 偶然の出会い。

アルフォンスが来そうな場所に用事を作る。声はかけなくてもいい。ちょっとでも気づいてほしいのだ。


我ながらギリギリの作戦。ある日、とうとうアルフォンスに核心をつかれた。

「一体何が目的だ?」

一週間ほど作戦を続けた結果、アルフォンス自身との距離はそこまでだったが、周りはだんだん、アルフォンスと私が親密であると認識しはじめた。

そうなれば、よくも悪くもアルフォンスの周りで、私の話題が出ることが増える。

無視できなくなったときに、捨て身でぶつかる気だった。

「アルフォンス様に、パーティーのパートナーをお願いしたいのです。」

直球、どストレート。

アルフォンスは、意外にもあまり動じていない。

「・・フィリア嬢。俺は君のパートナーに向いていない。」

アルフォンスはぼそりと言う。

「なぜそう思われるのです?」

「俺をパートナーにしても、なんの得もない。」

そこには劣等感が強くにじんでいる。

「兄上・・クリストファーが、君の事を気にしていた。なんなら彼に頼むといい。」

「それはだめなんです!」

力強く否定してから、言い直す。

「クリストファー様には、婚約者がおられます。その方を差し置いて、お願いなどできません。」

その言葉は、アルフォンスに違う捉え方をされたようだった。

「なるほど。エリーゼのためか。」

なんか、似たような曲のタイトルがあった気がする、と思いながら、さすがに友達を悪者にするわけにはいかず、否定する。

「私の方からお願いしたのです。ダンスパーティーを欠席するわけにはいきません。でも、お相手がみつからなくて。」

すると、アルフォンスは鼻で笑った。

「そんなわけはないだろう。俺ですら名前は聞いていた。見た目も家柄も、放っておかれるはずはない。何人かから誘われているはずだ。」

鋭い。攻略対象以外にも男子生徒は多く、実は既に何人か申し込まれていた。だが、情報通のエリーゼが、彼らには婚約者や、密かに思いを寄せるご令嬢がいることを教えてくれている。

もう、ごまかすのは無理か。

私は、本心を打ち明けることにした。

「ご令嬢たちを、敵に回したくないんです・・。」

目の前のアルフォンスが、ぽかんとした。

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