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セドリックの後日談5

フィリアさんとアルフォンス様が同時に動いた。

フィリアさんは双子に真っ直ぐに走り、アルフォンス様もそちらに向かう。

言い訳になるけど、僕がとっさに動けなかったのには理由がある。

(ランバート家のテラスに賊の侵入??)


わがランバート家は、王国の影の担い手だ。

そうとは見えぬように偽装しているが、ランバート家の面々も、執事、コック、侍従にメイドに至るまで、腕に覚えのある強者ばかり。

もちろん警護も厳重で、普通の悪党は屋敷の外壁に触れることすらできない。『普通』は。

だから、反射的に彼らが何者か考えてしまったのだ。


だが、その瞬時の間にフィリアさんは、双子と賊の間に滑り込み、庇うように覆い被さった。

そして、賊が怯んだ隙に、アルフォンス様が追い付き、フィリアさんを後ろに賊に反撃する。

アルフォンス様が一人目の拳を腕で受けた時。


「・・やめろ、イアン。」

僕は冷えた声で制止した。

びくっとした反応があり、動きが止まる。

やっぱりか。という思いと、この件の黒幕にイラつく。

イアンは、うちの侍従だ。

組み手の時に右肩が上がる癖がある。


「リリア、マリア。気は済んだか?」

続けて呼びかけると、若干青ざめた双子が、フィリアさんの陰に身を縮めていた。


「どういうことだ?説明してくれ。」

最もな反応のアルフォンス様。

「あら、じゃあ、今のが『双子の試練?』気づかなかったわ・・。」

嫌な感じの納得をしているフィリアさん。こっちは何か知ってるな。


「イアン、他全員、覆面とって謝罪しろ。」

イライラを八つ当たりしながら命じると、思ったとおり。

侍従のイアンを初め5人の賊は、皆、わがランバート家の使用人たちである。

「「「「「申し訳ありませんでした!!!!!」」」」」

一糸乱れぬ謝罪。

「リリアとマリアに頼まれたんだろ?でも、それだけじゃないな。お前たちが従ったのは、他にもたくらんだ人がいたからだ。・・父上。出てきてください。」


「見破るのが早すぎる。可愛くないぞ、セドリック。」

そんな声と共に登場したのは、ランバート伯爵と、申し訳なさそうな顔のアナスタシアさんだった。


「何してるんですか?父上。」

可能な限り冷ややかに言ってやる。

「双子が、兄をたぶらかすフィリア嬢の本性を暴くのだとはりきっていてな。とっさの時には本質が出やすいからと、一芝居うつことにしたんだ。・・ああ、ちなみにアナスタシアさんはさっき知ったんだ。怒ってはだめだぞ。」

父の態度はいつも、腹が立つくらい飄々としている。

「全く。怒るとか、謝罪とか。怒る権利があるのも、謝罪されるべきなのも、僕じゃないでしょう?」

まあ、僕も怒っている。めちゃくちゃ怒ってはいる。

(このせいで、フィリアさんから嫌われたらどうしてくれるんだよ!?)


「えーと。気になるんですけど。」

こちらの思いとは裏腹に、怒りも怯えも0の声が空気を変えてしまう。

皆が注目する先には、フィリアさん。

「私、どんな風に見極められたのでしょう?」

彼女の悪意なき視線は、まずは双子に向けられ、リリアとマリアはきょとんと顔を見合わせてごにょごにょ言い始める。

「それは、その、私たちを守ろうとしてくれましたし。」

「しかも、完璧に、守れるように全部隠そうとしてくれましたし。」

「っていうか、ホントに賊なら大怪我してますわよ?」

「っていうか、私たち、実はイアンくらいなら倒せます。」


「・・余計でしたか?」

悲しそうにそう聞くフィリアさんに、双子は慌てて首をふった。

「「いいえ!嬉しかったです!フィリアさん、好き!!」」

「まあ、良かった!リリア様とマリア様に嫌われてしまったら、もうセドリック君と親しくできなくなりますもの。」


フィリアさんの言葉に、聞き捨てならない、と思っているのは、アルフォンス様と僕だけだろう。理由は逆だろうけど。

「お兄さまと仲良くしたいのですか?」

キラキラした目で聞くリリアに、同じくらいキラキラした目でフィリアさんは答える。


「もちろん。セドリック君は大切な、大切な、『友人』ですから。」


「フィリアさんって、天然さが時々恐ろしいですわ。」

「ああ。ああいう聖女系の悪女に、うちの家系はめちゃくちゃ弱いんだ。かわいそうに。」


近くで、アナスタシアさんと父上の会話が聞こえていたが、もう砂になっていた僕にはどうでも良かった。


波乱?のお茶会は無事に終了し、見送りにて。

「アルフォンス様。」

後半、置いてきぼりをくらっていたアルフォンス様に、一応次期当主として呼び止める。

「せっかく来ていただいたのに、なんか、すみませんでした。あと、あの時、妹たちを助けるために動いていただいてありがとうございました。」

頭を下げると、アルフォンス様は罰が悪そうに答えた。

「いや。そう言われると、逆に申し訳ないんだが・・。」

ん?と思って顔をあげると、アルフォンス様はちょっと赤くなっている。

「すまない。俺の目にはフィリアしか見えてなかった。フィリアを守ろうと動いた結果なだけだから、礼は彼女に頼む。」

「・・もう、いいです。」


かろうじて笑顔を貼り付けて送り出すと、双子が僕の手を、左右からきゅっと握ってきた。

「お兄さま。フィリアさんって、良い方ね。」

リリアが言う。

うん。知ってるよ。

「あのね、お兄さま。フィリアさんに言われたの。」

マリアがうつむきながら言う。

ん?何を?

「「私たち、お兄さまの『運命の女』なんですって。」」


(えーと。フィリアさん。もうちょい言葉を選んでしゃべりましょう?この二人、ませてるけどまだ十歳なんで。というか、二人が運命の女って、それって・・。)


彼女の未来についての発言は、予想ではなく、予知である。特に恋愛については。


(はあ。それを好きな相手から聞かされる僕って、かわいそうだろ・・)


僕はフィリアさんへの恋心に蓋をしながら、それでも、双子との未来をぼんやり考え始めていた。


『完』

今度こそ完結です。

間延びした文章になったところもありますが、セドリック君のお相手令嬢だけ、本編に出せていなかったので、登場人物たちをできるだけ幸せな方向で導きたくて後日談を書かせていただきました。


今の書く力で精一杯書きました。

評価頂いた方、ブックマークして頂いた方、感想を書いて頂いた方、そして、読んでくださった方全てに、感謝しかありません!


また、書きたい物語ができたら、頑張って投稿しますので、その際には応援よろしくお願いいたします!


mai

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