セドリックの後日談4
「まあ!アルフォンス様もいらしたのですね?」
アナスタシアさんは少し困ったような笑みを見せたが、すぐにもう一組のカップを用意してくれた。
お茶会は和やかにすすむ。
「お庭を案内しますわ。」
フィリアさんの手作りマフィンを頂いて一段落すると、アルフォンス様に興味津々のリリアとマリアは二人で彼を連れていってしまった。
「あ、私もちょっと席をはずしますわ。打ち合わせをしなくては。」
アナスタシアさんが不自然に席を立つと、僕はフィリアさんと二人きりになった。
「可愛らしいお二人ですね。とても賢くて、先が楽しみなレディたちだわ。」
フィリアさんの声は明るい。
「フィリアさんって、子ども好きですか?」
僕は聞いてから、彼女にとっては僕も子どもかなとちょっと落ち込む。
「ええ。未来への可能性にあふれてますから。・・彼女達くらいの子達を教えるのが、私の夢なのです。」
不意に飛び出したフィリアさんの夢の話にドキッとする。
「教えるっていうのは、学園で?」
そう聞くと、フィリアさんは首をふった。
「いつか、学校を作りたいのです。もともと教師を目指していましたし、この世界では貴族や、裕福なものにしか教育が受けられないでしょう?知識はいきる上で武器になるもの。本来は平等に与えられるべきです。」
真っ直ぐな目には迷いがない。
(学園でみんなが足の引っ張り合いをしてる中で、考えてることが全然違う。)
そういうフィリアさんは素敵だなと改めて思う。
「今の、夢の話って、誰かにしたことあります?」
ふと思い付いて聞くと、
「そういえばなかったですね。最初はいろいろ警戒してましたから。」
「言わないで下さい。」
僕の言葉に、フィリアさんは驚いたように目を見開く。
「卒業までは、僕以外には言わないでください。」
本当は分かっている。
アルフォンス様のように、僕は全てを捨ててまで、フィリアさんを得ようとまだ思えない。
寄り添う二人に入り込む余地はない。
僕が何かしたくらいで、フィリアさんが僕のことを好きになるような、そんな人なら、助けたいとも思わなかったし・・好きにもならなかった。
だから、一つくらい許されるよね?
「・・分かりました。それまでは二人の秘密ですね?」
いたずらっぽく笑ってみせるフィリアさん。
この恋は叶わないかもしれないけれど、僕は気が済むまで彼女を応援しよう。
僕のなかに穏やかな気持ちをくれるのは、フィリアさんだけだから。
「次はフィリアさんを、とのことだ。・・レディたちから、質問責めだ。元気なご令嬢たちだな、セドリック。」
心なしかげっそりしたアルフォンス様が帰ってくる。
「あら。では次は私がお相手しますわね。」
フィリアさんはにっこり笑って双子のもとに行く。
その後ろ姿を見送ったのも束の間。
事件は起きた。
「「きゃああああ!」」
重なる双子の声。
突然、見るからに怪しい黒づくめの男たちが乱入し、双子に襲いかかったのだ。




