セドリックの後日談3
「「お兄さま。」」
ダブルで聞こえる鈴のような声。
「なんだい?リリア、マリア?」
そっくりな顔のこの二人は、首をかしげる角度まで同じだったりする。
でも、一緒に暮らしていると、明確な違いがわかってくる。
リリアは明るくて利発、思ったことはすぐに口にするタイプで、若干つり上がった目をしている。
マリアは意思は強いがどちらかというと秘めるタイプで、若干たれ目だ。
使用人たちでさえ見間違うほどの微かな違い。でも、僕は間違ったことがない。
「明日はお茶会ですわね。」
「楽しみですわ。」
ふふふ、と笑う二人だが、この楽しみ、に少し不穏な空気を感じる。
「マナーの実践だろ?頑張るんだよ。」
さりげなく余計なことをしないように牽制したつもりが、返って刺激してしまったようだ。
「噂のフィリア様にお会いするのですもの。」
「しっかりとおもてなしをいたしますわ。」
双子の笑顔は愛らしい。
だけど、
(絶対、どんな人か見極めようとしてるよな?)
すっかりランバート家に染まっている双子が、どんな風にフィリアさんを試すのか、気にはなるけど。
(フィリアさん、ああ見えて人たらしだからなあ。)
たらし込まれた自分が言うのもなんだけど。
リリア、マリアとフィリアさんの間にどんなことが起きるのか、ちょっと楽しみにしてる僕もいる。
まあ、妹たちのお眼鏡にかなうかなんて心配してないもの。
「明日か。」
明日は僕の家にフィリアさんが来る。
それだけでちょっとはしゃいでいる僕である。
「・・で?なんであなたまでついてくるんですか?」
お茶会当日。
フィリアさんの訪れを満面の笑みで迎えた僕は、その笑顔のまま凍りついた。
「近くにいく用事があって送ってきたんだ。君にはきちんと礼も言ってなかったし。」
「礼?」
「パーティーの日、フィーを守ってくれただろ?君がいなければ今はなかった。」
なんであなたが礼を言うんですか?
っていうか、感謝してるなら、保護者みたいにくっついてこずに、フィリアさんとの時間を譲ってくださいよ。
それに、今、フィリアさんをフィーって呼びましたよね?あきらかに僕に牽制してますよね?
「私もちゃんと言えてなかったわ。改めて、本当にありがとう。」
「お礼なんていいんですよ。僕はフィリアさんを助けたかっただけなんだから。」
お出かけ用のドレスを来たフィリアさんからも頭を下げられて、ちょっとデレデレした瞬間。
「「いらっしゃいませ」」
鈴がなる声が二つ、聞こえた。
「リリアです。」
「マリアです。」
色違いのドレスで現れた双子たちが、行儀よくお辞儀した。
「こんにちは。フィリア・フォンテーヌです。今日はお招きありがとうございます。」
答えるフィリアさんも丁寧にお辞儀する。
双子の瞳がキラキラしている。
「そちらのお兄さまは?」
「フィリアさんを送って下さったんだ。ありがとうございました、アルフォンス様。」
リリアの問いに素早く答える。
この流れなら、帰ってくれるかも!
だが、その期待は、リリアの次の言葉で砕かれた。
「まあ!ぜひご一緒していただきたいですわ!ねえ、マリア!」
そばのマリアもこくこくと頷いている。
二人から向けられる期待の眼差し。
「・・良かったらどうぞ。」
ムスッとした言い方になったのは、子どもっぽかったかもしれない。
それでも、心からの笑顔で嬉しそうに笑うフィリアさんを見るとアルフォンス様に嫌みの一つでも言ってやろうと思っていた気持ちも消えてしまう。
双子の案内で、僕たちはアナスタシアさんが整えてくれているテラスのお茶会に向かった。




