後日談二(クリストファー目線)
「・・ロザリンド。」
「そんなに怯えた顔をなさらなくても大丈夫ですわ。」
僕はそんなに怯えたように見えただろうか?
「私、喉が渇いておりますの。お茶でもいたしませんか?」
ロザリンドの誘いを断れるはずもなく、僕たちは緊迫感のある二人のお茶会をする。
温かい紅茶は緊張を和らげるが、ロザリンドの意図が分からず会話もないままに時間が過ぎた。
「・・だめですわね。全然だめです。」
ロザリンドがティーカップをことりと置く。
紅茶が口に合わなかったのかと思っていると、彼女の鋭い目に射ぬかれた。
「クリストファー様。やる気が感じられませんわ。私を落とす気がおありですか?」
ちょっとむせた。全然だめです、とは僕のことらしい。
「・・ロザリンド。分かっていると思うが、僕は君のことは。」
今さら愛をささやく方が無理というものだ。
すると、ロザリンドは心底あきれ返った顔でため息をついた。
「クリストファー様。あなたは『私にふられた』のです。あなたからの愛の言葉などいりません。」
突き放されて体温が下がる。
だが、ロザリンドは続けた。
「クリストファー様。私、愛など求めておりませんわ。クリストファー様と私に必要なのは、信頼関係です。」
「信頼・・?」
何を言われているのか分からず聞き返すと、ロザリンドは今までみたことのない顔で笑う。
「私、嬉しかったのです。未来の国王たる者、裏工作のひとつもできなければ国が滅んでしまいます。ですから、私も全力で迎え撃たせていただいたのです。」
その笑顔は妖艶。なぜか目が離せない。
「・・でも、詰めが甘くて見ていられませんでしたわ。やるならもっと緻密にことを進めなければ。」
ロザリンドはささやく。
「あなたが私を信頼して、相談してくださっていれば、フィリアさんを手に入れる協力をしましたのに。側妃は国王の権利ですもの。フィリアさんのことは嫌いじゃありませんし。」
ロザリンドと策略を練って、フィリアを手に入れる?
その様子を想像して、意外と悪くない、と思う。
「今からでも構いませんよ?」
だめ押しをするロザリンドに、苦笑いして、首をふる。
「いや。フィリア嬢のことはもういい。それよりも・・。」
ロザリンドが意外そうな顔で僕を見る。
「ロザリンド。君は悪女のふりが上手だな。曲がったことは嫌いなくせに。」
そう。ロザリンドはそう言いながら、その実正論を言うし、正面突破タイプだ。
婚約者として、昔から近くにいたのだから、僕はよく知っている。
「あら。私だって、悪女にくらいなれますわ。クリストファー様の隣に立つのですもの。」
顔を微かに赤らめてそう言うロザリンドを、初めて可愛いなと思う。
(うん。これはちょっとはまりそうだ。)
「ロザリンド。僕は君に誠実ではなかった。すまなかった。」
言いたくなかった謝罪の言葉がするりと出てくる。
「許しません。私、傷つきましたもの。でも、私たちはこの国を受け継ぐ立場です。だから今度は・・。」
「私を攻略してくださいませ。今度はもっと緻密な作戦で。」
そう言って笑うロザリンドは、綺麗だなと思う。
何て言うんだっけ?
「・・ツンデレ?」
「なんですか?」
不思議そうに聞くロザリンドに僕はお得意の、とろける笑顔をして見せた。




