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第35話挿話(アルフォンス目線)

(言ってしまった・・)

王宮の自分の部屋にて俺は脱力していた。

後悔はない。あの場面で言うことにしたのは、流れ的にクリストファーの皇太子即位が撤回される可能性がででくれば、水面下で俺を皇太子に据える動きが出てくることを察知したからだ。


冗談じゃない。俺はいろいろ考えて、結論をやっと出したところだったのだから。


あの日、温室で。

フィリアは、長い長い打ち明け話を始めた。

前世の記憶をもって生まれてきたという、おとぎ話のような話。

でも、それならば頷けることもある。テストに名前を書き忘れて0点、のことなど。・・ということは、あれもクリストファーが裏で手を回していたことになる。

どうとらえたらいいか、すぐには決められない話。

だが、少なくとも、クリストファーもまた、同じような記憶を元に動いていることは確実に思われた。


彼らにとってはゲームでも、自分たちにとっては現実世界(リアル)だ。

情報という、優位性を自分のために使おうとしているクリストファーには憤りを感じるが、同じ感情をフィリアにはどうしても抱けなかった。

(惚れた弱み?どちらかというと、フィリアと同じ記憶があるかもしれないというだけで、クリストファーへの憎しみが増すんだが。)

フィリアの前世より自分にとってもっと大事なのは、フィリアが言ってくれた


『ダンスパーティーのパートナーを、あなたに頼ることにして、良かった。アル、とあなたを呼んで過ごした時間は、とても温かい時間でした。』


の部分だ。

それが嬉しくて、そちらの方を何度も思い出してしまう。


フィリアの言うことなら、それが夢のような話でも信じよう。

話をしているフィリアの様子は嘘をついているようには到底思えない。

その前世の記憶があったから、俺たちの出会いがあったというならなおさらだ。


ただ、それとは別に、俺には解決しなければならないことがある。

恋人のふりだ、と言いながら、抱き締めてみてはっきり分かった。

恋人の「ふり」はもう限界だ。

ダンスパーティーの時は、エリーゼとシュバルツのためにフィリアを利用しようとした。

今は、ふりではなく、フィリアに本当に気持ちを伝えるために、婚約を白紙にしたいと思っている。


「フィー。」

そう呼ぶのが最後にならないように祈りながら、俺は呼び掛けた。

「話してくれてありがとう。俺は全て信じる。ただ、それとは別の理由で、恋人のふりをする契約は、なかったことにしてほしい。」

ショックを受けているように感じたのは、俺のエゴだろうか?

「エリーゼ達のためではなく、自分のために、正しい道筋で婚約解消をしたいんだ。誰も利用せず、誰にも嘘をつかず。」

それができて初めて、俺はフィリアに思いを伝える権利を得る。


「・・分かりました。今まで、ありがとうございました。」

フィリアから告げられた別れ。

ズキンと胸がいたんだが、必ずもう一度彼女と笑い合うのだと決めた。


皇太子即位パーティーがフィリアの言っていたとおり早まり、貴族たちはいろいろな思惑で忙しそうだった。

一方俺自身は完全に王位継承争いから落ちていく立場のため、周りは静かなものだ。

俺自身はクリストファーの皇太子即位自体はむしろ歓迎だ。

だが、クリストファーはフィリアを手に入れるために着々と準備を進めているようだ。

側妃に迎える、と言った言葉が本当だとしたら、それを阻止するには奴が皇太子としての地位を磐石にしてロザリンドと結婚する前に、フィリアの心を掴んで妻にするしかない。

(いや、そんなことできるのか?俺は?)


だが、クリストファーの執念は、そんな程度ではなかった。


(しかし・・)

王宮のベッドの上で、先程のパーティーを反芻する。

『ご令嬢たちを敵に回したくないんです・・。』

フィリアがかつてそう言った時、俺は何を言っているのかよく分かっていなかった。

しかし、今日のクリストファーの転落ぶりは見ていて恐ろしいほど急降下だった。

ああなった理由は、間違いなく、

『ご令嬢たちを敵に回した』結果だ。

ロザリンドとアナスタシアは正面から。クレアは内部から。男たちも関わってはいたが、彼女たちがいなければあの鮮やかな逆転はなかっただろう。


それにフィリアも。

表にでることを嫌うランバート家のセドリックが、あそこまでしたのは、クリストファーがフィリアを攻撃しようとしたからだ。


(あいつ、穏やかな顔だったけど、あれはものすごく怒ってたよなあ。間違いなくセドリックもフィリアを・・。)


そう。正面からフィリアの心をつかみにいくなら、セドリックこそ、対等なライバルだ。

(セドリックはかなり手強いよな。)

でももう、あとに引く気は毛頭なかった。

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