第4話
シナリオは、絶対。
私はそれを痛感して、入学してから1ヶ月、どっぷり疲れていた。
あくまでも記憶頼みだから、避けようとしても、いつ、どこで彼らと出会うのか、完璧に予想ができるわけではない。
なんとなく、こけたり、物を落としたりといった私がドジを踏むパターンか、道が分からなかったり、必要な物がなかったり、座る席を探していたりといった困りごとパターンのどちらかで彼らに遭遇することは覚えていたため、できるだけ先手を打ってそういう状況は避けてみたのだが。
(完璧は難しいわ・・。)
そのちょっとした隙に、プチイベントは発生してしまう。しかも、攻略対象は友人同士でよく一緒にいるため、はからずも助けられるときは、逆ハーレム状態である。
攻略をはじめると、必ずご令嬢からのクレームが来るのもうなづけるというものだ。
でも、ほんっっとうに、望んでその状況になっている訳じゃないのだけど。
一つだけ分かっているのは、攻略が本格化する分岐が、6月に行われるデビュタント形式のダンスパーティーであること。
そこで私は、全員からアプローチを受ける。その中から誰かを選ぶところから、ラブ展開が始まっていくはずだ。
逆に言えばそれまでは、ご令嬢方とのいざこざも特になく、平和に暮らしていられるはず。
私は試行錯誤の末、ある結論に達していた。
(流れに身を任せよう。)
気をつけていても、こけるべきときにはどうせこける。
トラブルは向こうからやってくる。
助けられたら素直にお礼。
お返しも、したいと思ったら素直にしちゃおう。
難しいのは、嫌われても困るやんごとなき身分の方々が対象である、ということだ。
アウトオブ眼中が無理なら、せめて、うまくお友だちポジションにおさまりたい。
ダンスパーティー以降の恋の魔法にさえかからなければ、彼らはまっとうな方々と婚約していくはず。
「自然体でいこう!とりあえず6月までは。」
これは、決意だ!先延ばしではない!
そして、その時までに、6月にパーティーに行ってくれそうなフリーの人を探そう。
6月のパーティーは、実質の入学正式認定だ。学園のレディース&ジェントルメンたるもの、それまでにパートナーを決めてダンスの一つくらいこなせなければならない、という、社交部門の試験をかねている。
・・意味は分からないけど、そういう設定なのだからしょうがない。
同級生でなくてもいいが、学園の生徒に限られる。
何事も、まずはリサーチから。
私はとにかくお茶会にできるだけ参加して、こっそり情報収集を始めたのだった。
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