第34話
「誘拐事件のことなら、解決できますよ。あの日、フィリアさんを助けたのは僕なんで。犯人を倒したとき、こんなものを手に入れていました。ほら。分かります?皇子の護衛がきている制服の、カフスボタンです。」
私の前で、手品師のように、セドリックは指の間に挟んだカフスボタンを掲げて見せた。
「は!そんなものがあるわけがない!」
クリストファーが嘲笑する。
「・・ええ。あるわけがない。」
セドリックは静かに言う。
「でも、たった今、僕はあのときの誘拐犯が分かってしまいました。」
ざわめく会場。
セドリックは私の手をとり、国王と王妃の前まで行き、続けた。
「種明かしの許可をください。いただけるなら、アルフォンス様が可哀想なので解放してあげてください。フィリアさんの顔色がますます悪くなってしまう。彼女がいれば、彼は暴れませんよ。ね?アルフォンス様。」
「よいだろう。それでこの状況に決着がつくなら。」
国王はアルフォンスを解放させた。
セドリックがそっと私の体をアルフォンスの方へ押す。
「今は譲ります。」
と言って。
「大丈夫ですか?」
押さえられていたのが心配で、アルフォンスに尋ねると、アルフォンスは大きく息を吐き出して、私の肩を抱き寄せた。
「さて。あなた・・それからあなた。ここにきてください。」
セドリックが指差す方向には、護衛の男。
彼らはお互いの顔を見てから目を見開き、だが断れるはずもなく前にでてくる。
「カフスボタンが落ちていたのは嘘です。国王陛下直々の命令でもない、しかも汚れ仕事を、誇り高い制服を着て行うことなどしないでしょう?でも、人間は、後ろめたいことがあると、自信がなくなってしまうものです。」
セドリックの声が響く。
「先程カフスボタンを掲げた時、皆が僕に注目する中で、あなた方二人だけが自分のカフスボタンをこっそり確認していました。あなた方が、フィリアさんをさらったんですね。クリストファー様をナイトにするために。」
彼らの表情を見れば、セドリックが言うことは正しいと証明している。だが、クリストファーは振り絞るように言った。
「そんなことで犯人がわかるものか!証拠などないじゃないか!」
「・・あるんですよね。ここに。」
セドリックは冷ややかに言う。
彼が見せたのは、身に付けていた指輪。
彼の雰囲気にやや不釣り合いな大きな指輪には、何やら紋章が刻まれている。
「この指輪は、ある特徴がありまして。ある力加減で皮膚にぶつけると、紋章のかたちに針が飛び出してそこにアザを作るんです。はんこみたいに。」
そこにいた皆が、「証拠」を察する。
「僕はこの指輪を常に身に付けています。学園ではさすがに首からぶら下げてみえないようにしてますけど。・・さて、お二人は国王陛下に背を向けてください。」
そう言うと、彼らの向きを変えさせ、髪をあげて首の裏を露にした。
「・・もうよい。証拠は確認した。まさか、我が直属の護衛が令嬢誘拐など・・。」
「申し訳ありません!!」
二人の護衛は国王にひれ伏す。
「だが、それだけではまだクリストファーが黒幕とまでは分からぬ。彼らは、学園にかよう皇子『たち』のために王妃に預けたものたちだ。クリストファーが言うように、アルフォンスの命による可能性もある。」
その時、子供たちと王妃がそれぞれに反応を示す。
セドリックがため息をついた。
「みんな知ってるのに、国王陛下の耳には入っていなかったんですね。護衛は、一人残らずクリストファー様にあてられています。アルフォンス様のそばにいたのは、侍従のシュバルツさんだけですよ。あきらかなえこひいき?って言ったらいいのでしょうか?」
そして、とどめをさす。
「ここまで、見極めのために見てきましたが、やっぱり好きになれません。・・ランバート家も、クリストファー皇太子を支持しません。」
「ランバート伯爵。それもそなたの意思でもあるのか?」
国王の問いに、ランバート伯爵は柔和な笑みを崩さず答える。
「・・そうですな。残念ながら。」
名だたる公爵家、伯爵家にそっぽを向かれた皇太子。
お披露目のパーティーは、そのまま、彼の失脚の場となってしまった。
「なぜだ?なぜこうなった?」
うわ言のように言うクリストファーを慰めるものはいない。
疲れきった顔の国王と、項垂れる王妃。
ある意味歴史に残るパーティーである。
「あの。こんな時になんですが、せっかくの機会なので俺も聞いていただきたいことがあります。」
雰囲気を壊して、アルフォンスが声を発した。
そのまま、私を促して国王の前に進む。
「まだ何かあるのか?悪夢なら覚めてもらいたいものだ。」
国王の反応を無視するかのように、アルフォンスも爆弾を投下する。
「俺は、王位に全く興味がありません。継承権争いもする気がありません。だから、王位継承権を放棄させていただきたい。その代わり、エリーゼとの婚約を破棄して、結婚相手を自分でみつけることを許していただきたいのです。」
「お前たち、いい加減にしろ!!・・もう今日はよい。皆の者。見苦しい王家の醜聞を見せたことを申し訳なく思う。今夜は解散とする。・・関係者各位はおって連絡を待て。」
疲れきった国王の言葉で、パーティーはお開きになった。参加者に大きな衝撃を残して。
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