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第31話

ゲームのクライマックスは『ロザリンドの断罪』。

それは、予定より早まった、クリストファーの皇太子位決定の式典にて行われる。

もともとは学園を卒業してからの予定だったのが、早まるのである。


「今はその時ではないでしょう?」

という言葉に、クリストファーは納得して、ひいた。

いつからかは分からない。

だが、クリストファーもまた、ゲームのシナリオを利用しようとしていたことは確かだ。

それは同時に、私と同じように前世でこのゲームをしっていたことを意味する。


(だとしたら手強いラスボスだわ。)


「みなさん。その記憶の中に、この世界のことがある物語として存在するのです。」

ある意味予知のようなもの。だけど、少しずつ変わっていっているシナリオのこの先は、どうなるかまだわからない。


「私は、その記憶によって、自分に降りかかるであろう都合のよくないことを、全て回避しようとしてきました。自分中心で悔やむところもあるけれど、それは今は省きます。」

心の中は分からないが、皆真剣な顔で聞いてくれている。

「もうすぐ、予定より早く、クリストファー様は皇太子になります。そして、そのお披露目のパーティーで、ロザリンド様を断罪し、婚約破棄をなさろうとするのです。」

「婚約・・破棄?」

アナスタシアが息を飲む。

「待ってください。そんな恐ろしいこと・・。王族と公爵家の婚約破棄なんて、あってはなりませんわ。」

公爵家に嫁ぐアナスタシアにしてみれば、他人事とは到底言えないだろう。


「なるほど。そのために、私の断罪が必要ですのね。」

ロザリンドが冷ややかに言った。

「クリストファー様の気持ちが私にないのは、分かっていましたわ。それでもパートナーとしての責務は果たして下さいましたし、私は、少しずつ歩み寄ればよいと。誠実であればそれは可能だと思っていました。」

ロザリンドは、根っからの貴族令嬢なのだ。

彼女の言い分は至極もっとも。

小さいときから婚約を決められ、おそらく王妃になるための教育を早くから受けてきている。

この場で冷静に話をしている様子を見ると、わがままな悪役令嬢、というゲームの設定は彼女には相応しくないと思ってしまう。


「それで?」

ロザリンドは私を真っ直ぐ見た。

「あなたはなぜ、その話をなさったの?私たちに何をさせたいのかしら?」


私は一呼吸置いてから言った。

「先のことを知っている、という、圧倒的な優位の状態はフェアではありません。全てを知った上で、皆さんには自分の進む方向を、自分で選んでいただきたいのです。」

彼女らが頭から私のいうことを信じてくれているとは思わない。でも、本当に皇太子即位パーティーが開かれたら、彼女達なら手が打てるはずだ。



必要そうな情報を全て伝え、解散した後。

「・・アナスタシア様。」

私は、アナスタシアを呼び止めていた。彼女はどう思っただろう。裏のない好意を示してくれていた彼女に、私は打算的に甘えていた。

「私は、アナスタシア様に謝らなければいけません。」

「フィリア。アナ、でいいです。何もおっしゃらずに、私の話を聞いてくださらない?」

アナスタシアの微笑みは、いつもの天真爛漫なものではない。


「私、ダンスパーティーの時、アルベルト様があなたを誘っていること、知っていました。ドレス選びにフィリアの意見を聞きたい、と言ったのは、わたしなんですよ。」

隣ではエリーゼが申し訳なさそうにしている。

「なぜそんなことを?」

「ライバル令嬢のあなたが、どうでるか、見極めたかったからですわ。何としても、蹴落とさなければと思っていましたから。」

だが、実際は私にアルベルトを奪う意思はなく、アドバイスは的確だった。

「アドバイスできたのは、私が先を知っていたからです。」

アナスタシアは首をふる。

「いいえ。知っていても、言うかどうか、あなたは選べたでしょう?わざと違う方に誘導することもできた。でもあなたはそうしなかったわ。そして、あの夜、私は初めてアルベルト様と心のかよう夢のような時間を過ごしました。」

でもそれは、と言おうとして制される。


「あの時あなたが示したのは、単純にドレスの選び方ではなかったの。私、それまで、自分と接するお相手の気持ちを想像することがほとんどなかったのです。」

全ては自分のセンスで、自分の感性が全て。

それを気に入るかどうかは相手の問題。

なんなら、自分のよいと思うものの価値が分からない相手を見下す気持ちさえあった、とアナスタシアは言った。


「でも、あの日、私に足りないものがそれだと分かったのです。そう考えたとたん、私の生活は大きく変わりました。アルベルト様との絆が深まったのも、私が変われたからなのです。」

そう言うアナスタシアは幸せそうだった。

「あなたが、なんと言おうと、全てはフィリアのあの言葉の結果なのです。私は、それだけであなたに感謝し続けますし、あなたが、言うことならば信じます。」


そう言いきるアナスタシアは眩しくて、私は、もうなにも言えなかった。


「私もどうすべきか、考えます。未来のアルベルト様の妻として。」

アナスタシアは優雅にお辞儀をして、退室した。


「フィリア。私は、ずるい人間です。でも、今はちゃんと自分の気持ちと向き合って、正しいと思うことをしたいと思っています。・・アナスタシア様の話を聞いてもなお、友達でいてくれますか?」

エリーゼが言った。

アナスタシアのドレス選びに私を巻き込んだ時のことを言っているのだろうが、そんなことがどうでもいいくらい、エリーゼは私を救ってくれた。

「私の話を最初に受け入れてくれたのはエリーゼです。私は、あなたをかけがえのない親友だと思っているわ。」

そう伝えると、私とエリーゼは、お互いに微笑みあった。


彼女達に会えて良かった。きっとこの日のことを、私は、忘れないだろう。



・・翌日。

温室に行くと、待ち構えていたようにアルフォンスが立ち上がった。


「アルフォンス様。昨日お約束したとおり、全てをお話します。」

私は、意を決して一歩を踏み出した。

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