第30話
「悪役令嬢?」
聞き返したロザリンドに、私は言葉を選びながら話した。
「今私はこうしてここにいますが、先程まで誘拐されて監禁されていました。」
そう言って、私は、両手首の縛られた痕を見せる。
「誘拐?」
ロザリンドは混乱している。セドリックの言っていたことは本当らしい。
「一応確認させてください。今回の件、ロザリンド様は、クレアさんに何か指示をされましたか?」
「先程から、何を言っているの?」
「では、質問を変えます。最近、私とクリストファー様の仲について、ロザリンド様にいろいろ言っていたかたはいませんか?例えばクレアさんとか。」
今度ははっきりと反応がある。
(やっぱり。)
「・・私は、クレアさんから、ロザリンド様のことで相談がある、と言われて呼び出された場所で誘拐されました。ある事情で疑っていた私は、エリーゼと待ち合わせをしていたんです。そこに来ない私を心配して、エリーゼはアルフォンス様やシュバルツさんと学園中を探してくださったそうです。その時、クレアさんも、みつかりませんでした。」
「つまり?何が言いたいの?」
「クレアさんは、ロザリンド様が私を虐げているという事実を作ろうとしていたように思います。私自身も、裏にいるのはロザリンド様だと思っていました。」
「私ではないわ。」
ロザリンドの反応に私は頷く。
「はい。裏にいるのは、クリストファー様です。だから、明日、こちらから罠にかかりにいくのです。」
ロザリンドはピンときていない様子だった。無理もない。だが、本当にロザリンドに信じてもらうには、もう巻き込んでしまうしかない。
「私の予想が当たっていれば、明日、ロザリンド様が私を呼び出し、悪役令嬢を演じてくだされば、クリストファー様が断罪しに現れるはずです。証人としてクレアさんを連れて。」
それが、セドリックから得た情報で考えられること。
「話は見えてきましたわ。でも、罠にかかれば、私は断罪されるのでしょう?」
私は、一呼吸おいてロザリンドに告げた。
「それを回避するために、私にロザリンド様をひっぱたく許可を下さい。」
ロザリンドは、「事実確認が優先ですわね。嘘だったら一生許しませんわよ。」という条件つきで、私の申し出を承諾した。
(さすが公爵令嬢。メンタル強い・・。)
そして、噴水前の修羅場が実現したのだ。
エリーゼには、アナスタシアを通じて、アルベルトに、「ロザリンドからフィリアが呼び出されているから、念のため一緒に様子を見にいってほしい」と頼んでもらっていた。
そうすれば、いつもアルベルトと行動を共にしているクリストファーの耳にも入ると思ったからだ。
「・・あの場面だけで充分だわ。私はいいように踊らされていたようね。」
ロザリンドは怒りを込めた声で言う。
彼女の怒りがクリストファーに向かっていることに、不謹慎ながら好感をもってしまう。
これからしようとしている話は、そういう相手でなければ自分の首を絞めることになってしまうからだ。
「今から話すことは、信じられないかもしれません。やめろと言われたらすぐにやめます。でも、できれば最後まで聞いてほしいのです。」
私は、三人の顔を見回して、言った。
「私と、おそらくクリストファー様は、ある、記憶を共有しています。」
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