第29話
クリストファーが言ったセリフが、私の中でカチリ、とはまり、私はあることを思い出していた。
「君はアルフォンスとは結ばせないよ。初めてだよ。アルフォンスのものをほしいと思ったのは。僕は何としても、君を手に入れる。」
『君はクリストファーとは結ばせないよ。初めてだよ。クリストファーのものをほしいと思ったのは。僕は何としても、君を手に入れる。』
私は、同じセリフを知っている。ただ、それは、アルフォンスのセリフとして。
アルフォンス・ノーデンブルグ。
聞いたことがあったはずだ。彼はゲームにちゃんと登場している。
クリストファールートの2ndシーズン。
ロザリンドを断罪し、結ばれた二人の新たな敵として。
・・私は、配信が始まる前に事故に合ってしまったが、あらすじは読んだ。
彼が登場するのは、もっと後だ。私たちが二年になってから。
チュートリアル役も違う令嬢だった。
たぶん、エリーゼが本編に関係してくるからだ。
アルフォンスがクリストファーとの仲をさき、主人公を手に入れるために画策する。
1stシーズンは女同士の奪い合いであったが、2ndは奪い合われるストーリー。
だけど。
アルフォンスのセリフを、クリストファーが言った。
まだ確信は持てない。
でも、もしかしたら。
(シナリオは、路線変更をし始めたかもしれない。それならば悪役は・・)
いや、今はこの後のことだ。
今から彼女たちに、説明しなければならない。
私は私に出きることをしなければいけない。
もう、多くの人を巻き込んでしまった。彼女たちは、ちゃんと知った上で決断を下す権利がある。
寮に戻ると、社交室はロザリンドやアナスタシアの侍従によって人払いがされ、エリーゼも含めた三人が私の帰りを待っていた。
緊張した空気。
さっきのは明らかな修羅場だったのだからしょうがない。
「遅くてよ、フィリアさん。私たち、待ちくたびれたわ。」
意外にも沈黙を破ったのは、ショックを受けているはずのロザリンドだった。
私は深く礼をして謝罪する。
「ロザリンド様。頬を叩いてしまい、すみませんでした。」
しばしの沈黙。
アナスタシアとエリーゼの緊張をよそに、ロザリンドはフッと笑った。
「もういいわよ。打ち合わせのとおりだったのだし、あなたが言っていたことも、悔しいけど事実だと分かったから。」
昨夜。
誘拐から救出された私が向かったのは、ロザリンドの部屋だった。
実は、もし、ゲームのようにクリストファーに救出されていたら、男子寮の特別室でクリストファーと夜を明かしていたはずだった。
怖がる主人公を思いやり、そばにいることを彼が選ぶからだ。
主人公にとっては一番安心できる場所だったかもしれない。
でも、今の私にとっては、一番危険な場所だ。
女子寮に帰ってこれて、ロザリンドと話せるこのチャンスを逃すわけにはいかなかった。
「約束もなく突然いらっしゃるなんて、失礼ではないかしら。」
通してくれたものの、冷ややかなロザリンドに、私は切り出したのだ。
「お願いしたいことがあるのです。クリストファー様の企みを覆すために、ロザリンド様に悪役令嬢を演じていただかなければなりません。」
ロザリンドは、目を大きく見開いた。




