第28話挿話(アルフォンス目線)
俺は、噴水の近くで隠れて俺は事の成り行きを見守っていた。
とりあえず、フィリアが無事でいることに安堵する。
昨夜、学園中を片っ端から探した。
エリーゼは、言えないことがあるようで、ただ、クレアが関わっていて誘拐の可能性があるのだと訴えた。
それだけで動けるのは俺とシュバルツだけだ。
三人で探し続けたがフィリアの姿はなく、関係があると言われるクレアもいないのは何だか不気味だった。
日が落ちたため、シュバルツにエリーゼを送らせて、俺はクリストファーのところに向かう。
なんとなく、でも確信に近いところで、クリストファーは何か知っている気がしたからだ。
「・・クリストファー。聞きたいことがある。」
部屋を訪れた俺を、クリストファーは笑顔で迎えた。
「やあ、珍しいね。なんだい?」
部屋に通されて、おれは違和感を覚える。
(護衛が一人?)
奴は第一皇子だ。寮にいるが、警護がついている。侍従も兼任し、数名いたはずだ。
「護衛は?」
「せっかく弟が来たのに不粋だろ?見えないところに控えてるよ。」
嘘だ。奴は嘘をついている。
忘れたのだろうか?俺たちは王室の教育で、気配を読む訓練をしてきている。この部屋には間違いなく、護衛は一人しかいない。
「・・フィリアは無事なのか?」
探る会話を飛ばして問うと、クリストファーは目を見開いた。
「フィリア嬢に何かあったのかい?」
(こいつが本当のことを簡単に言うことはない。)
「フィリアがいなくなった。誘拐の可能性がある。学園にはいない。目的はなんだ。」
聞きようによっては、クリストファーを犯人だと断定している。
だが、今は構っていられない。
「ふーん。アルフォンスって、そんな顔もできたんだね。恋人を助けるナイトの顔だ。」
クリストファーの冷ややかな目が俺を射抜く。
「・・でも、君はナイトにはなれない。」
クリストファーが言った。
「どういう意味だ?」
「意味などないさ。ただの事実だ。アルフォンス、君はフィリアとは結ばれない。これは僕のルートなんだから。」
クリストファーは笑う。
お互い様だ。クリストファーにこんな顔ができたなんて俺も知らなかった。
「フィリア嬢は無事だよ。僕が必ず助けるさ。君は知らせを待っていればいい。」
クリストファーはそう言って、護衛に俺を部屋まで送らせた。
護衛はそのまま、部屋の前に居続ける。
「くそっ!」
救いなのは、クリストファーがフィリアの無事を請け負ったことだ。この際誰でもいい。フィリアを助けてくれるなら。
俺は歯がゆい気持ちを押し込めて、フィリアの無事を祈った。
翌日。
フィリアが無事であることを知らせてくれたのは、クリストファーではなく、エリーゼから伝言を受け取ったシュバルツだった。
そして、今。
ロザリンドの厳しい嫌がらせと、フィリアの平手打ち。
そこに入ってきたクリストファー達だが。
クリストファーには若干悔しげな色が表情にある。
(クリストファーはナイトではなかったらしいからな。)
そう思いながら成り行きを見守っていると、クリストファーがロザリンドを攻め始めた。
「今のはなんだ、ロザリンド嬢。嫉妬にかられて、フィリア嬢の持ち物を噴水に捨てるなど人として許されない。」
高らかに言うクリストファー。
「お待ち下さい。クリストファー様。」
それを遮るのはフィリアだ。
「今の件に関しては、もう終わりです。私、怒りのあまりロザリンド様に手をあげてしまいました。今の件を断罪なさるなら、私も罪を償うことになります。目をつぶって下さいませんか?」
クリストファーは不満そうだ。
「君は、ロザリンド嬢をかばうんだね。でも、彼女の罪はそれだけじゃない。君は昨日・・。」
いい募ろうとしたクリストファーに、フィリアがスッと近づく。
「かばってなどいません。今はまだその時ではありません。クリストファー様はご存じでしょう?」
意外なことに、クリストファーはそれで、ひくことにしたようだった。
「どういう風の吹き回しか知らないけれど、君もその気になったということかな?忘れないでね。シナリオは僕の味方だ。」
ニヤリと笑うその姿は、いつもの無駄にキラキラしたそれではない。
「構いませんわ。私は、シナリオ通りにはいきません。」
フィリアは宣言する。
俺は確信していた。
クリストファーとフィリアは、何か、俺たちとは違う次元で話している。その事が、小さなとげのように引っ掛かっている。
「わからないな。なぜ君はアルフォンスのものなんだ。僕に、アルフォンスより劣るところがあるようには思えない。」
・・婚約者の前で言うことではない。ロザリンドは青ざめている。
クリストファーは続ける。
「君はアルフォンスとは結ばせないよ。初めてだよ。アルフォンスのものをほしいと思ったのは。僕は何としても、君を手に入れる。」
だが、フィリアはきっぱりと言った。
「私は、あなたのものにはなりません。・・このままだと、多くを失うかもしれませんよ?」
「そうはならないさ。今日は一旦ひくよ。・・ああ、クレア嬢は重要な人物だから、こちらで匿う。じゃあ、次のイベントで、ね。」
クリストファーはそう言うと、アルベルトとクレアを連れて去った。
「この後のことで、皆さんにお話したいことがあります。寮の社交室で女子会をしましょう。先に行っていただけますか?」
フィリアの言葉に従い皆が出た後、彼女はそっと戻ってきて、俺のところに来た。
「アルフォンス様。」
俺は隠れていた場所から出る。
抱き締めたくなる衝動を必死に押さえてフィリアの前に立った。
「昨日、探してくださったこと、聞きました。ありがとうございました。助かった後、すぐにお伝えできなくてすみません。」
「いや、無事でよかった。君は一体・・?」
フィリアは俺の口に指を当て、遮る。
「明日、全てをお話します。温室で待っていてください。」
真剣な顔のフィリアに、俺は頷くしかなかった。




