第24話
(どうしよう。・・どうしよう。)
クレアの言葉に、私は、固まっていた。
先を知らなければ、これは乗るべきだ。
クレアは子爵家令嬢。私より位も高い。
礼儀に則るなら、ことわるべきではない。表向きは、クレアは友人として、私に相談したいと言っているのだから。
「・・だめかしら。あなたしか相談できる人がいなくて。・・ロザリンド様のことなの。」
「・・わかりましたわ。放課後いきますね。」
シナリオが変わっている可能性もある。私は、誘いに乗ることを決め、返事をする。
どうするかは、考えるしかない。
クレアは、何度も、誰にも言わないで一人できてね、と念押しをした。
(怪しすぎるよ、クレア・・。)
昼。
温室に向かう前に、人気の無いのを確認してから、エリーゼにだけ、クレアの呼び出しのことを伝えておく。
「大丈夫ですか?」
心配そうなエリーゼに本当に感謝だ。
「本当の相談の可能性もあるから、一人で行こうと思う。ただ、念のために近くで待っていてほしいの。終わったらすぐに待ち合わせ場所に行くわ。もし来なかったら・・」
「わかりましたわ。その時は、フィリアを探します。絶対に。」
実行犯も、監禁場所も、分からない。どこかの娼館に連れていかれる予定で、その前に楽しんでやろうと犯人に襲われそうになるところでクリストファーが助けに来てくれるのだ。
最後の断罪の時に、名前は出てきた気もするが、顔はシルエットだし、全く覚えていない。
ゲーム内では完全なモブキャラなのだ。
今は、エリーゼを信じるしかない。
それから、自分の運を。
一応主人公だ。傷物になる前に、助かる・・よね?
クリストファーは待ち合わせ場所に主人公が来ず、リボンが落ちていたことで異変に気づき、迅速な聞き込みと街に潜ませている自分の部下達の情報網を駆使して辿り着く。
でも、今回はクリストファーをナイトにしてはいけない。
ただ、そこで一瞬疑問が芽生える。
私は、あの日以降、クリストファーと接触していない。
ロザリンド達は、そんなに追い詰められているのだろうか?
確かに告白はされたけど、ゲームで呼び出される時には、キス、くらいまでいっていたような・・。
(冷静に考えてる私がなんだか嫌だわ。)
そこまで考えてから、頭をふる。キスのスチルはあくまでゲーム。私の記憶じゃない。
とにかく、腑に落ちないままに、私は放課後待ち合わせ場所にいき、当たり前のように誘拐されてしまったのだった。
(いや、手際がよすぎでしょ?)
薬を嗅がされて気絶したあと、上からすっぽりと黒い布をかけられ、袋詰め状態で、私は、せっせと運ばれている。
庭園に入り、「クレア」と呼ぼうとして、「ク」くらいでやられたため、騒ぐ間もなかった。
顔も見ていないし、声も聞いていない。
犯人の手掛かりもゼロだ。
(男子学生とかじゃなかったの?素人とは思えないんだけど!?)
思いがけず、想像以上の窮地であることを肌で感じて、私は背筋が凍りついた。




