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第23話

表立って警戒できないため、目立たないように、私はロザリンドたちの嫌がらせから逃れることにした。


まず、昼食は、アルフォンス達と温室で食べる。

食堂以外にも、テイクアウトで食べられるプレートの販売所があるため、そこを利用する。

私物もできるだけ持ち歩くようにした。ロッカーは、もともと鍵付きのため、必ず施錠する。

可能な限り、エリーゼがそばにいてくれた。エリーゼとアナスタシアは同じクラスのため、三人で行動していると、近寄ってくる者はいない。


エリーゼいわく、アナスタシアもクリストファーの件は知っていて、

「兄弟で奪い合われるなんて、辛いに違いないわ!答えが出せるまで支えになって差し上げなくては!」

という思いのもと、エリーゼと同盟みたいになって私を見守ってくれている・・らしい。


おかげで、ほぼ被害に合うことなく過ごせていた。


クラスでは一回だけ、私ではない子爵令嬢が、ペンケースを盗まれる、という事件が起きた。

彼女はそのペンケースをゴミ箱でみつけ、大きな騒ぎになった。

父親が学園に寄付をしているとのことで、先生も介入して、犯人捜しが行われた。

結局みつからなかったのだが、クレアの顔色が悪かったから、多分本当の狙いは私だったのだろう。

盗まれたペンケースは、私のものとよく似ていた。


この状況で唯一の収穫は、温室で過ごす時間が増えたことだ。

アルフォンスは、本当に温室がお気に入りの場所らしく、覗けば大抵はいる。

相変わらずのダークオーラだが、私を見つけると、それが和らぐのが、なんだか嬉しい。

二人になるときもあり、少しずつではあるが、お互いの話もするようになった。


ある昼休みのことだ。

少し早くついてしまい、一人かなと思って温室にいくと、アルフォンスが既にいて、本を読んでいた。


「アルは、いつも本を読んでいるのですね。その本、前も見た気がします。お気に入りなんですか?」

アルフォンスは、ああ、と言って、その本をみせてくれた。

「詩集だ。もう覚えてしまった。リスベルクは知ってるか?」

「知ってます!私、彼の『春の恋』という詩がとても好きなんです。言葉の選び方が優しい詩人だと思います。」

アルフォンスが微かに目をみはる。

「・・どうしましたか?」

「いや。良かったら貸そうか?」

初めてのことで驚いたが、嬉しくて、差し出された本を両手で受け取る。

「ありがとうございます。」

「・・俺にとってはお守りのようなものだ。いつもそばにはいられないからな。」

お守り?

疑問符が顔に出ていたのだろう。

アルフォンスは、寂しげな微笑みで続けた。

「・・母が、好きだった詩集なんだ。」

「お母様の・・。」

「もう亡くなっている。・・俺が生まれなければ、まだ生きていたかもしれないが。」

お母様が亡くなったのは、十歳の時だったと聞く。

アルフォンスは、母親の死にまで責任を感じていたのだろうか。


「・・そんな大事なものを、お借りしてよいのですか?」

「フィーなら、いい。今は持っていてほしい。」


アルフォンスには、前世の記憶を話していない。なのに、ロザリンドたちのことをそこまで心配してくれていたとは思わず、全てを明かしていない後ろめたさも少し感じる。

(いつか、機会があれば、アルフォンスには話そう。)

「ありがとうございます。大切に持っておきます。」

私は、そう告げ、その小さな詩集を内ポケットにそっと入れた。



「・・フィリア。相談したいことがあるの。放課後、時間はある?」

クレアが神妙な顔で近付いてきたのは、その数日後のことだった。

警報が頭の中を鳴り響く。


(これは、多分・・。)


いじめの計画がことごとくうまく行かず、クレアは焦っているはずだ。

人気の無い場所として、校舎裏の庭園を指定されたときは、デジャヴかと思った。

そこは、本来クリストファールートで密会に使われるはずの場所。つまり、行けば恐らく、・・誘拐される。

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