第21話挿話(アルフォンス目線)
「どう思う?」
フィリアから、テストの結果を聞き、ひとまず慰めたものの、釈然としなかった俺は、彼女を見送った後で、シュバルツに聞いた。
「フィリア嬢のことですか?・・妙、ですよね?」
この妙、には、いくつかの意味がある。
問い合わせを粘ったということは、おそらく、エリーゼも感じていたはずだ。
まず、一番おかしいのは、根本的なことだ。
名前を書き忘れて、0点をとることは、学園ではあり得ない。
貴族の令息、令嬢が学ぶ学園では、生徒の不正がおきないよう、解答用紙には通し番号がふられている。
それ自体はあまり広く知られていることではないが、人物採用の時に、学園の成績が信用されるのは、替え玉受験などがなく、本人の成績であると断言できるからだ。
また、名前のミスならば、監督が必ず指摘してくれる。
だから、名前の書き忘れで0点など、今まで聞いたことがない。
おかしいと思ったのは、それだけではない。
他でもないフィリアが、それを疑問も持たず、むしろ自分で、それ以外考えられないと言っていた。
なぜ、フィリアはそう思ってしまったのだろう。
そして、もし、名前のミスではなかったとして、他に、フィリアが0点になる理由などあるだろうか?
そんな話をした数日後、クリストファーが、フィリアの補講を担当することを知った。
珍しく、クリストファーの方から話しかけてきたのだ。
「やあ、アルフォンス。」
軽い口調は、相変わらずだ。昔は仲がいいと思っていたときもあった。だが、こいつも正妃の息子だ。単純な男ではない。
「こんにちは。何か用ですか?」
下級生として振る舞う。
入学より前から、距離は置いていたが。
「前から聞きたいことがあったんだ。君は、フィリア嬢と、どういう関係なの?」
答えに詰まる。
迷うことはない。契約中なのだから、恋人だと言えば良かった。
・・それができなかったのは、契約だと割りきっていない自分に気づいていたからだ。俺は、多分、本気で彼女に惹かれ始めている。
「言えないような関係なんだ。婚約者がいるのに。」
クリストファーの言葉には薄いが毒がある。
「なんで急に?」
答えることから逃げて、質問で返す。
「フィリア嬢を、口説きたいと思ってね。」
「・・あんただって、婚約者がいるだろ。」
思わず昔の口の聞き方になって、後悔する。これでは余裕がないと知らせるようなものだ。
「僕は、王になる。妃は一人でなくていい。フィリアは、僕に必要な女性だ。彼女にしか与えられないものがある。」
「側妃をもう考えるっていうのか?よくそんな話が俺にできる。フィリアは・・!!」
「・・フィリアは?」
静かに問われ、俺は言葉が続けられなくなる。
何を言っても、今はふさわしくない気がしてしまう。
クリストファーは、笑った。
「僕は、手段を選ばないことにしたんだ。本気でいく。今日はそれだけ言いに来た。」
そして、去り際に言う。
「フィリア嬢のテスト結果は聞いたかな?彼女、名前を書き忘れて0点だったそうだ。それでも赤点には違いない。補講担当は、僕だから。・・邪魔しないでくれよ。」
残された俺は、自分の無力さを呪う。
クリストファーがそう決めたなら、フィリアを逃す手段を、俺はもっていない。
第二皇子なのに。
絶望感の中、クリストファーの言葉にわずかに覚えたひっかかりは、この時改めて考えることができなかった。
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