第21話
気は重かったが、私は、寮に帰るしかない。
帰ると心配そうに、エリーゼが駆け寄ってきた。
「顔色が悪いですわ。何かありましたか?」
寮で、何か噂になったりしていないのだろうか。
「部屋に行ってもいい?」
そう聞くと、エリーゼはこくこくと頷いた。
「ロザリンド様が、30分ほど前に帰ってこられました。取り巻きのご令嬢が怯えているほど、怖い顔でした。」
そう言いながら、エリーゼはミルクティーをいれてくれる。
誰かに助けてほしい。でも、エリーゼにそれを求めたら、下手をすれば彼女も巻き込むことになる。
「私を巻き込みたくない、と思っているのでしょう?だめですよ、フィリア。」
思っていたことを指摘され、思わず顔をあげると、いつもどおりの柔らかい笑顔がある。
「エリーゼ・・。」
「フィリアの事情は存じ上げませんが、もともと自分のためにフィリアを巻き込んだのは、私です。ダンスパーティーだけのつもりが、アルフォンス様の思いを知り、シュバルツとも通じ合うことができました。私は、最後までフィリアのそばにいます。」
多分、私は安心したのだ。涙が溢れてぽたぽたと落ちる。
「・・クリストファー様に好きだと言われ、それを見られました。」
「・・ロザリンド様に?なんでそんなことに・・。」
ゲームの話をしてもよいだろうか。
でも、ここまで言ってくれる彼女に、もう隠し事をしたくない。
「エリーゼ。信じられなかったら最後まで聞かずに止めてください。」
私は、前世の話をできるだけ順を追って話した。
自分の前世の記憶。
その中のゲームとこの世界が同じ世界であること。
攻略対象として、クリストファーが入っていること。
クリストファーを攻略すると、ロザリンドからのいじめが始まること。
その分岐点で誰かを攻略してしまうことを避けるために、今まで動いてきたこと。
・・他の攻略者のことは触れない。知ることで別のことに巻き込まれる危険もあったからだ。
「・・何が起こるか分かっている・・予知夢、のようなものでしょうか?」
エリーゼは、真剣に考えている。
「信じてくれるの?」
恐る恐る聞くと、エリーゼは真面目な顔でこちらを見た。
「この状況で、その顔で、作り話ができるなら、すごすぎます。少なくとも、フィリアにとって、この話は紛れもない事実なのでしょう?つじつまも合いますもの。フィリアの友人としては、それを受け入れた上で話をしたいと思います。」
エリーゼに促されて、私は、この後の展開を話す。
ロザリンドと、その取り巻き達からの嫌がらせの数々。
始まりは、食堂で水をかけられることからだ。
それをきっかけに、物を隠されたり、捨てられたりといった犯人の分からない出来事が起きる。
陰口を言われ、クスクス笑いが起きる。
確か、最後は誘拐されて、あわや傷物になるところまでいったはずだ。
「・・信じられませんわ。あの、プライドの高いロザリンド様が・・。」
「取り巻きの方々からのものもあるでしょうし、どこまで本人が動いているかは分かりませんが。」
「・・アナスタシア様にご相談されては?」
エリーゼが提案する。だが、それはしたくなかった。
「今はまだ何もされていません。それに、ゲームの通りなら、誰が首謀者か分かるのは誘拐が起きてから。証拠もないのに、婚約者の反感をかう情報で、頼ることはできません。」
「確かに・・。」
しばらく考えてから、エリーゼは言った。
「クリストファー様のことは、隠さずにアルフォンス様にお伝えした方がよいと思います。もし、何か嫌がらせが始まった時は、アルフォンス様を頼りましょう。それだけ分かっているのなら、対策がとれるかもしれません。」
確かにそれがいいと分かっている。
だが、クリストファーからの告白を知ったら、アルフォンスがどんな反応をするのか、分からないから怖かった。
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