第19話
試験は滞りなく進んだ。
かなり感触もよく、ダンスに至ってはお褒めの言葉も先生から頂き、
(いけたんじゃない?)
と私は、自信すら抱いていた。
「テストお疲れさま、フィリア。」
「エリーゼ!お疲れさま!!」
「フィリア!テスト終了祝いのお茶会ですわ!」
エリーゼのうしろからアナスタシアがひょっこり顔を覗かせる。
寮に専属執事やメイドを連れてきている令嬢は、ごく一部だがいる。
アナスタシアが跳ねるように私たちを連れていったのは、寮の中庭だった。
「さあ、今日は私からのおもてなしですわ。お二人とも召し上がって下さいな。」
あの日以降、アルベルトとのあれこれに、特に助言もしていないし、最近はダンスの時の話題も出さなくなったアナスタシアだが、私に対する態度は変わらない。
でも、話をすると、端々で、アルベルトとはいい雰囲気であることが伺える。
「美味しい!」
出されたケーキに思わず声を漏らすと、
「私の自慢のパティシエが作ってくれましたわ。」
とにっこりするアナスタシア。
ゲームの印象とは随分違う。
確か、ゲームでは、塞ぎこんでからはとても不安定で、使用人たちへの態度もヒステリックな場面が描かれていた。
でも、今の彼女を見る限り、皆に慕われて、彼女も使用人たちを大切にしているように見える。
「そうそう、答え合わせをいたしましょう。私、気になる問題がいくつかありましたの。」
そう言うと、アナスタシアは、数学や歴史の問題を言い始め、エリーゼと私は、自分の解答を言い合った。
「やっぱりそうよね?三人同じ答えなら大丈夫ですわ。」
ひとしきり確認し終えて、私も、少なくとも筆記は赤点を免れたことを確信したのだった。
しかし、一週間後。
テストの結果が通知され、私は、愕然とした。
『国史 0点』
「0点・・?」
他の科目は全て、赤点どころか8割を越えた。
今までにない高得点。手応えは本物だった。
ならば、おかしいのだ。
なぜ、国史が0点なのか。
「どうでしたか?フィリア!はやくアルフォンス様に報告に・・フィリア?」
放心状態の私を見て、エリーゼは私の手元を覗く。
そして、絶句した。
「・・なぜ国史だけ?」
全て埋めたのに、0点になる理由として考えられるのは一つしかない。
「・・名前を書き忘れたんだわ。」
目の前が真っ暗になった。
「・・名前を?」
「はい。それしか考えられません。私、暗記は得意だし、終わったあとのエリーゼとアナスタシア様と答え合わせした時確実に八割以上合っていたはずなんです。」
実際、二人は八割とはいかなかったがそれでも高得点だったし、ましてや赤点ではない。
私は、呆然としたまま、アルフォンスに報告をしていた。
「問い合わせは?」
「応じられないと言われました。」
エリーゼがかなり粘り強く掛け合ってくれたが、駄目だった。
「・・そうか。頑張っていたのに、残念だったな。」
アルフォンスの言葉に涙が滲む。
攻略対象と関わりたくないという、独りよがりな動機だったのに、アルフォンスはなにも聞かず、多くの時間をさいて付き合ってくれた。
ただただ情けない。
だが、納得もいかなかった。
名前を忘れるほど舞い上がっていただろうか。
それしか考えられないとはいえ、本当に、自分がそんなミスをしたという実感が、全くなかった。
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