第18話挿話(アルフォンス目線)
フィリアから試験の相談を受けて、俺は悩んでいた。
王室の教育は厳しい。
ただ、当たり前にやってきたため、その実感はない。
それはおそらくクリストファーも一緒だ。
人脈作りや、集団生活など、学園しか学べないことがあるからと、皇族は学園生活を義務づけられている。
卒業後は、しかるべき場所で役割を果たす。
・・俺は、まだ先が分からないが。
クリストファーと共に学んでいるときの注意点は一つだ。
『クリストファーより上にいかないこと。』
母が生きていたとき、言われたことはあった。
だが、同年代のクリストファーは、優秀で、思い切りぶつかっていっても勝てることなどほとんどなく、あまり気にとめていなかった。
それでも、俺がクリストファーより少しでも優位に立ったとき、じつは正妃から辛辣な言葉を母が受け続けていたと知ったのは、母が亡くなってからだった。
「まだ王位を期待しているのかしら。卑しいわね。」
扇で口許を隠して、笑顔で、美しい正妃は毒をはく。
クリストファーに勝ってはいけない。
でも、だからといって、『できない』ことは許されない。
皇子として恥ずかしくない教養をもち、なおかつクリストファーより下に。
結果としてわざと惜しい間違いができるくらいまでになった。
フィリアは何も知らないのだが、しょうがない。
だが、
『アルフォンス様って、勉強できるの?』
は失礼すぎる。
(我ながらムキになってしまった。)
そう見えるように振る舞っているのだから、当たり前だが、面白くない。
まあ、その結果、フィリアの勉強を見ることになって、彼女の新たな面も見ることになったのだが。
「順調ですか?」
なんだかんだで好奇心旺盛なシュバルツが聞いてくる。
第二言語でちょっといじわるな質問をした時の必死な顔を思いだし、フッと笑ってから慌てて真面目な顔を作り、
「まあまあだな。」
と言うと、シュバルツが意味ありげに笑った。
(しまった。)
「順調そうでなによりです。エリーゼと様子を見に行くか相談してたんですが、お邪魔ですよね?」
「いや!そんなことはない!」
なんだが強めに否定してしまう。
認めたら、なんだか、俺がフィリアと二人きりになりたいみたいじゃないか。
「明日はダンスの練習もある。フィリアはいろいろな相手と踊っておく方がいい。なんなら、見にきたついでに相手をしてやるのも・・。」
ついでに言ってから一瞬もやっとしたが、その正体は分からない。
「確かにそうかもしれませんね。俺も力になれることがあるなら、協力したいです。よし、明日エリーゼといきます!」
シュバルツはいいやつだ。
エリーゼのこと、ずっと気に病んでいたに違いない。
最近前よりも遠慮がなくなったのを、俺は悪くないと思っている。
「ああ、頼む。」
だからこそ、そう言ったのだが。
「アルフォンス様、約束の・・」
約束どおり、エリーゼと見にきたシュバルツがそう言うのを、俺は慌てて止めた。
「約束は、いい。」
シュバルツに近づき、小さな声で言うと、案の定怪訝な顔をされる。
しょうがない。だが、想像したら止めたくなってしまった。
フィリアは、手を差しのべると、そっと指先を乗せてくる。だが、いつも少し緊張していて、小さく震える指先で一瞬距離を確認する。
腰に手を回すと、一瞬固まってから身体を預けてくる。
それでもリズムに乗ると、とても楽しそうに踊る。
今日は、あれこれ指摘したせいで、あの楽しそうな姿をまだ見ていない。
シュバルツに、それらを知られるのは、なんだか、面白くなかった。
「まだ、指摘が終わってないからな。今日はやっぱりいい。」
そう言うと、シュバルツは不思議そうにしていたが、察しのいいエリーゼがシュバルツを引っ張る。
(後で何か言いそうだな。)
予感はするが、まあいい。
そのあと、ハミングで踊った一曲は、フィリアの笑顔が見れてホッとする。
(フィリアはこうでなくてはな。)
(こうでなくては・・何なのだ?)
あとから、自問自答するはめになるのだが、悪くない時間だった。
試験勉強も楽しいものだと、ふぬけていたのだ。
試験の結果を聞くまでは。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
もしよければ、
上記の☆☆☆☆☆評価欄に
★★★★★で、応援していただけるとすごく嬉しいです!




