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第18話

じゃあ、まずは実力の確認から・・とアルフォンスが用意したのは、結構な分量の問題集だった。

(いや、これだけで残りの日数おわらない?)

鬼教官か?と思ったら、さすがにその中から数ページをピックアップしてやらされる。

ただ、アルフォンスとクリストファーは、全て履修済みだと聞いて、びっくりしてしまった。


一応、言っておく。

私は、今まで、怠惰な生活はしていない。

可能な限り学び、知識をつけ、技術をつけてきた。


だが、主人公=天才ではない。

親しみを持たせるためだろうか。ライバル令嬢と比較しても、主人公は平凡な頭脳と運動能力しか与えられていない気がする。

その能力値で、上位に食い込んでいるのは、ひとえに私の努力だ。


「フィー。君が赤点を心配する理由はなんとなく察した。」

一通り実力を見せるべく、アルフォンスが用意した皇室基礎問題を解いたあと、彼は大真面目にそう言った。

「君は決してバカではない。だが、なんというか・・うっかりしているな。」

ドキィ!

おっしゃるとおりだ。


「だから不安なんです・・。」

訂正する。

この平凡な能力値と、うっかりしている性格は、ヒロインだからじゃなくて、前世からのものだ。そのせいで諦めたものもいくつもあった。

いや、そのせいにしちゃだめだよね。

根性がなかっただけだ。

一回の努力が報われなかっただけで諦めてしまったのだから。


誰も攻略しない、と決めたとき、その方が楽だと思い込んでいた気がする。

でも、定められたシナリオに逆らうというのは、もしかしたら従ってハッピーエンドを得るよりもはるかにいばらの道なのではないだろうか。

現に、こうやって行き詰まっている。


「勘違いするな、フィー。」

黙った私を見て、慌てたようにアルフォンスが言った。

「ケアレスミスは、自分を知っていれば徐々に減らせる。点数に一喜一憂せずに、分析するんだ。実力が発揮できれば、赤点は回避できるさ。」

そのためには、まずは苦手な第二言語だな・・と顎をさわるアルフォンス。

(確かに頼っていいかも。よし!)

「・・ア、アル。頑張る気になってきました。よろしくお願いします。」


第二言語の文法はややこしい。

アルフォンス流の勉強法というのがなかなか厄介で、それをクリストファーとも幼い時から結構やっていたというから驚きだ。

まずはみっちり第二言語の単語の暗記と文法をやる。

それから数学を解くのだが、解いている最中に第二言語で質問がとんでくる。


目の前の問題に集中しつつ、第二言語の問いに答えられるように。

最初はアルフォンスの頭に角を見た気がしていたが、彼は彼で凡人への手加減を徐々に覚え、わりとスムーズに、邪魔が入ったり、とっさに聞かれたりしても対応できるようになってきた。


「速く、正確にするなら、この訓練は有効だ。ケアレスミスが多いなら、気が散りやすいのだろう?」

いや、そうだけど、結構スパルタだよ?課題終わるまで休憩できないし。

でも、気が散らないようにするより、気が散ること前提で訓練するという考え方自体は、結構新鮮だ。


「気分転換にダンスか戦闘でもするか?」

事も無げにそう言ったアルフォンスは、スッとわたしの手をとった。

最近、アルフォンスはあまりためらいなく私に触れる。

その度に男慣れしていない私の心臓は跳ねるのだけど、彼は気づいていなさそう。


(いや、でもダンスか戦闘かって・・。)

どちらも必須科目だが。

「戦闘は、武器がいりますから、とりあえずダンス、でしょうか?」

そう言うと、

「・・分かっている。冗談だ。」

と返される。

(冗談?冗談だったの??)


アルフォンスはつかめない。


アルフォンスのダンスの腕前は知っているので、私たちはいくつかのステップを、カウントでとりながら練習をした。


アルフォンスはリードが上手い。

だが、今回はテスト対策なので、厳しい指導が飛びながら踊る。

「背筋は伸ばせ。美しさの基本だ。」

「首を傾けすぎ。どう見えるか考えろ。」

「ステップは正確に。合わせてもらえなかったときつまずくぞ。」


絶対家庭教師の先生よりも厳しい。


もう、無理かも・・と思ったとき、エリーゼとシュバルツがやってきた。

「アルフォンス様。約束の・・」

とシュバルツが言いかけると、アルフォンスが

「いや、いい。」

と遮る。


そのままシュバルツに近寄ってごにょごにょ話している横で、エリーゼがクスクス笑い始めた。


(なにかしら?)

首をかしげていると、話がまとまったらしい三人がやってきた。

「楽しそうですね。私たちもご一緒しても?」

エリーゼの笑顔に、疲れた気持ちがちょっと浮上する。

「そうね。あと一曲分なら。」

「なら、ダンスパーティーの一曲目はどう?」

そう言うとエリーゼは、ハミングでその曲を歌い始める。

「あ、それなら覚えてるわよ。」

ゆったりしたメロディ。これなら、ハミングしながらでも踊れそうだ。


二人でハミングを合わせ始めるとアルフォンスとシュバルツがお辞儀をして手を差し出してくる。

私とエリーゼは、お互いのパートナーの誘いに優雅に答え、私はやっと、心から楽しむダンスの時間を過ごしたのだった。


戦闘の練習もした。

ただ、そちらは手合わせして少しで、早めに合格点をもらった。

アルフォンスいわく、「君はそれだけは赤点はないと思う」らしい。

・・若干気になる評価だが、気にしないことにする。





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