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第17話

学園の大きなテストは、夏と冬の二回。

全教科のテストが行われ、赤点をとると、追試がある。

・・実は次の試練が、このテストだったりする。

(どれで赤点をとっても、絶対イベント決定だ・・。)


ダンスパーティーで、誰も選ばなくてもルートに入る可能性を、理屈抜きで感じてしまった。

シナリオの罠は続いている。

クリストファーとの件は、幻聴と信じるとしても。

いつ、どこで誰かの好感度地雷を踏んでしまうか分からない今、私が避けなければならないのは、「赤点」だった。


下手をすると、今のところ全面的に回避できているウィリアムと、セドリックが登場することになるかもしれない。


この学園の科目は多く、テストは5日間にかけて行われる。

一日目から三日目は筆記。

第一言語、第二言語、数学、地理、歴史、科学・・といった、ほぼお馴染みの教科がならぶが、歴史が二種類あって、国史と芸術史に分かれていたりとややこしい。

残り二日は実技。

男女ペアで行うダンス、テーブルマナーといった貴族らしいものから、護身術、戦闘といった激しいものまである。


ゲームでは、攻略対象によって、主人公はいくつかのテストで赤点をとり、いろいろな経緯で意中の彼に教えてもらうのだ。


もともと、学園入学前の教育段階で、本来よりも全てにおいて、力をつけてきている。誰も攻略しないために、いざとなったら一人でも生きていけるように、幼少期から努力してきたのだから。

実際、入学テストや、小テストでは5番以内をキープしてるし!


だが、不安要素はいくつかあった。

言語については、普段使う言語のほかに、第二言語を学ぶ。

隣接する大国の言葉なのだが、細かな決まりがあって、難しい。

数学も、基本はいいとして、応用問題を解く閃き力には不安あり。

暗記ものは根性で覚えたが、出題のされ方しだいでは不安だ。


実技はたぶん大丈夫なのだが、もう不安だらけ。

中でも絶対に赤点を避けなければならないのは、歴史とダンスだ。なぜなら、もれなく、クリストファーの個別指導がついてくるから。


「不安があるなら、アルフォンス様に教わっては?」

エリーゼが、ある日そう言った。

教科数が多いだけに、赤点は実はそんなに珍しいわけでもない。

要は次の追試で取り返せばよいのだし、それも無理なら課題を出せば良いのだから、悲観的になる必要はない。


そう言われたのに、変わらずネガティブなことを言いながら、私が必死で勉強しているのを見かねて、エリーゼが言った。


「アルフォンス様って、勉強できるの?」

そう聞いた時、私は話していた場所が温室であり、待ち合わせの間にエリーゼと話していたことをすっかり忘れていた。


「君は、皇族の教育をなんだと思っているんだ?」

後ろからため息混じりにそう言われて、私は、ビクッと振り返った。

そこにはにっこり笑うアルフォンスと、苦笑いするシュバルツ。

ああ、たぶんにっこりアルフォンスを見るのは初めてだけど、こめかみにあの怒りマークが見えるわ・・。


いや、だって、アルフォンスの名前って、少なくとも私の前後に乗らないんだもの。あんまり気にしてなかったけど、かなり低いんじゃ・・。

「皇子の成績は公開されませんからね。シークレット案件なので。」

「そうなの?」

エリーゼに聞くと、こくこくとうなずいている。


(確かに、万が一めちゃくちゃ勉強できなかったら知られたくないわよね・・。)

が、今の反応を見る限り、そうではないようだ。


「まあ、別にどうでもいいから言ったことがないが、クリストファーと俺はそもそも生まれの差は数ヶ月だ。時期的に学年は違うが、入学前は一緒にいろいろ学んでいる。基本、クリストファーができることは、俺もできるぞ。」


それはつまり、めちゃくちゃ優秀だということだ。


「フィリアは、今度のテストで、赤点だけは避けたいらしくて、ナーバスになっているんです。」

エリーゼが横からいう。

「とったところで、大したことないだろう?君ならそのあとちゃんと挽回するだろうし。」

アルフォンスの言葉はなんだか嬉しい。だが、こっちはシナリオとの戦いがかかっている。


「いえ、今回だけは赤点嫌なんです。でもいろいろ不安で・・。」


ふむ・・と考えていたアルフォンスは、大真面目な顔で言った。

「なら、ここは恋人の出番だな。俺のプライドにかけて、君の赤点を阻止しよう。」


アルフォンスに後光が見えるわ。

そう思ったのもつかの間。翌日から後光が隠れるほどの角を見る羽目になった。

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