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第15話

「ち、違います!あの、ドレス選びの時にちょっと口を挟んでしまったので、上手くいったようでほっとしちゃって!」

アルフォンスは、意外そうな顔をした。

「令嬢を敵に回さないために必死な君が、アドバイスなんてなんだか、意外だな。それに・・くくっ」

あれ?笑ってる?

「どうされましたか?」

何かしてしまったかと考えながら聞いてみる。


「いや、着飾った令嬢のガッツポーズはなかなか新鮮だった。」


・・アルフォンスの存在忘れてたからね。

何も言い返せず、赤い顔を両手で押さえていると、アルフォンスが「ああ、そうだ。」とこちらに向き直った。


「これからのことを相談しておかなければな。」


私の目的は果たされた。

つまり、私は、攻略対象の誰の誘いも受けることなく、アルフォンスという、令嬢を誰も敵に回さずにすむパートナーとパーティーに来ることができた。

次はアルフォンスの条件だ。


「恋人って、具体的にはどうすればいいのでしょう?」

「そう、それなんだが、な。シュバルツに聞いてみた。」

皇子とはいえ、十代の男子が大真面目にそんな会話をしていることを想像すると、なんだか微笑ましい。


で、アルフォンスによると。

「まずは名前の呼び方から、だそうだ。というわけで、今からフィリア嬢には、俺のことはアル、と呼んでもらいたい。フィリア嬢は、どう呼ばせてもらえばいい?」

愛称、ということなら、あるにはある。

「家族や親しい人にはフィー、と呼ばれます。・・でも、いくら恋人の設定でも、私の立場で皇子をアル呼びはさすがに厳しいです。周りの目もありますし。」

「そうか。・・なら、二人きりの時は、にしては?」

「それなら・・。」

と言ってから、それじゃ意味がないのではないかとふと思ったが、アルフォンスの真剣さに、ちょっと言いにくくなってしまう。

(まあ、そういうのをたまたま見かけて噂になるほうが、ホントっぽくなるしね。)


「ではさっそく呼んでみてくれ。」

アルフォンスは、さあ、と促してくる。

(な、なんなの、この状況。)

改めて言われると、なかなか難しい。

「・・ア・・アル?」

言ってから顔が熱くなってしまう。

アルフォンスのほうは、なんだか、ぼーっとしていた。

「やっぱり変な感じですよね?やめておきましょうか?」

心配になって聞いてみると、アルフォンスは慌てたように、

「いや、それでいい。・・それ・・はハ・・・が・・。」

最後はごにょごにょ言っていて聞き取れなかったが、とりあえずアル呼びは継続になりそうだ。


「そろそろ戻ろうか?」

そう言うと、アルフォンスが腕を差し出す。

その腕にそっと手を添えてから、我慢できずに聞いてみた。

「アルフォンス様は呼んでくださらないのですか?」

「・・アル、だ。」

かろうじてそう返してきたものの、アルフォンスは明らかに緊張している。

「ゴホン。・・フィー。いこうか。」

「・・・・。」

言う側も恥ずかしいが、言われる側も、むずがゆくて、やっぱり恥ずかしい。


かくして、私たちは、何とも言えないムードで、会場に戻り、残りの時間をなんだかぼーっとして過ごしたのだった。



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