第14話
曲が終わり、礼をして、かろうじて笑顔を保っていた私は、挨拶もそこそこにその場を離れた。
クリストファーは、他のご令嬢と踊り始めたが、その視線は自分に向けられていることが分かる。
平静を装って、ダンスの輪から離れると、エリーゼが駆け寄ってきた。
「素敵なダンスでしたわね。・・フィリア??」
だめだ。クリストファーに、気づかれてはいけない。
「何があった?顔が真っ青だぞ。」
エリーゼの後ろからアルフォンスの声がして、すがるようにそちらを見てしまった。
アルフォンスの顔を見れば分かる。私は今、きっとひどい顔をしているはずだ。
「・・とりあえず一旦外に出よう。エリーゼ、飲み物を持ってきてくれるか?」
アルフォンスに促されて、私は外に出た。
会場の庭はよく整備されていて、休める場所も多い。
さすがにまだ二曲目が終わって三曲目に入ったところだから、もう少しの間は人も来ないはずだ。
何回か深呼吸をすると、ちょっと落ち着いた。
エリーゼは飲み物を持ってきたあと、会場に戻り、アルフォンスが付き添ってくれる。
「何があった?クリストファーの様子と違いすぎるだろ。」
アルフォンスは、私達の様子を見ていたようだった。
だが、どう説明していいか、分からない。
いっそのことゲームの話をしてしまいたい気もしたが、絶対信じてもらえないだろうし、混乱した頭では上手く話せる自信もなかった。
「初めてのパーティーで、緊張してしまったんだと思います。」
無理やり微笑んで見せたが、アルフォンスの表情は険しい。
「いや、それはないな。フィリア嬢の顔が変わったのは、クリストファーと踊っている途中だ。・・何があった?俺のことで何かいわれたんじゃないか?」
その言葉にハッとする。
クリストファーがどうかは分からない。でも、王妃は、多分、ことあるごとに、アルフォンスを傷付けるような言動をしてきているはずだ。
(あれ?なんでそんなことを思うのかな?)
ちょっと違和感。正体はわからないが。
「それは違います。そうではなくて、私・・言うべきではないことを言ってしまったかも知れなくて。」
アルフォンスを心配させたくなくて否定したが、どう言えばいいのだろう。
クリストファーが、私に好意を持ってしまったかもしれない、など、私だって前世の記憶がなかったら、頭がおかしくなったと思う。
「それは、あの顔なら大丈夫だろ?怒っているようには見えなかったぞ?」
アルフォンスは違った解釈をしたようだ。
よし、それで通そう。思い過ごしかもしれないし。
ガサッ
何か返そうとしたとき、物音がして、とっさに植木の陰に隠れた。
「なんで隠れる?」
つられてしゃがんだアルフォンスの言葉に最もだと思った瞬間、人の話し声がして、やっぱり身を潜めてしまう。
私たちに気付かず、現れたのは、アルベルトと、アナスタシアの二人だった。
二人は、ベンチに腰かける。
そういえば、アルベルトルートに入ったら、ここでイベントがあるのだ。
私は、期待と不安がないまぜになって見つめる。
どのみち、もうここから逃げられない。
ならば、見届けてしまうしかない。
「さすがは学園のパーティー。素敵な時間ですね。」
アナスタシアの鈴をふるような声。
「ああ。」
アルベルトは短く答える。
(アルベルト!ドレスを褒めて!!)
「アナスタシア。・・そのドレス、よく似合っているな。」
アナスタシアは、可愛らしくはにかんで、嬉しそうに答える。
「ありがとうございます!アルベルト様の瞳の色に似ているなと思って・・。」
(ナイスよ!アナスタシア!)
アルベルトは、少し目を見開き、それから顔に手を当て、顔を背ける。だが、その顔は赤い。
「どうされましたか?お気を悪く・・?」
気にするアナスタシア。
「いや、そうではなくて。」
アルベルトは、あわててアナスタシアに赤い顔をむける。
「・・ドレス選びの時に、私を思い出していたのだと思うと、・・すこし照れてしまった。」
(きたー!!)
そして、アルベルトは、アナスタシアのネックレスに目をやる。
「そのネックレスも、よく似合う。ネックレスは、君の髪の色だな。」
(やっぱりきた!)
私とアナスタシアは同じようなプラチナブロンドの髪をしている。
ならば、次は!
「・・美しいな。」
月明かりの下、アルベルトの手が、アナスタシアの髪をすくいあげ、口づける。
今度はアナスタシアが赤くなる番だ。
(シナリオ通りだわ・・。)
アナスタシア目線では、とびきり美しい角度で、あのスチルと同じ光景が見えているはずだ。
(よし!好感度大幅アップ!)
人知れずガッツポーズ。
シナリオの力はこんな働きもするのか、と考える。
なら、こんな風にご令嬢と攻略対象をくっつけていけば、まだ女の戦いの回避と、安全な学園生活は可能かもしれない。
手をとりあって去る二人を見送りながら、そんなことを考えていると、
「君は、ああいうシチュエーションが好きなのか?」
すっかり忘れていたアルフォンスに突然聞かれ、私は先ほどの二人に負けないくらい、真っ赤になってしまった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
もしよければ、
上記の☆☆☆☆☆評価欄に
★★★★★で、応援していただけるとすごく嬉しいです!




