第13話
安定した姿勢。
無駄のない動き。
(お、踊りやすい。)
家庭教師よりも上手なのではないだろうか。
気がつくと、ダンスが楽しくなってきて、笑みがこぼれるほどだ。
「何か面白いことがあったのかな?」
聞いてくるアルフォンスに、
「私、今までの中で一番ダンスが楽しいです!アルフォンス様のリードのおかげです。」
と素直に告げると、今度ははっきり見える場所でアルフォンスが赤くなった。
ステップが乱れかけて私も慌てたが、ちょうど音楽が終わり、無事に一曲踊り終える。
「君は、無意識か?」
踊り終えたアルフォンスにそう聞かれて、首をかしげると、そこにクリストファーが近づいてきた。
「やあ。素敵なダンスだったね。みとれてしまったよ。」
クリストファーのキラキラは眩しくて、物理的な光ではないのに目を細めてしまう。
今夜は正装の上に、いつもより色っぽい笑顔で正面に立たれて、さすがに体温が上がる。
「2曲目は僕が誘ってもいいかな?」
クリストファーは、疑問形でいいつつ、早くも私の手をとり、腰に手を回した。
・・これは断れない。
アルフォンスを伺うと、明らかな作り笑いで、
「行っておいで。」
と手をふられた。
相手は皇子。こうなると、断るわけにはいかなくなる。
(なんでわざわざ誘いにくるのよ??)
心で悪態をつきながら、そんな心の葛藤を淑女の笑顔で完璧に隠して、私はクリストファーとフロアに向かった。
二曲目が始まる。
アルフォンスの時も少し視線は感じだが、やはりクリストファーは段違いの注目度だ。
クリストファーもさすがというか、リードがそつなくめちゃくちゃ上手い。
それでも、やっぱりアルフォンスと比べてしまうため、さっきのように心から楽しむというよりは、安心してお任せしつつ気も抜けない感じだ。
「さっきのようには笑わないんだね。アルフォンスとの方が楽しかった?」
クリストファーに聞かれ、見られていたことに驚く。
とっさに、
「そんなことはありませんわ。」
と返したが、クリストファーは苦笑いしていた。
「ごめん。パートナーなんだから、アルフォンス優先でいいんだよ。強引に誘ったのは、僕のわがままだから。」
そのまま、ちょっと気まずい間が流れる。
「本当は、君のパートナーをとられて、悔しかったんだ。アルフォンスには負けたくないって、すぐ思ってしまう。僕は、一番にとらわれているからね。」
そう言って、寂しげに笑うクリストファー。
ゲームの設定が頭をよぎる。
第二皇子はいたものの、皆が次期国王として彼を見る。
優れたところや、成功のエピソードは、誉めそやされ、さすがは皇太子だと絶賛される。
一方で、人より劣る部分や失敗は、あっても触れることすらされない。それはなかったことにされるか、陰で噂になったりする。そして、それは婚約者であるロザリンド嬢も、母親である王妃も同じ。
クリストファーは、笑顔を絶やさないその裏で、苦しみ続けていたはずだ。
「・・全てにおいて、一番の方なんて存在しません。足りないところがあるから、補い合うために周りの人と繋がっていくのが人間なのではありませんか?」
『全てにおいて、一番の方なんて存在しません。足りないところがあるから、補い合うために周りの人と繋がっていくのが人間なのではありませんか?』
思わず言った一言が、記憶と重なる。
クリストファーの驚いたような表情も。
(しまった!!!!)
今のは私が本心から言った言葉だ。
でも、ゲームの中で、同じ台詞があった。
シナリオのワナだ。
(シチュエーションもタイミングも違うから油断してた!!)
恐る恐るクリストファーを見ると、明らかに糖度の上がった目で見つめられた。
カチリ
幻聴のように、何かのスイッチが入った音がする。
今の一言で、クリストファールートが動き始めた、という、嫌な確信があった。
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