第11話
「驚きましたわ。フィリアがあんな風にアドバイスするなんて。」
エリーゼがそう言ったのは、社交室が解散して、話したそうなエリーゼを部屋に招いていた時だ。
「やっぱりでしゃばりすぎたわよね?」
薄々感じてはいた。
「あ、いいえ、アナスタシア様は多分大丈夫です。満足げでしたもの。」
エリーゼは慌てた様子でフォローしてくれた。
「ただ、ああいう場では、みんなアナスタシア様に気を遣って、彼女が選びたい方に任せることが多いのです。責任もとりたくないですし。フィリアもそういうタイプだと思っていたので、ちょっと意外だったんです。」
私だって、予備知識がなかったらそうする。
でも、目の前で明らかな不正解を選んでいたから、つい声をかけてしまい、後に引けなくなったのだ。
「さあ、ではフィリアのドレスを選びましょう?」
黙ってしまったせいで、エリーゼに気を遣わせてしまったようだ。エリーゼは明るい声で話題を変えた。
言われて気づいたのだが、部屋はドレス選びで迷ったまま、ベッドの上に手持ちのドレスが出したままになっている。
「ありがとう、エリーゼ。エリーゼは、アドバイスしてくれる?」
もうすぐ『元』になるとはいえ、婚約者の好みを聞くなんて変な感じだが、エリーゼは優しく微笑む。
「もちろんよ。」
ただ、こちらは手持ちが多くないため、アナスタシアのように、アルフォンスの瞳の色に合わせるようなことはできない。
あるのは、淡い水色とピンク、あとはエメラルドグリーンとワインレッドの四着。
アルフォンスの濃い青の瞳を思い出す。アルベルトよりも少し深いその色は、長く見つめられるとなんだか心が見透かされるような気分になる。
「アドバイスとはいえ、実はよく分からないのですよね。」
エリーゼが言った。
無理もない。
あの感じだと、アルフォンスはエリーゼとドレスの話などはしたことがないだろう。
「ただ、そんな時は、楽しんじゃえばいいんじゃないかしら。」
エリーゼがウインクする。
ドレス選びはお相手ありき。
でも、おしゃれをするのは、自分も楽しい。
私のドレス選びにかこつけて、しまいにはエリーゼまで自分のクローゼットからドレスを持ち出し、しばらくの間二人でファッションショーを楽しむ。
ああでもない、こうでもない、と色々組み合わせながら、私は水色のドレス、エリーゼはレモンイエローのドレスに落ち着いたのであった。
(なんだか、女の子の時間だったなあ。)
部屋を片付けてベッドに潜り込むと、余韻に浸る。
人付き合いなんて、疲れるだけだと思っていた。
自分からは関わらず。
向こうからきても深入りせず。
でも、今日は楽しかった。
足の引っ張り合いや、蹴落とし合いは嫌いだ。
前世も今も、決して高くないポジションにいるから、余計に見えることがある。
嫌な意味で遠慮のない、視線や言葉。
悪意にさらされたら最後、心が壊れそうになるまで攻撃されることもある。
ただ、それを避けるために、全てに心のシャッターを下ろす必要はないのかも。
エリーゼとの時間は、久しぶりに友人との明るい時間を思い出させてくれた。
こういうのは、悪くない。
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