無事帰宅
しぶしぶ会計を済ませ、なんともやりきれない思いで優美は店を出た。東京では道を教えてくれた人に食事をご馳走しないといけないのだろうか。
もう二度と知らない人に道は聞くまい。そう心に誓った優美であった。帰りは苦手なスマホを使ってなんとか越してきたばかりのアパートに帰り着いた。
二階建ての古びたアパートで学園の徒歩圏内には変な時期の転校ということもあってか良い部屋は残っておらずもうここしか無かったのだ。しかしお嬢様育ちの優美にはとても新鮮な生活ではあった。
部屋にはあまり荷物はなく若い女子の部屋としてはやや物寂しいものだった。
入学初日から模擬戦をしたり道を訪ねた少年のご飯代を払わさせらたり盛りだくさんな1日だったからか疲れているようだった。
シャワーを済ませて部屋着に着替えるとそのままベッドに入るなり目を閉じた。
父親のこと、一条家のこと、15歳の娘には背負い切れないほど大変な中に優美は今置かれている。しかし今日の模擬戦は第一歩としては大きなものだったと言えるだろう。
「必ず、この学園で序列一位になってみせる。そうすればうちもきっと‥」
一人きりの部屋でそう呟くと優美はあっという間に眠りについた。