模擬戦決着!
そして‥先に動いたのは、わずかに福田が早かった。先程よりもパワー、スピードともに上げて突っ込んでいった。優美も両腕の2つの竜巻を福田目がけてはなった。
「こんな魔法ー」
福田は魔力を高めた拳を竜巻目掛けてふりかざした。しかしその瞬間、福田が優美の竜巻に触れた瞬間後方へと吹き飛ばされていった。あまりに一瞬の出来事だったためギャラリーの生徒達はもちろん福田本人も何が起こったか分かっていないようにも見えた。
「そこまでー。勝者一条優美。これにて模擬戦を終了とする」
審判の声が演習場一杯に響き渡った。見ていた生徒たちも一瞬目が点になっていたがすぐに歓声が湧き上がった。
「おおー、なんかいつの間にか決着が着いてたけど。加藤お前どうなってたか見えたか?」
「いや、ハッキリとは見てないが福田の拳が一条の竜巻に触れたと思ったら気づいたら後ろの壁に激突してたよ」
試合を見ていた他の生徒達も興奮冷めやらぬ様子だった。そんなギャラリー席を尻目に優美は倒れている福田の方へと歩いていった。
「意識はあるようね」
「‥くそ」
「名家だからじゃないわ。それだけ努力してきたの」
「なんだと」
「そして今は自分の強さを証明していかなきゃいけない。負けられないの」
「ふざけんな!こんな小娘に俺が負けるなんて!」
福田は立ち上がり優美の方を一瞬振り返って睨んだ。
「このままじゃ終わらないぞ」
そう言い残すとそのまま第一演習場を後にした。
ふぅーと息を撫で下ろし優美は審判を務めてくれた教員の方へと向き直した。
「先生ありがとうございました」
「いや、いい試合が見れたよ。さすがは名家‥いや、君自身の実力がすごかったんだな。お疲れ様」
「ありがとうございます」
優美はそういうとぺこりと教員に一礼してその場を去ろうとした。
「一条」
「はい?」
「福田を倒した一年生は今まで一人しかいなかったんだ。ずいぶん偉ぶってたからプライドも傷ついたはずだ。一応用心しておけよ」
「ありがとうございます。え?私以外にも福田くんに勝った一年生がいるんですか?」
「ああ、確かお前と同じクラスだ。と言ってもあいつは序列一位だから筆記テスト以外の単位は保証されてるからほとんど学校には来ないがな」
「この学園の序列一位が一年生何ですか?」
「そうだ。学園始まって以来初めてだよこんなことは。まぁ、そのうち会えると思うぞ。じゃ、気をつけて帰れよ」
「はい、分かりました」
帰り道優美はこの学園の序列一位らしい同級生のことを考えていた。自分と同い年の生徒が今や日本一の魔法学校始まって以来の快挙をなしていたことに驚いていた。と同時に自分と同い年でしかも同じクラスであることに喜んだ。
(同い年である私が実質日本一の魔導師であるそいつを倒せば私の実力は瞬く間に広まる。そうすれば一条家も‥)
「考えても仕方ない。やるしかないんだ。よーし、せっかく一人暮らし始めたんだし吉田屋の豚丼でも食べて帰ろーっと」