アパート
「あ、着いたぜ吉田屋」
2人が話しながら歩いているとあっという間に吉田屋に到着した。
なんとなく店内に入り、時間も遅かったためかこの日は豚丼をテイクアウトして店を後にした。
会計はというと、しゅんはそもそも財布を持ってきていなかったため
この日も優美が2人分支払った。
「いやいや悪いねー。ごちそうさま!」
と全く悪びれた様子もなくしゅんは言う。
しかし、しゅんに助けられたこともまた事実だったため
このくらいはいいだろうと優美も特につっこまなかった。
そのまま優美が教えるとおりに歩いて行き、ほどなくしてアパートへと到着した。
「ここの202号室が私の部屋。送ってくれてありがとう。また明日」
優美はそう言って別れようとしたが
しゅんは呆然と立ちすくみアパートを眺めて
ポカーンとしていた。
「どうかしたの?」
早く部屋に入りたかったが優美は一応しゅんに尋ねた。
「どうもこうも、俺の部屋ここの201号室なんだけど‥」
「え、ええーー」
これにはさすがの優美も大声をあげてしまった。
東京に来てから驚きの連続だった優美だが、それを遥かに超える衝撃だった。
昨日出会ったその少年しゅんは同じクラスで
あろうことか同じアパートの隣の住人だったのだ。
「は、はははは!」
突然大声で笑い出すしゅん。
「な、何がおかしいの?」
「いや、こんなことってあるんだなと思ってさ」
「にわかには信じられないけど‥」
「これも何かの縁なのかな」
急にかっこつけた感じでこんなことを言い始めるしゅんに
優美は少しドキッとした。
「な、なに2人は運命でみたいなこと言ってんのよ!」
「いや、誰もそこまでは言ってねーだろ」
その瞬間優美は顔を真っ赤にした。
「じゃ、じゃあまた明日」
そういうと慌てて階段を駆け上がり優美は202号室の
自分の部屋へと入っていった。
そしてしゅんもそれに続いて隣の201号室に入った。
この日は今年に入って一番の猛暑日だった。
普段より少し熱い夏の夜風にふかれながら
2人の若者はそれぞれ眠りについた。




