第1章 亡国の王女と光速の織天使 その11
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唄っている。
あの娘。リュティアーナが。男かと思ったら女性のようだ。まぁ我々レベルの存在にとっては大きな問題ではないが。
この暴風雨の中、何者かの加護か、あるいは何者かの祝福に守られて。
人間達がシールドというモノだろう。
鳥の王と妖精の女王も何事かを為しているようだが。恐らくは最も外側にある壁を守っているのだろう。彼らにはそれは容易いはずだ。
私の周囲にも雨風を防ぐほどの守りはあるが、彼女のものほどでは無い。
何か輝くモノを取り出したように見えるが、敵対者達にも何がしかの備えはあるようだった。
そう。何か巨大な生物が閉じられた空間の中に実体化してきたのだ。
「ヘカトンケイル!」
クルマの中の少女の悲鳴。確かにこれは難物だ。あの娘はどう捌くのだろうか?
「無駄」
つぶやくような娘の念話。
輝くモノを引き絞り月の光のようなナニかを放った。ヘカトンケイルの胸に。しかし彼の者は私と同じほどに古き者だ。
「無駄ではなかろう」
敵対者の念話。そしてヘカトンケイルはその10本の腕を天に掲げた。なるほど。
黒々とした暴風雨の雲の中で巨大なエナジーがうごめいた。
次の瞬間、凄まじい轟音と共に一度に10の雷が落ちた。娘の上に。まるで巨大な竜に襲われたかの如く。しかし。
「やはり無駄」
娘が光るモノをしなやかに一振りすると、全ての雷のエナジーは吸い込まれてしまった。そして娘は再び光を放った。今度はヘカトンケイルの頭に。
「オォ~ン」
ヘカトンケイルともあろう者が頭を抱えた。何事だろうか?
「少しは効いたようだな。恐ろしい奴め。しかしこれまでだ」
ヘカトンケイルが再び立ち上がった。そして両手を掲げる。しかし緑の髪の娘は動じない。どころか薄い笑いを浮かべている。
「そのアイテムはどうやら神器級らしいな。いずれ我らが有効に利用してやろう」
敵対者のボスらしい者も落ち着いている。ところが。
「グワ!」
「ギャー!」
雷が落ちたのは敵対者達だった。それも次々と際限無く。天から数十の竜が襲ったようだ。
「これはいかん!」
「何事だ!」
「在り得ん」
「我らは退くぞ」
次々に消えて行く。
「いかん。コントロールが全く効かん」
ヘカトンケイルの管理権は娘に移ったかのようだ。この短時間で、しかも相手はヘカトンケイル。テイムでは無いだろう。とすると。
「お前もお帰り」
娘が命じるとヘカトンケイルも消えてしまった。
「うぬぅ」
白いトーガの敵対者は怒りに震えている。
「あなたもお帰りなさい。もういい加減学んで」
娘は全く動じない。その姿は女王のようにも見える。
結局はトーガの男も消えてしまった。
そして最後には娘もクルマも消えた。ホテルに戻ったのだろう。一応あとで確認しよう。
「メラニー」
我が愛しい守護の娘を呼び出した。
「リリス」
「イメージを送るぞ」
「ありがとう。どうだったの?何があったの?」
「あの子は無事だ。連れもな。いや、なかなか見ものだったぞ」
しばらくイメージを見ているようだった。
「凄いわ。でもこれは・・・明日も忙しくなるかも」
「うむ」
それはそうだろう。ヘカトンケイルが現れたとなれば。




