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ファーン・ワージーの物語  作者: アルディス・サエルミア
11/11

第1章 亡国の王女と光速の織天使 その11

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


唄っている。

あの娘。リュティアーナが。男かと思ったら女性のようだ。まぁ我々レベルの存在にとっては大きな問題ではないが。

この暴風雨の中、何者かの加護か、あるいは何者かの祝福に守られて。

人間達がシールドというモノだろう。

鳥の王と妖精の女王も何事かを為しているようだが。恐らくは最も外側にある壁を守っているのだろう。彼らにはそれは容易いはずだ。

私の周囲にも雨風を防ぐほどの守りはあるが、彼女のものほどでは無い。

何か輝くモノを取り出したように見えるが、敵対者達にも何がしかの備えはあるようだった。

そう。何か巨大な生物が閉じられた空間の中に実体化してきたのだ。

「ヘカトンケイル!」

クルマの中の少女の悲鳴。確かにこれは難物だ。あの娘はどう捌くのだろうか?

「無駄」

つぶやくような娘の念話。

輝くモノを引き絞り月の光のようなナニかを放った。ヘカトンケイルの胸に。しかし彼の者は私と同じほどに古き者だ。

「無駄ではなかろう」

敵対者の念話。そしてヘカトンケイルはその10本の腕を天に掲げた。なるほど。

黒々とした暴風雨の雲の中で巨大なエナジーがうごめいた。

次の瞬間、凄まじい轟音と共に一度に10の雷が落ちた。娘の上に。まるで巨大な竜に襲われたかの如く。しかし。

「やはり無駄」

娘が光るモノをしなやかに一振りすると、全ての雷のエナジーは吸い込まれてしまった。そして娘は再び光を放った。今度はヘカトンケイルの頭に。

「オォ~ン」

ヘカトンケイルともあろう者が頭を抱えた。何事だろうか?

「少しは効いたようだな。恐ろしい奴め。しかしこれまでだ」

ヘカトンケイルが再び立ち上がった。そして両手を掲げる。しかし緑の髪の娘は動じない。どころか薄い笑いを浮かべている。

「そのアイテムはどうやら神器級らしいな。いずれ我らが有効に利用してやろう」

敵対者のボスらしい者も落ち着いている。ところが。

「グワ!」

「ギャー!」

雷が落ちたのは敵対者達だった。それも次々と際限無く。天から数十の竜が襲ったようだ。

「これはいかん!」

「何事だ!」

「在り得ん」

「我らは退くぞ」

次々に消えて行く。

「いかん。コントロールが全く効かん」

ヘカトンケイルの管理権は娘に移ったかのようだ。この短時間で、しかも相手はヘカトンケイル。テイムでは無いだろう。とすると。

「お前もお帰り」

娘が命じるとヘカトンケイルも消えてしまった。

「うぬぅ」

白いトーガの敵対者は怒りに震えている。

「あなたもお帰りなさい。もういい加減学んで」

娘は全く動じない。その姿は女王のようにも見える。

結局はトーガの男も消えてしまった。

そして最後には娘もクルマも消えた。ホテルに戻ったのだろう。一応あとで確認しよう。

「メラニー」

我が愛しい守護の娘を呼び出した。

「リリス」

「イメージを送るぞ」

「ありがとう。どうだったの?何があったの?」

「あの子は無事だ。連れもな。いや、なかなか見ものだったぞ」

しばらくイメージを見ているようだった。

「凄いわ。でもこれは・・・明日も忙しくなるかも」

「うむ」

それはそうだろう。ヘカトンケイルが現れたとなれば。


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