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4.物語の強制力をなめたらあかん

 



 月日は経って7年後、12歳になったとき、私は初めて王宮の舞踏会に参加することになった。

 カルバート家が製造していた香水がたまたまヒットし王妃の目にもとまったため、招かれたのだった。

 そこである人物と出会ったことがきっかけで、思いもよらない事態が起こる事となった。


 なんと、後日、王宮からの使者がカルバート家の屋敷に訪れ、第一王子のライアン様から婚約の申し入れがあったのだ!

 どうしてこうなった!


 王子の婚約者になるなんて、未来の王妃ともほとんど約束されている。とてつもなく光栄なことだ。誰だって、大喜びする。

 私もライアン王子に婚約者として認めてもらえたなんて、嬉しくないといったら嘘になる。


 でも、待って。一つだけ大問題がある。

 ここはゲームの世界。

 私には関係ないと思って最近あんまり考えてなかったけど、彼に会って確信した。

 ここは似た世界じゃなくて、正真正銘、「きみおと」の世界なんだと。


 ライアン王子はストーリーパートの攻略対象の1人だった。

 しかも、ライアン王子の婚約者は悪役キャラで、主人公を虐めるどころか本気で殺そうとして殺人未遂まで起こすようなキャラだ。

 そして、そんな人は当然その悪行が暴かれて婚約破棄され天誅が下る。因果応報とはこのことだ。

 って、言ってる場合じゃない!私がその役割についちゃうってことじゃん!?


 うーん、確かに悪役婚約者の名前はクラリスだったような気もするなあ。

 私、人の名前覚えるのすごい苦手だから、主要人物じゃないキャラの名前まで覚えてられないよ。

 それに、悪役婚約者は主人公が転入してきて3ヶ月もしないうちに婚約破棄されて学校からいなくなる。初期の雑魚キャラ扱いだ。

 うん、覚えてなくても仕方がない。

 けばっけばの派手派手で、贅沢暮らししかしたことないような雰囲気醸し出してたから、それと自分が同一人物だなんて思わないじゃん。


 でも、ここで私が王子の婚約者になってしまうなんて、なにか力が働いているような感じがする。

 物語の強制力的な。

 このまま婚約者になっても、結局、主人公が現れたら婚約破棄されてしまうかも。

 そんなことになったら私はもう結婚なんて出来なくなるだろうし、家にも迷惑がかかってしまうに違いない。


 名残惜しいけど、目先のことに囚われないで最終的な結果を考えてライアン王子との婚約は丁重にお断りしよう。

 身分が段違いに低い私から断るなんて相当骨が折れそうだけど。

 あっちから婚約の申し出を取りやめるようになんとかしむいていこう。

 その前に、父と母にはそれとなく伝えておこうかな。

 もう、小躍りしそうなくらいに喜んでいるし、婚約がなくなることになったらショックで倒れてしまいそうだ。

 傷は浅い方が良い。


「あの、お父様……」


「ああ!クラリス、良かったな!あの将来が楽しみだと今から噂されているライアン王子に認められるなんてな。今日はお祝いだ!」


 うう、言いづらい。でも後になる方がもっと言いにくくなる。

 絶えろ、絶えるんだ私。


「お父様!私、婚約は……」


「俺はお前に何もさせたいことさせてやれてなかったからな。お前がわがまま言ったのも、コンサートに行ったあの時だけだったのにそれを叶えてやることもできなかった。でもこれからは、妖精使いにもなれる。本当に良かった」


「え?私、妖精使いになれるんですか?」


「ああ、歴代の王妃様方はみんな妖精使いとしての公演も嗜まれていらっしゃった。クラリスもやることになると思うぞ。おっと、浮かれてしまっていたが、婚約を受けるかどうかは本人の意思が1番大切だった。お前の気持ちはどうだ?」


「謹んでお受けいたします!」


 さっきまで言おうとしていたことから、180度真逆の応えを口にした。

 はいそうですよ。

 私は誘惑に負けたんです。

 目先のことに囚われる駄目な奴なんです。


 でも、諦めていたリアル音ゲーミュージックパートが出来るって聞いたら、そりゃあ飛びつくしかないでしょ。

 きっと、そのために私はこの世界に生まれてきたんだ。


 リスクを避けるような生き方をしていても人生はつまらない。

 自分の好きなこと出来るチャンスがあるのにそれを捨てるなんてもったいない。

 婚約破棄の可能性があるって問題だけど、もしそうなったとしても私に落ち度がなければあっちの都合ってことになるし、家に迷惑がかかることもないんじゃないかな。

 つかの間だとしても、リアル音ゲーが出来るなら婚約破棄くらい受け入れられる。


 しかも、私には前世の記憶という強い味方がいる。

 とにかく主人公を虐めないようにして、善行に励んでいれば安泰だよね。



 ……と、その時はそう思っておりました。

 なのに、それなのに、私は悪役令嬢としてライアン王子に最悪の形で婚約破棄される結果となった。


 私の強い味方、前世の記憶は私を裏切り、いつの間にか忘れて頭から消え去ってしまっていた。

 当然、婚約破棄されるという未来も忘れ、自分のためなら人を陥れたり、様々な悪行をし、主人公にも酷いことをたくさんした。

 ゲームのストーリー通りに。


 ゲームの物語の強制力怖い!!

 なめててすみませんでした!!!




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