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9.負けイベント

 



「ではまずその腕輪の説明から。それは妖精使いとして活動していくときに必要不可欠となる物です。無くさないように注意してくださいね。それを付けている間だけ、妖精達を扱えることになっています。次に妖精使いについての説明なんですが、くりたろーさんは妖精使いランクというのをご存じですか?」


「妖精使いランクですか?」


 私は知らないと態度で示すように言葉を繰り返した。

 もちろん知っているんだけど。

 説明をスムーズに進めるには適切な返答が必要だ。

 ここでは私は知らないふりを決め込んでいくことにした。

 どうでも良いけど、自分のことくりたろーって呼ばれるの結構きついものがある……

 これから慣れていかなきゃいけないのも試練だなあ。


「はい。妖精使いになったばかりの人はレベル1から始まって最大のレベルが100になります。これは妖精と練習や公演を行い経験値を得ることで上がっていきます。妖精使いが具体的に何をしているかと言うと、妖精が放出した魔力の球を妖精使いが受け取り力を増幅させているというのが主な原理ですね。このことをコネクトといいます。まあ、ものは試しと言いますし実際にやってみましょうか」


「はい!」


 そう、私はこれを狙っていた。

 チュートリアルには必ずと言って良いほど操作方法の確認調整が入る。

 最後にこの世界でプレイしたのも随分前だし、ここがゲームと同じシステムだって分かってプレイするとなると色々変わってくる。


 端的に言えば、私は早くやってみたかっただけ何だけどね。

 では、さっそく……

 そう思っていると、視線でアルフレドに釘をさされた気がした。

 分かってますよ。ほどほどにやればいいんでしょう!


「どうかしましたか?」


「いえ、お願いします……」


 私は腕輪を右腕に付けた。

 普通は左腕に付けるものなんだけど、今日は左腕に別の腕輪をしていたからこっちになってしまった。

 練習用魔法球自動放出機というのを使ってタップの仕方を教えて貰う。

 リアルでやると球が野球ボールくらいの大きさだから、タップって感じじゃなくてタッチって感じだ。


「そして最後に、このコネクトを行う場には自宅と会場があります。自宅で行う場合は“練習”ですが、会場で行う場合は“公演”でそれには“コンサート”と“コンテスト”の2種類があります。コンサートでは今のようにコネクトを会場に集まった観客達に披露します。しかし、コンテストは妖精使いと妖精使いが一対一で戦い合う白熱したバトル形式になっています。魔法球を相手の妖精使いにそのままぶつけると妖精使いの腕輪がそれをダメージとして感知します。先にあいての妖精使いのヒットポイントを0にした方が勝者となります」


「何だか難しそうですね」


「いえ、やってしまえば楽しいものですよ。そうだ、僕と一勝負してみませんか?」


 デニスがそう提案する。

 とうとうチュートリアルのラストまで来た。

 店員とのコネクトバトルでチュートリアルは終了となる。

 私はチュートリアルの流れ通り頷いた。


「くりたろーさんはレベル1なので、僕もそれに併せてレベル1の腕輪を使いますね。妖精の代わりに今回はこの練習用魔法球自動放出機で行います。そうですね。くりたろーさんの初バトルの記念ということで、もし僕に勝てたら豪華賞品とこの店の施設の使用特権をプレゼントしましょう」


「よーし、お前絶対勝てよ」


「ちょっとアルフレド……」


 今まで私のチュートリアルの様子をつまらなそうに見ていたアルフレドが急に目を輝かせて話に加わってきた。

 本当にアルフレドってば現金な奴だ。


 でも、これって確か負けイベントなんだよね。

 期待してるとこ悪いけど勝てなさそうだ。

 でも、相手もレベル1なのにどうして負けるんだろう?

 前世でチュートリアルやったときは本当の初心者だったけど、実は熟練者な今、パーフェクト出せば勝てたりするのかな?


「準備は良いですか?では、よろしくお願いします」


「はい。お手柔らかにお願いします」


 曲が流れ出した。

 それに合わせて出てくる球をタップタップひたすらタップ。

 そして曲が間奏に入ったところで攻撃の開始だ。

 合計の魔法球のタップ率が高い方の攻撃から行われるんだけど、それは私の攻撃だった。

 パーフェクトだったんだ!

 この攻撃力ならデニスのHPヒットポイントを0に出来る。

 私は最初の攻撃をデニスに放った。


「やったあ!」


「素晴らしい。なかなかに良い攻撃でしたね。でも、喜ぶのにはまだ早いかもしれませんよ」


 余裕そうに言うデニスの言葉にはっとする。

 曲はまだ流れたままだった。

 勝敗が決まると曲は自動的に止まるようになっているのに。

 デニスのHPを確認すると、そこには1と表示されていた。


「僕は1撃では倒されないという固有スキルを持っているんです。そして、それによってHPが1になったときに、僕の攻撃力が2倍になるという効果もあるんです。残念でしたね」


 攻撃の手が私に向けられる。

 なるほど、そういうことだったのか。

 負けイベントはやっぱり誰も勝てないようになってるんだね。

 私は攻撃を受けながら、1人納得していたのだが……


 あれ?またしても曲が止まらない。急いで私のHPに目を向けると半分も減っていなかった。

 ……なんで?


「し、信じられない……」


「くっ、ははっ!そうだ、そう言えばこいつの体力、化物だったんだっけ」


 デニスは終始優雅で余裕そうだった態度を取り乱して、唖然としていた。

 アルフレッドはまたツボに入ったように笑い出す。

 化物……って失礼な!

 ちょっと人より体力がある方なだけです!

 涙を浮かべて笑いこけるアルフレドを私はキッと睨んだ。


 そしてそのまま放心状態のデニスに次の間奏で攻撃し、私は初バトルをデニスに勝利したのだった。


 これって、負けイベントだったんだよね……?

 負けイベントに勝っちゃって良かったのか!?




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