表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アタシは、死ぬことにした  作者: 戦慄のばしょうかじき
2/5

すべてを捨てることにした

 掃除が苦手なやつは、そもそも分別が苦手だ。

 資源ゴミの分別以前に、要るモノと要らないモノを分ける時点で挫折する。

 分けている最中に、懐かしい写真や以前ハマった本などが出てきて、ついつい思い出に浸ったり読み返したりして、気付けば時間が過ぎ去っている。

 が、死ぬ前提でする掃除に、要るモノなどそもそもない為、今回こそは部屋が片付いてくれる筈だ。

 なんだか目的がすりかわっている気がしてきたが、アタシはそこを敢えて無視することにした。



 捨てる。

 捨てる。

 ポイポイ捨てる。

 あっという間に部屋の中はゴミ袋でいっぱいになる。

 ちなみに札幌市は、資源ゴミは無料だが燃えるゴミと燃やせないゴミは有料ゴミ袋を使わなければならない為、しっかり詰め込まないと結構勿体無い気分になる。

 いや死ぬ前提でこんなこと気にしても仕方ないんだけど。


 こんなもんでいいか。

 あるものを手当たり次第にゴミ袋に放り込んでから、掃除機をかけようとして…ふと気付けば、深夜1:00をとうに過ぎている。

 今から掃除機をかけるのはなんぼなんでも近所迷惑かもしれない。

 つかその前に、隣の部屋で寝ている兄に殺されそうな気がする。

 いや、だから死にたいんだって。

 しかしこんな事で兄を犯罪者にするわけにはいかん。


 アタシは、今日はもう寝ることにした。


 ☆☆☆


 翌朝。

 といっても昼近くだ(爆)

 アタシの就業時間は午後から夜までの8時間なので、帰宅時間が遅い。

 帰宅時間が遅いということは、食事する時間も寝る時間も遅いわけだから。

 と言い訳してみる(笑)




 顔を洗い、掃除機をかけてみる。

 今日は金曜日だから、燃えるゴミは捨てられないので、部屋に溢れるゴミ袋はそのままに。


 ………待てよ?

 次の燃えるゴミの日は月曜日だ。

 で火曜日が資源ゴミ。

 資源ゴミは最悪外にでも出しておいて、家族の誰かに捨てさせてもいいだろうが。

 見られたくないモノが詰まっている燃えるゴミは、やはり自分の手で出したい。

 つか、そのままにして死んだら、やはり自殺の原因とか確実に自殺である証拠とか調べる為に、開けられて調べられる恐れがある。

 それは…避けたい。


 つまり、アタシは、月曜日までは死ねないということだ。


 まったく。なんという事だ。

 たかがヘタレ一人が命を断つ為に、なんでこんなにたくさんの障害が横たわっているんだ。

 今日死ねないって事は、アタシは今日もまた、あの会社に行かなければいけないって事だ。


 行きたくない。

 つか、生きたくない。

 って、こんな心境でなにうまいコト言ってるんだアタシは。

 まあ、グダグダ言ったところで状況は変わらない。


 アタシは、出勤することにした。


 ・・・


 職場は昨日の雰囲気を引きずっており、針のむしろは相変わらずだ。

 まあいい。

 どうせアタシは死ぬんだ。

 金曜日の今日と、土曜日の明日を乗りきり、日曜日を家族とまったり過ごしたら、月曜日の朝にはゴミを捨てて。


 あれ、待てよ?


 アタシが死ぬのは月曜日の朝か、それとも夜か?

 気分的にはゴミを捨てたらすぐ決行したいが。

 それでは発見される恐れがある。

 まあいい。

 もう少しだけだが時間はある。


 ☆☆☆


 土曜日。

 またやっちまった。

 今度は間違いなくアタシのミスだ。

 いや間違えといて間違いなくって言い方も変だが。

 つか、死ぬことと例のミスのことばかり考えていたら、普段やってる確認をついうっかり怠ってしまった。

 職場の女帝の

『もうこの仕事任せられない』

 なんて声も、どこか遠くに聞こえる。

 なんだか現実感がない。

 ああやっぱりかと思うだけだ。

 その日は女帝からの厳命で、当たり障りのない雑務だけをこなした。

 土曜日でよかった。

 でなきゃ時間をもて余してフラフラしてるところだ。

 帰り際、

『今回のミスについて、反省点と改善策をまとめたレポートを書いて、月曜日に提出』

 と女帝から言われたが、勿論書く気はなかった。

 だってその日にアタシは死ぬのだから。


 日曜日は、いつもならば自転車でどこかへ出掛けるが、その日は家から出ずに過ごした。


 人生最後の日曜日だ。

 家族とまったり過ごしたかった。


 その日は奇しくも朝から雨。

 日曜日も仕事の上の姉はともかく、他の兄弟たちは出掛けても、用事が済めば早々に帰宅してくれて、アタシの最後の日曜日は、希望通りに終わった。


 ありがとう。

 とても幸せだった。


 明日は決行日だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ