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意味がわかると怖い話  作者: 樹コダマ
2/4

都市伝説の処方(レシピ) File.02

"都市伝説の処方(レシピ)" の視点を変えた続編ですが、

どちらを先に読んでも構いません。


■都市伝説の処方(レシピ) File.02  


俺には、いま妻に内緒にしてることがある。


結婚記念日のサプライズ旅行。

妻に隠して密かに企画中なんだ。


海外旅行ならやはりハワイかな?


ある朝、朝食前に旅行情報でも見ようとノートパソコンを開く。


すると「何してるの^^」って妻が肩越しに覗いてきた


いや、チョッと調べものを・・と、何とか誤魔化そうと振り返ると、妻がすごい眼で睨んでた!?


「な、なんで私のパスワード知ってるの!?」


えっ?・・なんでって・・蓋開けただけだよ?

あれ?・・スイッチ入ってたの?? 

しかも、このスタート画面、俺のと・・違う!?


このPCは妻と共有で使っている。

アカウントを二つ作り、別々のパスワードで管理することで、

検索履歴やメールなどのプライバシーが守られていた。


本来、シャットダウしないで蓋を閉じると、スリープモードに入り、

再度使用する為には、パスワードが必要になる・・はずなんだよなぁ?


俺は焦った。

「こ、これってちょっと特殊な、珍しいPCエラーなんじゃないかな?

ほら、だって君、昔から○○○○〇・・・・あっ!」


!!!!!!まずい(*_*)!!!!!!!


私は言って直ぐに後悔した。

これは彼女にとって最悪のNGワード!


妻は、ものすごい眼で私を睨み・・・

そして、少し悲しそうに目を反らしてしまった!


まずい!まずい!まずい!まずい!


結局その朝、まったく目を合さず無言の食事を済ませ、

俺は、早々に出勤した。


*****************

定時に帰宅。

妻の無言攻撃、恐怖のサイレントアタック!

既に心が折れそうな俺の前に冷めた夕食を、ぞんざいに置いて浴室に向かう妻。


俺は、ふぅ・・と、ため息をつき・・


あれ!?


書棚の脇にボーッと光るものが・・?


スカーフに隠されたノートパソコン。


あいつ、またスイッチ入れ放しだ。

開いてみると、画面に表れたのは、毒々しい色で縁取られた不気味なサイト・・


”毒夫デス*ノート”??


あいつこんなもの見てるのか?


あれ? ・・・「Message・K」と書かれたボタンが点滅している。


クリックすると、

・・・・・秘薬のレシピ??


あっ! 妻が浴室から出でくる!


私は急いでプリントアウトし、

ノートパソコンを閉じた。


---------------

<< 秘薬のレシピ >>


【 疑似心不全薬 】 


 ○〇製薬の風邪薬○○ナールを粉末にし10mgを、・・

○△漢方の胃腸薬×△15mg・・・・・加熱後・・

※服用後、30分で、心不全に酷似した症状が現れる。


<秘薬は汝らの為に。一つは選ばれた、残りは一つ。成すか否かは汝の自由。>


---------------

俺は、興味本位にレシピの指示にある薬品を集めてみた。

劇薬指定のものなど無く、近くの薬局で簡単に手に入った。

調合と言っても20分程度で終了。

かなり拍子抜け。

真剣に頑張っちゃった俺ってバカみたい。

これって効果有んの?


冷静に考えれば、

こんなもので劇薬など作れるはずがない。でも市販薬でも安くない。くだらない茶番に散財しちまった。


この闇サイトの噂も調べてみた。

要点を整理すると、

①管理者は死神であり、必要とする者のみ招かれる。

②その者に適する秘薬の処方(レシピ)が授けられる。

③秘薬を作れるのは招かれた者だけ。


都市伝説としても、かなり低級な部類だ・・


そもそも目的がわからない。悪質な有料サイトか?

それとも、スピリチュアル系の詐欺だろうか?


妻どうやってこの闇サイトを見つけた?


どこまで本気で信じているのか?

とりあえず、少し様子を見ることにする。


*****************

ある朝、不快な気分で目覚める。

夢見が悪かった・・って、どんな夢だっけ?


などと思いながらリビングに向かう途中、

ふと、キッチンを覗くと・・・

妻がカップに何かを入れた?


なるほど、今日が決行日なんだ。

さて、どうしようか?


とりあえず食卓に着く。

そして、何気なく会話を試みる。


「俺たちもう結婚3年目だろ、今度の結婚記念日、二人で旅行でも行かないか?」


こんな場面で言いたくなかったなぁ


「え?!」


驚いた様子の妻。サプライズ成功・・・なんてね・・;


「海外旅行なんてどうだい? あっ!でもパスポートの期限は大丈夫かな? 調べてくれないか?」


「あっ・・は、はい!」


妻は部屋を出た。


彼女のカップには小さな口紅の印。なるほど・・

そして・・・俺は自問した。


”俺はどうしたいんだ? ” 


***************

計画はこうだ。

とりあえず、俺は何も知らないふりをしてコーヒを飲む。もちろん本当には飲まない。


そして、大げさに苦しむふりをする。

その時の妻の反応を見てやろう。


もし、妻が後悔し、嘆き悲しんだら、

俺は、元気に飛び起き、俺は死にません!と、にっこり笑う。

逆に、妻が作戦成功とほくそ笑んだら、

俺は、おまえの悪巧みなど、まるっとお見通しだ!と・・・


えっ!?


パスポートを持って戻ってきた妻は、俺にパスポートを渡すと同時に、

そっと、自分のカップから小さな口紅跡を拭き取り、俺のカップと交換した。


そして・・・

コーヒーを一気に飲み干したぁ!?


この一連の動作を、俺が見ていたことには、妻は気付いていない。


・・ 一つは選ばれた ・・・


***************

<秘薬は汝らの為に。一つは選ばれ、残りは一つ。成すか否かは汝の自由。>


秘薬なんて嘘っぱちさ!

あんなもの効くはずがない!


でも、妻の苦しみに耐えるかのような表情。

それでいて何かが吹っ切れたような笑み。

そして少し潤んだ眼差し。

それらは、何を意味するんだろうか?


もしかして、あの闇サイトは『自殺サイト』?

俺はその考えに納得がいった。


妻がこんなに追い詰められてるって知らなかったんだ・・って、いまさら、言い訳か?


・・ 一つは選ばれた ・・


君は、一人で逝くことにしたのか? 俺をおいて?俺は君を失う?


・・ 秘薬は汝らの為に ・・そして・・ 一つは選ばれた ・・


そして、妻は ・・ 実行した!!


・・ 残りは一つ ・・


俺は、俺の作った”秘薬”を数滴たらすと、

カップに口を付け、一気に飲み込む。


味にも香りにも違和感がない普通のコーヒー。

妻の淹れてくれたコーヒー


・・ (おまえ)は選んだ ・・ 


****************

雨の少ないハワイで、7日中、4日が雨、しかも晴れ間なしの連続豪雨。待ったく想定外!

新婚旅行の夜、悲しい声で妻はこう言った。

「いつもこうなの、想定外エラー、想定外の女、ずっとそう・・そして、これからも・・」

それが俺たちのNGワード・・・


馬鹿なこと言うんじゃないよ(笑)


今度のハワイ旅行は全日快晴さ!

絶対だよ! 俺の命にかけて・・・って、しゃれになってない?


そうだ、会社に有休申請しとかないといけないな!


「行ってきま~す♪」


俺は、元気に手を振って、車に乗り込んだ。


そして、小さく手を振り、優しく微笑む妻の姿を、うるむ瞼に閉じ込める。


こんな闇サイトを見つけたのも、想定外の偶然かな?


でも・・・




生まれ変わっても、一緒にいような

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