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プロローグ

「俺、この戦いが終わったら故郷の幼馴染に告白するんだ」

 戦士さんがおっしゃいました。清清しい笑顔でした。さわやか系のイケメンである戦士さんにこんな顔をされれば大抵の女の子は一発で参ってしまうでしょう。

 かくいう私もくらっときてしまいました。しかし私は勇者様一筋を自負しておりますので、イケメンさわやかオーラには屈しません。断じて。断じて。

 盗賊さんはいつも通り拗ねた顔で「ケッ」と吐き捨てました。

 勇者様は困った顔で「そういうこというやつは大抵真っ先に死ぬんだぞ?」と諭しました。「なんだよお前ら、つまらないやつらだな。もう魔王城が目と鼻の先なんだぞ? 魔王倒したら旅が終わるんだぞ? ちょっとはそういうこと考えないのかよ。いい人いないのか?」戦士さんが言います。いますとも。それはもう大絶賛恋する乙女中の私は熱く勇者さんに視線を送ります。勇者さんはあっさりと「いねーなぁ」と言いました。私は心が折れました。実家に帰らせていただきますという心境になりました。

「お前らだって知ってるだろ。俺の故郷がどうなったか。全滅だぞ。全滅。地下の隠し扉に押し込まれて外から鍵かけられた俺だけ残して。好きな子もいたさ、義理だけど両親だっていたさ。みんな死んじまったんだ。とてもじゃないけどそんな気持ちにはなれないんだよ」

 ええ、知っています。

 かくいう私も似たような境遇ですから。

 戦士さんがバツの悪そうな顔をします。盗賊さんがナイフを研ぎ始めました。私はうわこの人すごくマイペースだなと思いました。ええ、知ってましたけど。

「だけど」

 切なくなるような声で勇者さんが言います。

「だけど魔王を倒して世界が平和になったらそのときは……」

「今度はお前の嫁探しの旅でもするか!」

「なんでそうなるんだよ!」

 明るく喧嘩する戦士さんと勇者さんを見て私は微笑んで、ずーっとこんな感じで生きていけるんだと思っていました。


 甘かったです。

 甘かったんです。

 砂糖をげろほど塗した揚げパンより更に激甘だったんです。




 私たちは魔王に挑みました。

 勇者さんが死にました。

 私は動転して泣きじゃくって、恐怖のあまりにおしっこを漏らしました。

 戦士さんが逃げろと叫んで私を庇いました。

 盗賊さんは動転して動けない私の首の後ろを手刀で叩いて気を失わせると、そのまま担いで走りました。


 勇者が死にました。

 

 申し遅れましたが私は女魔法使いのヒフミと言います。

 恋愛対象が突然の死を迎えてどうしたらいいのかわからなくなってしまった十六歳の恋する乙女。

 チャームポイントはおっぱい(戦士さん談)だそうです。




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