3話
―――――………‥‥
「俺は……俺にできるのは……」
――お父さん。
「俺は……上手く、気持ちを伝えられない」
――いつも、私を見るだけで見えてないよね。
「俺は……別に……何も思ってない訳では……」
――いつも、何も言わないよね。
「いつからだろう。娘と話さなくなったのは」
――いつも、無表情で何を考えているのか分からないお父さん。
「……娘が幼稚園の頃にくれた手紙……ずっと財布に入れてるのを知ったら、また気持ち悪いって言われるかな」
――お父さん、泣いているの?
「俺にできるのは、娘が助かる為に治療費を稼いで、妻が娘と一緒に居られる様に働いて……俺だって会いたい。傍に居たい」
――お父さん、泣かないで。
「俺にできるのは、働いて働いて仕事をして、あの子を助けたい。妻を支えたい」
――お母さんもお父さんも、私の事を知らない?
――私は、お母さんとお父さんの事を、知っていたの?
「俺は器用じゃない。何でもする。あの子が助かるなら、腕でも足でも命でも! 神様が居るなら何だって捧げる……だから、消えないでくれ……消えないでくれ……頼む……お願いします……!!」
―――――………‥‥
――零れ出す涙を落とすまいと空を見上げると、其処には不細工な落書きのアンパンマン。
「あー、あのさぁ……なんつーかなぁ……一緒にバイキンマンの野郎をシバキに行っちゃう?」
――何それ、ナンパ?
「いや、上手く言えないっつーか、ちょっとキツイ事を言うんだけどさぁ……」
部屋を見下ろすと、其処にはベッドで眠る私。隣には、泣き叫んでいるお母さん。良かった、お母さん助かってた。
「えっと……終わっちまったんだよ。お前。もう、アレだ。その、ずっと飛べちゃう」
――それって、私、もう……。
「うん、すまん。傷付かない様に言えたら良いんだけど、俺って何せ喋りはダメじゃん? 口下手じゃん? 繊細じゃん?」
――良いの。もう、ダメだって分かってたし。全部、分かってたし。分かってた。
「なぁ」
――何が君の幸せ、何をして喜ぶ
「泣くなよ」
――解らないまま終わる、そんなのは嫌だ
「なぁ、あの、何もできなくて、すまん」
――忘れないで夢を、零さないで涙、だから君は飛ぶんだどこまでも……。私、解ったよ。少しだけど、お母さんとお父さんが私を必要として、助けようとしてくれてて。
「おい、どこ飛んでくの!? ちょ、早い! 手を引っ張らないで! 誰かさんが下手に作ったから、俺の腕って華奢なんだってば! ち、千切れるってばよ!」
――お母さんお父さん、ありがとう。
――よし、行こうハゲ! 愛と勇気しか友達じゃないアナタの友達になってあげる!
「待って! ハゲって言った! 男が言われて悲しいワード一位! 俺が泣いちゃう!」
嗚呼、アンパンマン。優しい君は。行け! 皆の夢、守るため。