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Lv99の魔物がいる異世界  作者: てすとす
序章 異世界
8/25

覚醒

スライム戦の決着です。

岩がメルに向かって飛んでいくときには、体はもう動いていた。


メルの前に出て、背中を向けかばう。

脇腹に岩が突き刺さり、激痛が走る。


痛みで意識が飛びそうになる。けど今ここで気絶してしまったらメルが危ない。

息が詰まりそうになりながらも、必死に耐える。



メルが顔を上げる。岩に貫かれた俺を見て顔を引き攣らせている。


当たり前だろう。まだ小さいのに結構グロい事が目の前で起こっているのだから。


「…………ケガ…はない……か?」


そう言って笑ってみせる。でも今の笑顔はかなり歪んでいるものだろう。それでも心配はさせたくなかった。


「あ…………たびびと……さ……」


「はは……大丈夫、大丈夫だから。」


スライムの方へ向く。するとスライムは次の魔法の詠唱を始めていた。


スライムの魔法を何とかしたいが、刺さってる岩を抜かなきゃいけない。想像を絶する痛みを覚悟して脇腹の岩に手を伸ばす。


「ぐぅ……!」


痛い痛い痛い痛い。痛みでなにもかも壊れそうなのを我慢するが、早くしないと堪えられなくなる。



「がああああああぁぁ!!!」


こえをあげながら、いわをおもいきってうしろにひっぱる。

そのこえにたろがほえているが、そんなことにきにするよゆうもなかった。





「ッはあ!ハァ……ハァ……」


いわがぬける。

思考が戻ってくる。

脇腹の穴から血が溢れてくる。



「ヤバい…なぁ…………ハァ……」


力がぬけて後ろに倒れる。


「た、旅人さん!」


メルが石版を捨て駆け寄ってくる。タロが前へ行き、スライムに威嚇している。


「は、はやく止めないと……」


メルが服のポケットから複数の葉っぱを取り出す。俺の服をめくり、脇腹の部分にそれをあてる。


「お願い……止まって…!」


「ワン、ワン!」


視界が薄れていく。

タロの吠える声が小さくなっていく。


(俺……ここで死ぬのか?)


これが死の前兆だと本能が理解していた。


(そりゃ…ないぜ……バイトや……勉強の…日々から抜け出せたのに……こんなもんかよ……)


視界が暗くなっていく。


(友達とも……遊び足りなかったのに……親孝行も……俺は……俺は…………………………………)


この世界の事も……………………









まだ、生きたい。







まだ、戦いたい。







まだ、この世界を………






生きていきたい!







目を見開き、体が勝手に剣を掲げる。



掲げた剣は、うっすらと輝きだす。


「えっ……?」



メルが投げ出した石版が、共鳴している。



「俺は、生きたい!この世界を、冒険してみたい!だから、あの魔物を、倒したい!だから!」


剣がさらに光を増す。




「俺に力を貸せ!あの魔物を、倒せるほどの力を!」



剣がさらに輝き、周りが真っ白になる。





汝が力 我に見せてみよ



どこからか声が聞こえる。


しかしどこから聞こえたのは、分かっていた。



我が名は………



この剣の名は…………





      「「フルンティング…!」」


光が、満ち溢れる………






どうしよう、なにをしたらいいのか分からない。旅人さんが死にそうで、血を止めようとして、そしたら旅人さんが剣を掲げて……


旅人さんが光に包まれて……もう訳が分からなくなった。



「ワン!」


タロがこっちに近づいてくる。

後ろにはスライムが詠唱を終え、巨大な岩を作り出しているのが見えた。


そしてスライムの作った岩がわたし達へ向かって飛んできた。


もうだめ、そう思った瞬間、






突然白い線が走り、岩が真っ二つに割れた。


「…………」


わたしは何も言えなかった。


いや、目の前の出来事に見惚れていた。




倒れていた旅人さんが立ち上がって、岩を割ったのだ。あの巨大な岩をどうやって割ったのか、旅人さんが持っている剣じゃ到底出来ない………



さっき旅人さんが持っていた剣と、今持っている剣と全然違っていた。


さっきまでは錆びてた剣だったけど、持っていたのは緑色の柄に鞘、白い剣身と変わっていた。


「あっ、ケガが……」


あれだけの重傷を負ってたのに、血は止まっていて傷口すら塞がっていた。


「スライム……」


旅人さんが剣を構える。


「この剣、フルンティングでお前を倒す!」


旅人さんはそう言い放ち、スライムに斬り掛かった。






いつの間にか傷が塞がっていて、体がいつもより軽い。

それにこの剣なら、アイツを斬れる!



前へ跳び、スライムにジャンプ斬りを放つ。


スライムの体がスパッと斬れる。

しかしスライムの体が大きく、致命傷は与えられなかった。


「まだまだ!」


そのまま連続で斬りかかる。スライムに確かなダメージを与えれてるが、スライムもやられてばかりではなかった。


俺の攻撃を素早い動きで回避し、その隙に体当たりをかましてくる。



素早い動きにまだ対処しきれない。剣を盾にして体当たりを受ける。すると、吹っ飛ばされたときよりも威力は無かった。


「剣が、守ってくれたのか?」


剣を見る。剣身に付いている赤い石がほんのり光っている。



どうやらこの剣は防御面に特化しているみたいだ。

スライムを押し出し、突きを放つ。


また素早い動きで躱される。

これじゃキリが無い。どうにかしてアイツの動きを止めないと。




我の力を望むか?



声が聞こえる。剣が語りかけてきたのか。


「ああ、お前の力を貸してくれ。」



我の魔力 汝に与えよう……


承諾すると、剣が光り出し地面に魔法陣が展開される。剣の中の魔力が俺の体を通り、魔法陣に注がれる。


まるで剣が、魔法のやり方を教えてくれるような感覚だった。


スライムが突進してくる。その時詠唱が終わり、魔法を放つ用意が出来た。




「汝に与えしは、大地と自然の裁き。エルフバインド!」


魔法が発動し、地面から長い木々や茨が飛び出てきた。複数の木々は突進するスライムを止め、茨がスライムに絡み付く。


「!?」


スライムが驚いているように見える。

素早い動きが封じられ、もはやスライムに為す術は無かった。


「これでっ、トドメを刺す!」



剣の魔力を使い、威力を増大させる。この一撃にすべてを込める!


「いっ けぇぇぇぇ!!」



スライムに向かって思いっきり踏み込み、剣を振り降ろす。

その一撃は森全体が震え、スライムとは比べものにならないほどの威力だった。




砂煙が舞う。全力の一撃を放ち、俺はどっと疲れその場に座り込んだ。



砂煙が収まる。その先に見えた光景は、


「やった……!」





赤黒いスライムは影も形もなく、あったのは衝撃ではじけた薄い赤色のゼリーだった。



俺は、初めての戦いに勝ったのだった。

土+風魔法 エルフバインド


地面から木々と茨が飛び出して、敵を拘束する魔法。床が土じゃなくてもどこからか生えてくる。


「汝に与えしは、大地と自然の裁き。エルフバインド」


魔法の属性に関しては後の話で説明します。

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