スライムの群れ
はじめての戦闘回。
大変なことになってしまった。逃げるにしても退路はスライム達によって塞がれているし、戦うにしても剣が抜けないんじゃ分が悪い。
それにスライムがどんな攻撃をしてくるかわからないので、圧倒的にこちらが不利な戦いだ。
「タロ!メルを守ってくれ!」
犬のタロは、言わなくてもいいと言わんばかりに、少女のメルの前に立ちはばかる。
よし、これでいい。このままタロにメルを任せて、俺は一人と一匹を守ればいい。
俺は剣の柄を持ち、スライムの前に歩み寄る。
数は見れるだけでも4、5匹ぐらいはいる。
スライムは警戒しているのか、じっとしたまま動かなかった。
ならば先手必勝。思いっきり振りかぶって、鞘の部分をスライムめがけて叩きつける。
それが見事に命中し、スライムの頭部らしき部分が粘土みたいにへこむ。こんなことを思ってる場合じゃないが、まるで餅つきみたいだ。
「!?」
他のスライム達が同胞が攻撃されたのを見て攻撃した者へと、突撃する。
俺は剣を引き、その勢いのまま横へぶん回し、突撃してきたスライム達をなぎ払う。
スライム達がポヨヨンと跳ねて、その一匹が横にある木に強く当たり、そのまま動かなくなった。
やっぱり、この世界のスライムもチュートリアル的存在なのだろうか。
これならいけるかもしれない。
スライム達が、動かなくなったスライムの所へ転がっていく。
嫌な予感がした。
辿り着く前に俺はスライムに、トドメをさそうとしたが、
「ヴッ!?」
後ろから何かに体当たりされて、俺は倒れてしまった。後ろには最初に攻撃した、凹の形になっているスライムがいた。
しまった、目を離してしまった。
木の方に再度目を向ける。
倒れてたスライムと、転がっていたスライム達がいなくなっていた。
左右を見回したが形も無い。
だが、影はあった。
上を見る。
そこにあったのは暗めの空ではなく、
「ウソだろ……」
巨大で、赤黒い色をしたスライムがいた。
俺は急いでここから離れる。
断片的に見えたのは、潰されようとしているスライムと、物凄い勢いで落ちてくる巨大スライムだった。