ウィンデ村
「着いたぜ、ここが俺達の村、ウィンデ村だ。」
何十分か歩いて着いた村は、ウィンデ村っていうらしい。木造の家が大半で、畑や井戸があり、まさに村という感じだった。
畑には男性が鍬を持ち、畑を耕している。
井戸付近でおばさん達が井戸端会議をしている。
「どうだ?なかなかのどかな所だろ?とりあえず俺の家に来いよ。朝メシ奢ってやるからよ。」
たしかに、バイトが終わって晩メシも食べてなかったし、途中で全力疾走したからもう空腹だった。俺はお言葉に甘える事にした。
「そういえば、自己紹介してなかったな。俺はヤサンって言うんだ、覚えなくてもいいがな。」
「恩人を忘れる事はできませんよ。俺の名前は坂崎優です。」
「サカザキユウ?変な名前だな。まあくつろいでてくれ。」
恩人って言った事を早くも後悔した気がした。それは置いといて、朝メシが出来るまでくつろげと言われたので暇つぶしに部屋の中を物色してみる。
大きめの竃やヤサンが持っていた薪ぐらいしかめぼしい物が無く、仕方ないので家の前で日なたぼっこしながら村を眺めていた。
暖かさで瞼が下がり始めた時、
急に視界が暗くなって目を開けてみると、目の前に可愛らしい服を着た少女が立っていた。隣には小さな子犬が尻尾をブンブン振り回している。
「お兄ちゃん、だぁれ?」
「ここの家の人に拾われた、ただの旅人だよ。」
「ヤサンお兄ちゃんに?旅人さん、かくごした方がいいよ?」
「えっ覚悟?」
「ヤサンお兄ちゃん朝はたくさん食べるから……」
「おっメルじゃねぇか。今日も犬と散歩か?」
ヤサンの声が聞こえたので声の方を向くと、すでにパンをかじっていたヤサンがいた。
「うん、今日もタロと森を探検するの。」
「そうか、何回か言ってるがあまり奥には行くなよ。奥まで行って母さんに怒られた事、憶えてるだろ?」
「だいじょうぶ。もう怒られたくないから。」
そう言って少女は子犬を連れてどっかへ行ってしまった。
少女が行った後、ヤサンがパンを食いながら喋り始めた。
「あいつは森を探検するのが趣味なんだ。それ以外に村でやることは無いしな。」
「へぇ……森ってどういう所なんだ?」
「森は森だよ。当たり前だろ?ここからしばらく歩くと大きい森があってな、たまに珍しい木の実があったりするんだ。」
「なんか奥とか言ってたけど、森の奥に何かあるのか?」
「あー……それは言えないな。旅人にはこの手の話をするとすぐに森へ行くからな。」
「旅人に、ってもしかして財宝なんかがあるのか?」
「だから言えないって。それより朝メシができたぜ。さっさと食わねぇと飯が冷めるぜ。」
そうだ、俺は朝メシを待ってたんだった。
それに気づいた時にはヤサンはパンを食い終わっていた。