一日の終わり
俺は地図を頼りに1時間程迷いつつも依頼人がいる建物に到着した。なんとなく空を見上げるともう夕方になっていて、一日の終わりを実感する。
建物は石で造られていて、他の建物よりも小さめ。扉はなく入口にのれんのようなものが掛けられていて、俺はのれんをかき分け中に入った。
中に入って最初に見えたのは大きな金床に火が消えた竃。これだけでもここが鍛冶屋だということが分かった。
「すいませーん。誰かいますかー?」
「へーい。今出ます……」
奥の部屋から人の声がする。
「いらっしゃい……」
出てきた人が俺の顔を見て硬直する。俺も出てきた人の顔を見て驚く。
「あってめぇ、あの時の!?」
そいつは俺の顔を指さして怒りの表情を見せる。指をさしてきたそいつは水無月晴香の財布を盗んだあの男だった。
「あの時はよくもやってくれたな。てめぇに売り出すものはねぇ。帰りやがれ!」
「今すぐにでも帰りたいが……その前にこれだ。」
俺は近くの机に袋を置く。
「依頼を受けて採ってきた鉱石だ。お前が依頼してきたのか?」
「依頼? 知らねぇぞ俺は。」
「俺が頼んだんだよ。」
奥の部屋から濃いヒゲのおっさんが出てきた。どうやらおっさんが頼んだようだ。
「依頼の鉱石は?」
「その袋に入ってます。」
おっさんが袋を取り、中を確認する。
「ほぉー、こんなに採ってくるとは中々やるじゃねぇか。洞窟からまだこんなに採れるとは。」
「えっ。」
「あの洞窟には魔物が蔓延ってきてから行ってないからな。これで商売が出来るってもんだ。」
なにやらとんでもない事を言ったような。このおっさん。しかも商売が出来るって、今まで商売してなかったのかよ。
「それに、アダマンまで持ってくるとは……」
「アダマン?」
「お前、アダマンも知らないのかぁ?」
財布を盗んだ男が話につっかかる。
「アダマンはな、この世で二番目に堅い鉱石だ。これで作られた武器や防具は並の攻撃じゃ壊れない。」
「まぁそんな感じだ。……よし、これだけ持ってきてくれたあんたに何か作ってやるよ。」
「はぁ!? 親父本気かよ!」
「オズ、お前が何されたかは知らん。どうせお前の事だから財布くすねようとしたらボコボコにされたんだろ。」
おっさんの鋭い言葉が息子オズに突き刺さる。
「だが今はこの……客人のおかげでやっと鍛冶をすることができる。ここは感謝するところだぞ。」
「ぐっ……わーったよ。ほんとにすまなかったな、兄ちゃん。」
オズが悪態をつきながら謝る。
「もういいよ、財布は返して貰ったし。水無月にも言っとく。」
「ミナズキ? あの嬢ちゃんの事か。そうだな、嬢ちゃんにも言っといてくれ。」
「よし、仲直りは済んだな。あんた名前は?」
「坂崎優です。優で構いません。」
「ユウか。また明日きてくれ。アダマンで作った最高級のものを用意するぜ。」
「ユウ……せっかく親父が作ってくれるって話だ。必ず来いよ。」
「そんなことまでしてくれてありがとうございます……それでは明日また来ます。」
俺はそう言い、建物を出た。
ギルドに寄り、受付の女性にその事を報告する。
「お疲れさまでした。それでは報酬金を受け取りください。」
依頼が書かれた紙を渡し、報酬金の銀貨3枚を受け取る。これで銅貨300枚分の価値があるらしい。ロングソードが銅貨70枚だったから4本は買える…………
…………ロングソード?
「あああっ!! 置いてきちまった!!」
「ゲコゲコ。」
その頃カエルは湖の底で剣を見つけていた。
とりあえずロングソードは明日取りに行くとして、今日はもう休もう。どこかに宿はないだろうか?
「おっこの看板は……」
建物の壁に掛けられている看板には[INN]と書かれている。どうやら宿は案外近くにあったらしい。俺はさっそく宿に入る。
「いらっしゃい、部屋ならまだ空いてるよ。」
宿に入るとおばさんが笑顔で迎えてくれた。おばさんの話を聞くに、どうやらまだ泊まれるらしい。
「いくらで泊まれますか?」
「一泊で銅貨10枚だよ。」
ふむ、安いのか安くないのか分からないが今持ってるお金で十分払える。でも銅貨が5枚しかないな……
「はい。銀貨だけどいいですか?」
「構いませんよ。銅貨90枚返すね。」
俺は銅貨90枚を貰い、部屋に案内される。部屋はベッドに小さな窓が一つと小さな部屋だった。
「それではごゆっくり。」
そう言っておばさんは出ていった。おばさんが言った後、俺はフルンティングや傷薬を床に置いてベッドに倒れ込む。
(色々な事があってもう疲れた……もう寝てしまおう……)
晩メシなんて考える間もなく俺は深い眠りについた。
オズくんチョロすぎない?書いてて思った。
あと某リズムゲームのイベント走ってて1日遅れてしまいました。すいませんでした。