こうして私はメイドになった
かなり長くなってしまった。
休憩を挟んでお読みください。
「うーん………」
どこからともなくおいしそうな匂いがする。どうやらまた意識を無くしてしまったらしく、私はいつの間にかベッドの上で眠っていた。
「起きましたか。」
体を起こすと、窓を開けてくれた女性が気づいたのか話しかけてくる。
「倒れてしまったので心配でしたが、特に目立った外傷は無かったですし、ただの空腹の様ですね。」
彼女は立ち上がって、テーブルに置いてあるトレイへと向かっていく。
部屋を見渡す。白い壁に床はふかふかそうな赤い絨毯。他にもタンスや8台ぐらいのベッドがあった。
「ここは使用人が使う寝室よ。私が日誌を書いている時にあなたは窓を叩いて私を呼んだ……そんな所かしら。」
彼女は椅子に座り、自分の膝にトレイを置く。
「お腹が空いていたのでしょう? ちょっと遅い昼食だけど、食べておきなさい。」
トレイには丸っこいパンと、白めのスープ。
私はそれを認識した途端、もうかぶりついていた。
「あらあら、急にたくさん食べるとノドに詰まりますよ。」
そんなことを喋っていた気もするが、今はありつけた食事に集中していた。
(うまーい!)
「ごちそうさまでした!」
「お粗末さまです。少しは元気になりましたね。」
私は置いてあった食事を全て平らげた。おかげで体の怠さは無くなって、私の元気な性格も戻ってくる。
「ありがとうございます! えっと、お礼は……」
私はバッグから何か取り出そうとしたら、あることに気づいた。
(よくよく考えたら、バッグ無いじゃん!)
なんか真っ白になったときに置いてきちゃったのかもしれない。お礼になるようなものが無く、どうしようか考えていると、
「お礼ねぇ……実は最近忙しくなってきて人手が足りないのよ。あなた、ここで働く気はないかしら?」
「えっこの城で働くってことは………使用人? ……メイド!?」
あのメイドになれる。実は、奉仕する仕事に憧れていたのだ。メイドになれると思うとテンションが上がってきた。
「といってもしばらくは雑用だけど。あとメイドとしての作法も叩き込んでもらいます。それに………」
「やります! やりまぁす!」
「…………意気込みは良いわね。後で泣き言言っても聞かないわよ。ついてきなさい。」
女性は立ち上がり、ドアを開けて歩いていく。
「えっちょっと……待ってくださーい!」
私はベッドから降り、彼女を追いかけた。
「どこに行くんですか?」
女性に問いかける。
「これから王様に挨拶しにいきます。それであなたをここで働かせてもらえるか審査をうけてもらいます。」
「審査って、どんなの?」
「簡単です。あるものに触ればいいだけです。それであなたを雇うかが決まります。」
あるもの? 何だろうと考えていると女性が足を止める。
「この先が謁見の間です。失礼のないように。」
女性が扉を開ける。
まず思ったのが、広い。あの庭程ではないがそれでもかなり広い部屋だった。
女性がすたすたと歩いていく。私も緊張しながらも女性に付いていく。行く先には、豪華な椅子に座っているまだ初老ぐらいの男性が頬杖を突いて待っていた。その奥には男性よりも大きな石が置かれていて、不思議な感じがする。
その隣にも豪華な椅子があるが座っている人はいない。不在だろうか。
「おはようございます。ヨルム王。」
「うむ、ミリアよ。お主がこんな時間に顔を見せるのは珍しい。もしや息子の行方が分かった……」
「その件に関しましてはまだ捜索中です。今回は別件でして……」
「そうか……。して別件とは何だ。」
「この子をこの城で働かせてあげるべく、例の審査を受けにきてもらいました。」
「ほうあれか。君、名をなんという?」
「わ、私は水無月晴香とい、言いますです!」
「緊張しすぎよ……」
「はっはっは、まぁよい。我が名はヨルム・アベリア・グローリー。さてミナヅキよ、この[審判の石]に触れてみよ。この石が青に染まったらそなたを雇う。しかし赤に染まったら……」
王様は石を触りながら説明する。石が青色になったら雇ってもらえるらしい。
「そなたを牢に入れる。その手が血で染まっていない事を願っておるぞ。」
なにやら物騒な事を言っているが要するに石に触って青くなればOKということみたい。
私は段差を上り、石の前まで歩く。
深呼吸して、その石に触れる。
石はひんやりしているがどこか温かく感じる。
青になって、と冷や汗をかきながら結果を待つ。
石の色が徐々に変化していく。青青青青、と色が完全に変化するのを待つ。
「………って、あれ?」
石は青にも赤にもならずに、緑色になった。女性が頭をかしげる。
「初めてですね。石が他の色になるなんて……」
「王様、これってどうなるんですか? …………王様?」
王様の方を見ると王様の顔は信じられないといわんばかりに驚いている。王様も初めて見るのかな?
「ヨルム王、どうされますか?」
「う、うむ。雇ってもいいだろう。これからはこの国のために働いていくがよい。」
王様は動揺しながらも私を雇うことを許可してくれた。
「分かりました。それでは失礼いたします。行きますよ、ミナヅキ。」
女性にまたついてくるよう言われる。王様に頭を下げてその場を後にした。
「なんということだ……まさか彼女が……」
緑色の審判の石を見て呟く。それを見て昔我が父が話したことを思い出した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「この大きな石は何?」
「この石はな、審判の石といって悪い人を見つける不思議な鉱石なんだ。」
「どうやって見つけるの?」
「この石を悪い人が触ると赤くなって、そうじゃない人が触ると青くなるんだ。」
「へぇ~。」
「でもね、ちょっと特別な事があるんだ。それは緑色になるとき。」
「緑色はどんな人なの?」
「それはね………………この世界を救う、正義の味方なんだよ。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
あの時父が言った事は訳が分からなかったが、今は現実に起こっている。彼女がこの世界の救世主になる。
「そして、息子を救ってくれると…………」
「ふぅ~緊張したぁ………」
「とりあえずあなたが罪人じゃないことは分かったわ。これから服のサイズを測るけどいいかしら?」
「大丈夫でーす………」
私は安心感に包まれ、延びた返事をした。
「ここが倉庫……あら?」
女性が何かに気づく。
「どうしたんですか?」
私は女性の後ろから前を覗く。そこにいたのは白のドレス姿をした女の子。手にメイド服らしきものを持って鏡の前で立っている。
「ソフィーお嬢様、また倉庫なんかにいらして………」
「あらミリア。あなたもやる? その後ろにいる人も。」
「やりません。今からこの子に合うメイド服を探す予定がありますから。」
「もしかして新しく来た人? お父様の許可を得たのね。他の人はお父様の顔を見るだけで真っ青になって逃げ出すのに。」
「えっと……あなたは?」
「私? 私はソフィー。ソフィー・ロゼッタ・グローリー。長いからソフィーでいいわよ。」
あれ?王様もそんな名前だった気がする。もしかして……
「王女さま?」
「そうですけど?」
…………………。
「こ、これからお世話になります。水無月晴香です。」
「これからお世話をする方でしょう。あなたは。」
女性にツッコまれる。そういえばこの女性はミリアとか言われてた気がする。
「さて、始めるわよ。お嬢様は早く出てってください。」
「ええーいいじゃない。ここにいたってー。」
「そういう問題ではございません。王女さまがこんな所にいるなんてもってのほかです。それにお嬢様は…………………」
そんな感じでミリアさんの長い説教が始まった。
私もこんな感じで怒られるのかなと怯えながらも、この人達と生活していくと考えると顔がにやつく。
そしてどうやったら元の世界に戻れるのかという目的を忘れないようにしながら、私のメイド人生は始まったのであった。
「戻ったらまず代理でやってくれた人にお礼をいうこと。あと料理の仕込みを朝までに終わらせること。いいわね?」
「はい!」
あれから2カ月が過ぎた。私はメイド長に嫌というほど作法を叩き込まれ、今は厨房係を任されている。私には料理の才能があるらしく、メイド長が私を雑用から昇格?してくれた。
「あなたの料理、期待してるわよ。ちゃんと美味しいんだから自信を持ちなさい。」
「はい!」
「そして早くミリアに美味しいと言わせてやりなさい。あの時の借りなんでしょう?」
「はい! メイド長にあの時のお礼を、料理で返すんです!」
「ハルカ、早く来なさい! 罰を増やされたいの?」
「今行きまーす! 失礼いたします!」
ソフィーお嬢様に一礼して、私はメイド長の後を追った。よし、今日の仕込みは腕によりをかけよう。そんな事を思いながら私の一日は過ぎていった。
一 方 そ の 頃
「キキキキキキ!」
口が付いた鉱石が襲ってくる。突然襲ってきたので反応が遅れてしまい、
「ヴッ………!」
鉱石が腹にめり込んでくる。そのまま貫通しそうになるところを回避するため横に跳ぶ。
「ケケケケケケケ」
跳んだところにまた鉱石が突進してくる。俺は急いでロングソードを抜く。
ガーン!
「危ねっ!?」
顔に飛んできた鉱石をギリギリで止める。
剣で弾き飛ばし、そのまま力に任せて右薙ぎする。
鉱石はなぎ払った剣に直撃し、バラバラに砕け散った。さらに突進しようとする鉱石にこのまま下から上に切り上げ迎撃する。
切り上げは鉱石の下部分に当たり、ヒビが入った後バラバラと崩れていった。
こいつらが意外と脆いのが幸いした。今もロングソードの重さに振り回されてるが、振り回しっぱなしなら何とかなるかもしれない。
鉱石達が負けじと突進してくる。俺はロングソードを下に構え、鉱石達へ向かった。
「これで……19体目!」
もう19体も倒しているのかと心の中で思う。鉱石達を切っても切ってもどこからか出てきて、数が全然減らない。この洞窟にどんだけいるんだよ。
「ぜぇ…はぁ………」
鉱石達が攻撃をやめる。もう諦めてくれ、と願いつつ剣を構え続ける。
「コココココー!!」
「ケケケ!」
鉱石達は分散して俺を中心にして円の形に広がる。一斉攻撃か? 集中していつ来るか見極める。
「ケーココ!!」
一匹が叫び鉱石が動き出す。しかしそれは俺に行くことは無く、壁のランタン目がけて突進していく。
(おい、ランタンが消えたら!)
ランタンが一斉に壊れる。その瞬間に洞窟は暗闇と化した。
「くそっ! 何も見えねぇ!」
どこから来る? 聞こえてくるのは鉱石達の不気味な声だけだ。少しずつ場所を変えながら警戒する。
すると片足が地面に着かなかった。
そのまま後ろへ倒れる。体が地面に着くことは無かった。
「うわああああぁ!!」
俺は反射的に叫ぶ。そのまま落下している感覚に恐怖感を感じながらも体を下に向ける。
真っ暗だが奥に青い光が薄く見える。それが水であることを理解するのは水に落ちてからだった。
ヒロイン視点9割
戦闘シーン1割……
次は戦闘回書きます。