王国までの道中
俺、坂崎優はウィンデ村を出てしばらく歩いていた。
今歩いている道の周りには草原やちょっとした森で彩られていて、穏やかな旅路となっている。
このまま何も無くエスカド王国まで行きたいと思いつつも、
「歩いている旅の人! どうかお助けくだされ~!」
道の先に馬車と大声を出している小太りのおじさんがいる。
どうやら助けを求めているようだ。
現実は甘くなかったな。
そんなことを思い馬車まで歩いた。
「どうしたんです?」
「実は、馬車がぬかるみにはまってしまって困っていたのです。旅の人、一緒に馬車を押してくださいませんか?」
「それぐらいなら、いいですけど……」
「おお! 助かります! それではあなたは馬車を押して……」
おじさんは車輪を持ち、俺は馬車を押す体勢になる。
「いきますよ、せーのっ!」
掛け声に合わせ、思いっきり押す。
やっぱりというかあまり動かないが、それでも馬車を押し続ける。
「ふんぬ………っ! あともう少しですっ!」
…………………
何も考えない方が力が出る気がする。
それであと何だって?
ガラガラ………
「わぁ!?」
馬車がぬかるみから外れたのか動き始めた。
勢い余って尻もちをつく。
「大丈夫ですか!? なにはともあれ助かりました。ありがとうございます……」
「いえ、どうってことないです。」
俺は砂埃を払い立ち上がる。
「お礼といってはなんですが、あなたがよければ馬車に乗せてあげましょうか?」
「この馬車はどこに行くんですか?」
「この先にあるエスカド王国です。私はそこで商いをやっていて、商品を運んでいる途中で馬車が……」
「そういうことだったんですか。俺もエスカド王国に行こうとしてたので、乗せてってくれませんか?」
「お安いご用ですとも! さあ馬車に乗ってください。」
これでしばらくは歩かなくてもよくなったな。
馬車なんて初めて乗るけどどんな感じか期待しつつ、馬車に乗り込んだ。
「それではいきますよ? それっ。」
馬車がガタンと揺れ、エスカド王国へと進み出した。
「すげー、本物の鎧だ。」
エスカド王国に着くまでの間、俺は馬車の中の商品を色々と見ていた。
「ははは、本物じゃない鎧なんて用意しませんよ。」
「えっ……ああそうですね。」
そうだここは異世界じゃないか。ファンタジーな世界だったじゃないか。
「剣に鎧や……盾まで、凄いなぁ。」
「何か買っていきます? いい品質の剣を仕入れましてね。」
「いや、剣はもう持っているんで。」
俺は懐からフルンティングを出す。
緑色の柄、鞘も緑色で多少の白で彩られてる。
素人目でもただの剣とは思えないほどに存在を放っている。
「ほぉー綺麗な剣だねぇ。剣身も見せてくれるかい?」
「いいですよ…………あれ?」
柄を持ち剣を抜こうとしたが、ビクとも動かない。錆びてはいないはずなんだが………
「ぬぎぎぎ……………」
「どうしたんですか?」
「いや、剣が抜けなくて……」
あの時はすんなりと抜けたのに……
我は究極の魔の者にしか力を使わぬ…………
フルンティングから声が聞こえた。なんだそのニートみたいな発言は。
「ダメだ、抜けない。」
「それは残念です。残念ですが、だったらなおさら剣を見ていってください。いいものが見つかりますよ。」
仕方が無いのでフルンティングの代わりになるものを探してみる。
ガサガサと色んな剣を物色する。
「短剣や曲剣、巨大な大剣に……刀まであるな。」
「なんでも取り揃えておりますから。」
「うーん…………よし、これにしよう。」
しばらく物色した結果、オーソドックスな長剣を選んだ。こういうのは形じゃなくて安定感だからな。
「ロングソードですか。それなら銅貨70枚になりますが、どうされます?」
「持ち金は………銀貨1枚。これで買えないか?」
「ええ大丈夫です。それなら銅貨100枚分なので。」
「へぇ………銀貨は銅貨100枚分か……」
この世界のお金の単位を多少理解し、銅貨30枚
のお釣りをもらい俺はロングソードを買った。
鉄製の長剣。だれもが剣を考えるとこんな形のものを想像するだろう。
「いやぁありがとうございます。旅人さんお目が高い。それは砂漠にあるササラ王国で鍛えられた剣で、かなり丈夫らしいですよ。」
そんな説明を受けつつ、俺はエスカド王国に着くまでくつろぎ始めた。
「旅人さん、エスカドに着きましたよ。」
「おおお………体が……」
移動中に何回も馬車が跳ねたので、色んな所が痛い。痛みに耐えつつ馬車を出る。
そこにあったのは大きい二階建ての家にたくさんの店が並んでいる。後ろには城壁があり、家より大きい門がある。
大勢の人々が様々な事で騒ぎ、賑わっている。
そして何より目につくのは、入り口前にいてもデカイと断言できる大きな城。
「ようこそ旅人さん。エスカド王国へ。」
「ここが……エスカド王国。」
俺はエスカド王国に来たのだと実感した。
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