モコモコの宇宙人
よく同じ夢を見る。
僕が二人組みの悪の組織に追われていて、それを羊のようなモコモコした髪の毛をした宇宙人の女の子が助けてくれるんだ。その子には特殊な力があって「言葉」を発するとそのとおりになるんだ。
追っ手に向かって「2秒後に足が破裂する」と発すれば、本当にそのとおりになる。でも最後は橋の上で銃撃されて死んじゃうんだ。そんな夢をもう2週間ほど見続けている。そして最後に彼女は言うんだ。
「この世界はあと一年で終わる」って。
これって何かのお告げなのかな――
◇
いつも通り身支度をして大学へと向かう。そうしたら道端に倒れている女の子がいた。僕がその場で介抱をすると、その子は目を覚ました。そして僕をジッと見つめると「3秒後にパンをくれる」と呟いた。そうしたら不思議な事に僕は昼ごはん用に買っておいたコンビニの惣菜パンを手渡していた。
「きみ、こんなところで何をしてたの」
「……」
女の子はパンを口いっぱい頬張って、無言で僕を見つめ続けた。よく見ると瞳には十字架の模様があった。どこか異質な空気が少女から漂っていた。
「見つけたぞ!ルーイン」
突然大柄な男二人組みが女の子を指差して走ってくる。手には小銃が見られた。そしてそれは彼女目掛けて放たれた。
「……大丈夫。全部あたらない」
女の子がそういうと、弾は全て彼女の手前で止まり、カランカランと音を立てて足元に落ちた。パンを食べ終わった女の子は僕の手を引いて「かくまってくれる」と呟いた。
◇
追っ手を上手くかわした僕と女の子は今、僕の部屋にいる。どうやら彼女の言葉には逆らえないようだ。ん?これって夢の中にいたモコモコの宇宙人の話とよく似ているぞ。もしかして……
「きみ、宇宙人?」
「そう。NASAから追われてる。助けて」
「実験体にされようとしてるの?」
「そう。あいつら怖い。故郷に帰りたい」
「どうやったら帰れるの」
「水面に満月が揺れる橋の下に行けば帰れる」
「橋」という言葉を聞いて僕は嫌な予感がした。しかし彼女には黙っておくことにした。ここらへんで橋があるとすれば……都橋だ。そこは観光客も多くて、パワースポットとしても人気だ。何でそうなったかは知らないけれど、地元の人は知らない人はいない。
「じゃあ、夜になったら都橋へ行こう」
「最後までついてきてくれる」
女の子はまた呟いた。
◇
夜。
こっそりと家を出て追っ手がいないか確認する。ここは田舎で街灯が少なく暗い。いつ彼らが出てきてもおかしくない状況に僕は若干のスリルを感じていた。
「今日は満月だね」
「帰れる……帰れる、わたし帰れる」
夢の中では宇宙人は死んじゃったけど、この子は帰してあげないと。そういう気持ちが僕の中に芽生えた「言葉」のせいかな?
「見つけたぞ!」
あぜ道を見渡すと、朝見たいかつい二人の男と、ライフルを持った女が一人いた。そしていっせいに追いかけてきたのだ。
「あともうちょっとで都橋だ!走るぞ」
僕がそう言うと女の子は僕の後ろを走ってついていく。
◇
都橋。
水面に満月が浮かんでいた。そして橋の中央で女の子は僕が夢で見たモコモコの宇宙人に変身した。追っ手たちもその姿を見ていた。そして男たちは手に持った銃を僕に向けてはなった。
「大丈夫。当たらない」
そう彼女が呟いた後、ライフルを構えた女が彼女の胸を撃ち抜いた。僕に向けられた銃弾は囮だったのか。
「サンプルの入手に成功しました」
男たちは無線で本部に伝えると、まだピクピクしているモコモコの宇宙人を抱きかかえた。
そして、宇宙人は未練がましそうに、命が耐える寸前にこう言った。
「この世界はあと一年で終わる」と。
都橋は架空の橋名です。




