ホーム-platform-
ホーム
1.home
2.プラットホームの略。
※この物語は「ホーム」の続編です。先に「ホーム」をお読みいただくことで、この作品への
理解が一層深まります。
引越しをして、少しは環境が変わるだろうかと期待したが…………。
やはり、駄目なものは駄目なのだな。
駄目、と言うより、無駄、だな。
……そう、無駄だ。
無駄なモノは無駄。
無理なモノは無理。
頭では分かっているのだが……。
どうにもまだ割り切れない部分がある。
いっそ、反発してやろうか。
いや、反発と言うよりも意思表示だ。意思表示をするだけだ。
まぁ反発と意思表示の線引きが俺にはイマイチよくわからないが……反発だって一種の意思表示、俺はテメェには従わないぜ、という意思表示だ。もしかして線引きなんて無いのか?
いや、でもなぁ…………。
「おい、聞いているのか!」
「え?あ、はい」
俺の下らない低回はストップした。
「ほらココ、答えてみろ」
塾講師が言った。
生徒に当てて答えさせるってなぁーんか時間のムダな様な気がするんだけどなー。
なんて思いつつ、俺は答えを言った。
合っていた。
ベクトルは俺に飯を食わせてはくれませんよ、先生。
その気になればな、今すぐにでも始められるんだよ。俺がやりたい仕事は。
安いノートパソコン一台があればね。
最悪、ペンと原稿用紙があれば、ね。
でもそれを邪魔する奴らがいる。
二名様で、おタバコはお吸いになられません。
…………どうやってアイツらを黙らせようかねぇ。
「こら!聞いているのか!」
「あぁ、すみません」
終電間際の時間まで塾だなんてねぇ。
世間の学生が羨む程の素晴らしすぎる青春だよ、まったく。
と言うか、塾も塾だ。
終電の時間まで開けてんなよな。
「チッ…………」
静かな夜のホームに、舌打ちの音が響いた。
朝と夕方のラッシュ時には、溢れ返るほどの人間がこの狭いホームに犇いていて、そいつらのことをいつも鬱陶しいとか邪魔だとか思うのに……こうも静かだと、なんだか少し寂しいような気分になる。
鬱陶しい糞共がいないのに。
……っていうか……。
「あぁ、終電ならもう行きましたよ。ダイヤの関係で、今日はいつもより少し早いんですよ」
………………あぁ、そうですか。
俺はホームに戻り、ベンチに腰掛けた。
何となく、戻りたくなったのだ。
どうしてだ。
家に帰りたくないから?
それもあるな。実際、塾の終わりが早い日でも街をうろうろしてるしなぁ。
……まぁ、親は自習してると思い込んでるみたいだけど。
父さん、母さん。
自分らの前で何もしてないからって、いい子ちゃんだなんて限らないんだよ。
ま、そんだけ子供を見てないってことだ。
見て欲しいって願望はないけど、親として客観視したときには……どうかと思うね。
まぁいいや。
「………………」
俺はケータイを開き、時刻を確認した。
日付が変わって、午前零時十五分。
さて、もう帰るとするか。
駅前の放置自転車をパクっていけばいいだろう。
俺はベンチから立ち上がろうとした。
その時だった。
「やぁ」
「うぉっ!」
いきなり声をかけられたので、俺は飛び上がった。
なんだよ、やめろよ!
「ごめん、びっくりしたみたいだな」
いつの間にか、俺の隣に見知らぬ少年が座っていた。
おそらくは俺と同い年ぐらいだろう。
「いや、いいよ。っていうか、あの、どちら様で?」
……どこかで会った事があったっけな。
それに、何か妙な感じがする。
ホームに居るのに、家に居るような……。
「家に帰りたくないんだろ?」
「え?あぁ、まぁね」
俺の質問は、スルーされた。
「どうしてわかったんだ?」
「たしかに、あの家族は嫌だろうね。お前に言うことはいっつも同じだ。勉強、大学、将来、その他糞ワード多数。……そうだろ?」
俺の質問は、またスルーされた。
無視すんなよ、とも言えず、俺は会話を続ける。
「まぁね。まったくその通りだよ。っていうか、ホント、何で知ってんだ?」
「そんなうざったい親のもとへは帰りたくない、と。概、そんな感じだろ?」
俺の質問は……また……スルーされた。
というかマジで何でコイツこんなに知っているんだ?
俺の疑問はそのただ一つだけなのに……なぜ…………。
「ん?どうかしたか?」
どうかしたか?
って……あんた……。
「いや……何でも」
「じゃぁよかった。ま、話しを続けようぜ」
そう言って少年は続けた。
「お前は家に帰りたくない。それはウザい親がいるから。だろ?でもな…………お前ん家でお前の帰りを待っているのは、親だけか?」
まぁ親がお前の帰りを待っているのかどうかは知らんけどねぇー、と、少年は付け加えた。
「どういう意味だ?」
「…………さぁね」
少年は答えた。
俺の問いに。
それにしても……こいつ、どこかで会った事があるような……。
「………………」
俺は少年の顔を横目でさりげなく見つめた。
「何?俺は男に×××されたり×××たりする様な趣味は―」
「違うよ!」
俺は少年の顔から目を離した。
少年は笑った。
そして立ち上がり、尻をぱんぱんと叩いた。
「ま、そういうことだ。んじゃぁ俺はこれで」
少年はホームから出て行った。
後には、俺一人が残された。
途端に、寂しい空気が自分の周りに、どっと流れ込んできた気がした。
もとのホームの空気に戻った。
あの少年の持っていた空気―家に居るような空気は、もうどこにも残っていなかった。
……そういう、ことか。
「………………」
俺はケータイで時刻を確認した。
さすがに、もう帰らなければいけない。
親に不審がられないためにも、そして…………。
あいつのためにも。
どうも、蒼山です。
あの……念のため言っておきますけど、決してネタが切れたというワケではありませんから!
苦肉の策で続編、的なコトではありませんから!
そのへん……ご、ご理解…………いただければ……と……思い…………ばたん。