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屑鉄のジャンクノート  作者: ハムカツ
異世界召喚編
5/24

2-1

2日に1回と言ったな、あれは嘘だ。

という訳でストック切れるまで毎日更新に切り替えてみます。


「まずは手持ちにある魔導機兵を全部見せてくれよ」


「分かった、じゃあついてきて」



 階段を上がると、大体中世ヨーロッパ風味の貴族の邸宅と

聞いて一般的な人間が想像する廊下が広がっていた。


 窓の外には月明かりの下に山に囲まれた盆地とそれなりに

栄えた村…… というには規模が大きな集落の様子が見える。



「やっぱり異世界召喚やるなら深夜って事か?」


「深夜の方がノイズが少ないからね、術式が安定するんだ」



 彼女はガイトを先導するように前を行く。レオと一緒に

向こうにいた時と同じ距離感。普段は一歩先に出てこちらを

引っ張ってくれるのが何とも心地いい。



「あ、そういえば確認しときたいんだがよ。基本的には

 VRゲーム【ドラグーンエイジ】と同じ世界観……

 じゃないな、世界情勢って事でいいのか?」


「うん、殆ど同じだと思ってもらっていいかな?

 ただゲームよりは独立傭兵をやるのは難しいと思う」


 

 【ドラグーンエイジ】においてプレイヤーは貴族に

仕える騎士として魔導機兵を駆り、領地に襲い来る竜と

戦う立場になる。


 また名声値を貯めることで貴族になる事も出来る。

実際にレオはゲーム中で名声値を貯め貴族権を得て居た。


 他にもそういう権威的なものを嫌うプレイヤーが

名声値を払って貴族の後援を得るという形で傭兵として

活動する事も出来た。


 しかし現実的にはコネや実績もしくは互いの利害関係

からそう簡単に傭兵になる事は出来ないのだろう。



「この領地が存在するのはプラティナウス諸侯連合国……

 植生から見て西側ってことで間違いはないんだよな?」


「そうだね、正直ゲームの時にホームにしてた中央の方には

 殆ど顔を出してないから実感はあんまりないけれど……」



 窓の外に広がるのは広大な針葉樹が敷き詰められた山々。

アメリカ西部の自然公園に行けば恐らく似たような光景が

見えるのかもしれない。



「中央の方にも援軍は頼めないんだよな?」


「その辺はゲームと同じ。領地を持つ貴族はそれを自らの

 武力で守る必要がある。動くとしても家が壊滅した後に

 周囲の家を支援する位じゃない?」



 プラティナウス諸国連合国は一つの国家として扱われて

いるが実際の処日本の戦国時代一歩手前の状態である。


 竜という外敵が存在している為、常に争い合う事は無いが

隙さえあれば領地をかすめ取り、場合によっては同じ国内の

貴族同士が戦争することすらありえある。



「しかしまぁ、レオだったらもうちょっと上手く立ち回れた

 気もしなくはないんだけど、誰かに嵌められたのか?」


「うーん、ぶち壊したくなるようなことをやられたから

それを受け入れれば楽だったんだけどどうしてもね?」



 何があったのか聞くか聞かないか、一瞬悩んで止めた。

本当に必要なら話してくれる信頼感はある。それにレオが

何をやったとしても受け入れる自信もあった。



「とりあえず、今の手持ちの戦力で目の前の群を倒せれば

 万々歳って認識で良いんだよな? 他に対応する相手が

 いるとかそんなのは?」


「正確には群の主である中位竜、アレを倒せればひとまず

 目標達成かな。残った下位竜は数が多いだけのザコだし、

 それ以外に攻めてくる敵は今の処居ないからね」


 

 誰だってこの規模の群が現在進行形で襲っている領地は

狙わないとくるりと振り返りながら少女は言葉を続ける。


 レオと同じトーン、その上でレオとは違う何かを乗せて。

一瞬その少女が誰なのか分からなくなりそうになってガイト

は頭を振った。



「どうしたの、ガイト?」


「いや、良く見ると今のお前は美人だと見惚れてな」


「なっ――!?」



 自分の動揺を軽口でごまかそうとしたら、何故かレオの

顔面が赤く染まった。どうしても相手がいなかったら結婚

しようという冗談にだって笑って返していたはずなのに。



「え、ちょ――!? ガイトっ!」


「ああ、そうか。女になったから洒落にならんと……?

 すまんすまん、冗談だ親友のケツを狙う趣味は無い」


「もう、僕はもう女の子なんだよ。そういう冗談を

 気楽に振られると色々困るというかなんというか」



 まだなんとなく顔が赤い。昔クラスメイトに自分達の

どちらかが女だったら理想のカップルなんじゃないかと

からかわれたのを思い出す。



「……女の子だって思ってる?」


「どうだろうな?」



 銀髪赤目のツーサイドテールの美少女なのは間違いない。

ただ中身が女なのかは分からない。レオである事は確実、

けれど男のままなのか、女になったのかは分からない。



「じゃあ、折角だし」



 目の前の少女がスカートのすそをつまみ、ギリギリの

高さまでゆっくり引き上げていく。



「女の子かどうか試して――へぶっ!」



 危ない領域に届く前にチョップ。完全に反射だった。

目の前の美少女のスカートの中身は確かに見てみたいが

レオのスカートの中身は見たくない。



「うー、痛い。ガイトのチョップは洒落にならないから……!」


「別に俺は、レオが男でも、女でもどっちでもいい」



 ガイトはレオの前に出る。ゲームと同じ魔導力の匂い。

アドレナリンと機械油とハッカをまぜこぜにした独特の

香りが廊下の先から漂ってきている。



「けどな、女をやるなら考えろ。頭悪く切り売りするのは

 幻滅ってレベルじゃないからな。俺は冷めるぞ?」



 後はそれを辿っていけば目的地に到達するだろう。

レオもチョップのダメージから回復したようでガイトを

追って歩き始めた。



「……もし、僕が女としてガイトに惚れてるとしたら

 それにちゃんと、男として応えてくれるって事?」


「お前がちゃんと、女をやるなら応えてやるかもな?

 俺にとってお前はレオだけど、一度死んで16年も

 生きたってなら変わってる部分もあるだろうしさ」



 しばらくの沈黙。ただ昔の様な互いに分かり合った静寂

では無くなんとなく座りが悪い。互いの関係が変わって

少なくてもレオからの距離感が変わったのかもしれない。



「えっと、あの…… さ?」



 おずおずと少女が話しかけて来る。



「なんだよ?」


「そっちは魔導機兵の研究室で、見せたい格納庫はこっち」



 指をさす方を見れば横道があった。単純に研究室の方が

近くて魔導力の匂いを濃く感じたのだろう。


 しまらないなと頭をかきながらガイトは改めてレオに

先導されて格納庫の方に進むのだった。


次話の2-2は2016年01月17日(日)に投稿予定です。

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