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屑鉄のジャンクノート  作者: ハムカツ
魔王復活編
22/24

6-2



「しかし、女男爵様も無茶を仰いますなぁ……」


 

 ブレイズがやって来た翌日、バリウスは自動人形3体

が駆る魔導機兵を率いて、領地東側に広がる大荒野付近

の偵察を行っていた。


 機動力を要求される任務である為、参加する機体を

エアリズで揃えてはいるがバリウスの機体を除けば全て

製造から30年以上経過した骨董品である。


 まだまだ使える状態ではあるものの格上相手の戦闘で

主力として使えるレベルでは無く、そもそも操縦者が

人間では無く自動人形である為柔軟な判断も期待する

ことは難しい。


 時速100km程度の低速で赤茶けた荒野に足を踏み

入れる。バリウスに与えられた司令はハグマール子爵の

率いる騎士団をいち早く発見し、可能かな限り足止め

する事。


命までかける必要はないと言われている上でブレイズ

から確認する範囲では他家の平民を無礼打ちとして

その場で殺すタイプでは無いと確認は取っているが

場所の問題もあり二重の意味で竜に襲われる可能性

も否定する事は出来ない。



(まずは秘密兵器とやらを用意するまでの時間を稼げば

 良いって話らしいが、女男爵様は一体どうやって何を

 用意するつもりなんだかな……)



 予測される敵の数は上位魔導機兵1、中位魔導機兵3、

下位30機弱…… 仮に辺境伯子息が味方なったとしても

数も質も根本的に不足している。新たな召喚者を用意

したとしても下位魔導機兵、それも30年物の旧式では

十分な戦力として使えない。


 一方的な蹂躙劇にならないようにする為には最低でも

上位魔導機兵に匹敵する戦力を用意する必要がある。

そうすれば最低でも敵の主力と相打つという形で脅しを

かけて拮抗状態がを作りだせるのだ。



(とりあえずガイト様にそれなりの機体を用意出来れ

 ばそれこそ上位魔導機兵だって倒せるだろうけどな)



 自分のように下位のトカゲや飛竜を倒すのが精々の

二流の騎士とは違う。文字通り物語に出て来る英雄。

かつて王都で男爵家の三男坊として騎士を目指していた

自分が憧れていた存在。


 今更それについてどうこう思い悩む程若くはないが、 

それに対して何も感じないほど枯れている訳では無い。



(今は言われたことをやればいいか。いざって時には

 旧式のエアリズを囮にして離脱すりゃ逃げるだけなら

 どうにでもなる)



 現在バリウスの機体は赤い機体を隠密行動用のマント

で覆い、腰のウェポンラックにマギナチャフを装備して

いる。よほど強力なレーダーを搭載してい無い限り逃げ

に専念したバリウスのエアリズを捉えることは難しい。



(まぁ、今は評判が悪かった俺を雇い高い給料を払って

 下さっている我らが女男爵様の為に索敵ですかねぇ)



 どんな経緯であれたとえ親殺しの疑いがあるとしても

バリウスにはローシュタイン男爵対して借りがある。

命を賭ける程では無いが、相手が胡散臭いのとついでに

めんどくさい感情と合わせても踏み倒せる物では無い。


 そんな事を考えながらレーダーに目を向けるが目立つ

た反応が無い、表示モードを通常から広域モードに切り

替え、有効範囲内に存在する高密度の魔導力ではなく

有効範囲内の魔導力の濃淡を表示する。


 自機の前方、荒野の向こう東側の方角の魔導力密度

が高くなっていた。ハグマール子爵の軍勢がこちらに

向かっているというのなら、もう距離は100kmを

切っている筈だ。


 無論予想より数が少なく近くにいる可能性も質が高く

距離が離れている可能性もあるが、最低限エアリズの

索敵範囲である30km地点より向こう側にいるのは

間違いない。



(さぁて、この反応はハグマール子爵の遠征騎士団って

 考えて間違いないな。後は密度の変化から到着時間を

 割り出しつつ対応を――)



 ふと正面のモニターに目を向けた。魔導機兵に装備

された複数の魔導結晶に入り込んだ光を合成し一つの

絵として映し出す画面の真ん中、赤茶けた大地を照らす

太陽の近くに影が動く。


 その影が徐々に大きくなり、レーダー上の魔導密度も

上がっていく。レーダーに映らない30km以上の距離

でここまでの影響を与える以上、竜でも魔導機兵でも

中位以上である可能性が高い。


 もしこれが普通の偵察目的ならこの時点で一旦下がり

自動人形が動かす魔導機兵を前面に押し出す。だが相手

がハグマール子爵の遠征騎士団の一員である可能性が

ある以上そうする事は難しい。



 舌と唇が渇いていく。死ぬかも知れない戦場で笑える

ような肝の太さをバリウスは持ち合わせていない。

 緑竜相手に武器が折れ魔導機兵の拳で殴りかかる瞬間

ガイトは確かに咆えながら笑っていた。


 そこまで考えて頭を振って思考をリセットする。自分

にそんな蛮勇が無い事はずっと前から理解しているし、

それを求めて失敗した記憶だってある。だから出来る事

を出来るように死なない範囲でやる。それがバリウスの

矜持だ。


 影が白い人型に、特徴的なゴーグルにエアリズと比べ

れば太く、ガンフォルテと比べると細い平均的な体躯。

左右に伸びた翼の端からはエーテルをまき散らし亜音速

でこちらに迫って来た。


 印象的なのは白いボディに引かれた青のライン。本来

は全身をハグマール子爵の遠征騎士団が纏う青色に機体

を染め上げる予定だったのだが何かの理由で間に合わず

識別用にラインを入れたのだろう。


 スタンディスタ、プラティナウス諸侯連合国における

最強の量産型魔導機兵であり、バリウスの駆るエアリズ

相手なら抵抗すら出来ずに一方的に撃破出来る性能差が

存在している。



 ザリザリと通信機にノイズが走る、相手が通信機を

使っているのだろうが、受け取るこちら側の性能が低く

復号が上手くいっていないのだろう。竜断砲を一旦下げ

その上で自動人形に警戒するように指示を出す。


 戦いになれば確実に負ける、しかし何も出来ない訳で

は無い。そして戦いにならず交渉になった場合ならば

強かさを見せることで多少でも有利に事を進められる。


 最初から抵抗する気もない相手と、抵抗する地力が

ある相手、交渉相手として手ごわいのがどちらなのか

説明するまでもない。



『こちら、ハグマール子爵領遠征騎士団に所属する

 トール=キリヤだ。そちらの所属を確認したい。

 繰り返す――』


「此方、ローシュタイン分家領騎士団、騎士団長代理の

 バリウス=ストラだ。ここから先はレオナ女男爵様が

 治める土地である」



 日本風の名前と中位魔導機兵という戦力を考えれば

相手は召喚者である可能性が高い。そしてミドルネーム

が無い処から考え召喚直後でこの世界における細かい

ルールを理解出来ていないと考えて良い。まずはそこを

突いて時間稼ごうと方針を固めるが――



『おいおい、下位魔導機兵に乗ったザコが出迎えかよ』


『くけけけ! そもそもローシュタイン分家領には

 それしかありませんからねぇ、仕方ないといえば

 仕方ないのですがぁ!』



 レーダー上で更に後方から2機の魔導機兵が出現。

そのままこちらに向かって近づいてくる。出力から見て

一番初めに現れた白いスタンディスタ程では無いが、

強力な機体だと理解出来る。



『2人共、この任務はお、私が子爵殿から……』


『なぁに、召喚者様は下がっていてくだせぇ』


『このくらいの雑事なら俺達で十分でさぁ!』



 バリウスが駆るエアリズの30m程先に着陸した、

トールを名乗る騎士が後方の2名を嗜めるがそれを

無視して距離を詰めて来る。真っ青なスタンディスタ

が2機バリウスのエアリズを挟むように着陸した。


 どちらも初期型で最初に現れた白い機体と比べれば

性能は低い。しかしそれでもエアリズでは対抗する事は

難しく、自動人形が駆る旧式のエアリズでは時間稼ぎ

すらままならない。


 右側は大型のハンマーとシールドを構え、左側は両手

で長砲身の竜断王を装備している。バックラーと片手剣

しか持っていない最初の一機と比べると重武装である。



『というか、こいつ無視してもいいんじゃねぇか?

 俺達はこの領地が竜に襲われてるからってやって

 来た援軍様なんだからなぁ!』


『クケケ、まずは領主の館に行かねぇとねぇ?』



 2機が臨戦態勢のままバリウスの機体に迫る。口では

援軍を名乗っているが、目の前に話せる相手が居るにも

関わらず勝手に領地に入るのは重大なマナー違反だ。

 特に援軍を理由にしているとはいえ、重武装の機体で

領地に侵入すれば迎撃されても文句は言えない。

 竜の群との戦闘で戦力不足になっている事を見越し

ローシュタイン分家領に対して圧力をかけるつもり

なのだろう。



「既に現時点で領地を襲っていた竜の群は撃退済み、

 かといってこのまま帰って頂くのも良くありません。

 簡易ですが簡単な宴の用意をさせて頂きたいと思う

 のですが、どうでしょうかねぇ?」



 まずは竜を撃破した事を伝えて、この場で待機する

よう話を進める。そもそもこんな話をするまでもなく

来訪を伝えたらレーダーで準備が整ったのを確認して

から訪問するのが基本的なマナーだ。



『ほほう、丸2日。1000km以上大荒野を踏破した

 我々に対して、竜に襲われて不安だろうと一分一秒を

 惜しんで駆けつけた我々に待てとぉ?』


『クゲケ、ここは今すぐにでも領内に案内し最上級の

 おもてなしをするのが道理というものなのではぁ?』



 しかし、青いスタンディスタ2機はそんな事は知った

事かとスタンディスタに迫る。1機はハンマーを構え、

1機はいつでも竜断砲を構えられる姿勢で進む。


 ここでバリウスが使える手札は少ない。頭を下げれば

下げた分まで押し込まれ、強気に出ればその時点で無礼

と断じて潰しにかかって来るのは目に見えている。


 召喚者以外が名乗ってないのは意図的な物でバリウス

が強きに出た時点で身分と共に名乗って失点にしたいの

だろう。



「あー、その……非常に申し訳ないのですが領内の恥を

 事になりますが。今現在竜に襲われた被害で領内に

 皆様をおもてなしする余裕がありません」



 故に押し込まれないように頭を下げれば良い。多少の

失点や難癖は無視して良い。相手に一般的な意味での

失礼を働かずに、領内に入る許可を出さない。



『あぁん、そんな事が理由になるってのか?』


『クケケ、しばらくすれば子爵様がいらっしゃります

 貴様の様な男爵領の小間使い如きは全力を持って

 出迎える準備を整えるのが筋というものでしょう?』


「そう言われましても、無い袖は振れませんしねぇ?」



 そう呟きつつ、白のスタンディスタに目を向ける。

流石に単眼(モノ)を動かすようなマネはしないが口調から

声をかけられたのは理解出来たようで、動揺が操縦桿を

通して機体を揺らした。



『お二方共、ここで強引な真似をし過ぎるのは……』


『召喚者様、俺達はガキの使いじゃないんですぜ?』


『必要な事を必要な時に揃えるのが我々の仕事です。

 召喚者様も早く手管を理解した方が宜しいかと?』



 仲間内で口論をしている間に後どれだけ時間を稼げば

いいのか確認しようとした瞬間。周囲の魔導力密度が

急激に上昇していることに気が付いた。


 その反応でこの前戦った緑竜を大きく超える存在が東の

向こう側からこっちに向かってきている事を理解する。



『ああ、だから早く事を進めろと……』


『ええ、いらっしゃってしまいましたねぇ?』



 3機のスタンディスタと同じ方向に目を向ける。

その先に土煙が見えた、レーダを確認すると時速

200km程、距離が遠く正確な数は分からないが

最低でも20機より多い事は間違いない。


 そして集団の中心に2本の塔がそびえ立っている。

高さは20m程、荒野の上に広がる空よりよりも濃い

青を纏ったそれの姿をバリウスは視認した。



「バスターバベル……」


『そう、ハグマール子爵様が駆る上位魔導機兵ィ!』


『そして30機を超える魔導機兵の大騎士団!

 その辺りに転がる、吐いて捨てるような男爵家の

 戦力とは比較になりません』



 距離が近づくにつれ騎士団の姿が露わになる。

バスターバベルと住居コンテナを中心にした輪形陣。

その全てがハグマール子爵家を示す濃い青に染められ、

バリウスの指揮する部隊の数百メートル先で停止する。


 陣形を組みかえ、バスターバベルを中心に道を作る

ように魔導機兵が隊列を組む。左右に10機づつ展開し

残りの機体は周囲の警戒と、コンテナユニットの警護に

回った。



『おやおや、この様子ではまだレオナ女男爵は俺を

 出迎える用意が出来てい無いようだな。淑女はお洒落

 に時間をかけるものと待っても構わんが……』



 チラリとバスターバベルがバリウスが駆るエアリズの

方を向く。上級魔導機兵の発する莫大な魔導力の波動が

レーダーに流れてザリザリとノイズが奔る。



『ふぅむ、そのような機体で出迎えとは余程余裕が無い

 ようだね。ふむふむ、折角だしこのまま復興の支援と

 行きましょうか』



 つぅっと汗が流れる。先に領地が荒れているからと

断った手前、ここで無理に断るのは難しい。相手が

武力を背景に強引な方法で押し込んで来ると思いこんだ

バリウスの大きなミス。


 のらりくらりと切り札を用意するまでの時間を稼ぎ、

万が一の時には借りを覚悟してブレイズ辺境伯子息の

名前を出して喰いとめる予定だったが、支援という名目

で入ってこられると辺境伯子息の名前も効果が薄い。

これなら初手で名前を出し出鼻を挫いた方が良かった。


 そもそもバリウスは何でも相応にこなすが人並み

外れて出来る事は何も無い。一般人が普通にこなせ

事を普通に出来るだけでしかない、何か手が無いかと

考えるが、何も思いつかない。このまま黙っていても

状況が悪化するだけ下手な事をしてもそれは変わらず。



『どういたのかね? ああバスターバベルの威容に緊張

 しているのか。まぁ安心したまえ、この無様をレオナ

 女男爵に伝える様な無粋はしない』



 口の中で舌打ちをするが、状況に変化は起きない。

いっそ暴言を吐いてしまえと自暴自棄になるがそれは

アグレッシブな自殺でしかない。



(ああくそ、こんなことならブラフの為に

 切り札の内容を確認しとけばよかったな)



 そんな事を考えながら、左手の操縦桿でモードを

儀礼モードに切り替えてエアリズに片膝をつかせる。

それに追随するように自動人形が駆る機体も膝をついた

のを確かめた瞬間、とある事実を思い出す。


 自動人形を運用しているのは女男爵であり、ある程度

自動で行動するが逐次自動人形から情報を受け取る事も

可能で、この状況下でそれをしていないとは考え難い。


 それでも特に新しい指示が出されないのは何故か?

先程よりも冷たい汗が背中に流れた、自分が囮である

可能性。バリウスが対応を行っている間にロックハート

領に離脱する。可能性としてはゼロでは無い、なにせ

あの女男爵は実の両親を殺している疑いがあるのだ。


 赤の他人、それもどこにでも居るような二流の騎士

崩れを見捨てないという保障はない。


 だが、しかし、グルグルと頭の中に悪い想像が巡り

その動揺が操縦桿を通じてバリウスの赤いエアリズを

震わせて、その瞬間通信機の向こう側から女男爵の声

が聞こえた。



『いやぁ、状況は把握しているけど本当にごめんね』



 気楽な、本当に朗らかなリズムで女男爵はバリウスに

詫びの言葉を告げる。ギリリ、と心臓が締め付けられる

ように痛んだ。



「そりゃ、どういう意味ですかい。女男爵様」


『君を囮として――』



 最悪の想像が当たってしまい、バリウスの目の前は

真っ暗になった。いっそこの場で裏切って投降しようか

と考えるがハグマール子爵に対して切れるカードが何も

無いことに気が付いた。女男爵が何を用意しているのか

理解していない。


 領内の知識に関しては、噂を聞く限りハグマール子爵

が行う政治に自分の知識は何の役にも立たない。長期の

治世においての効率を極めた手法は短期の利益を求める

相手のオーダーとかみ合わない。



『――切り札を魅せる為の見せ札として使った事をね』



 どういう意味と尋ねようとしたが、その言葉が口から

飛びだす前にレーダー上に爆発的な反応が現れる。西側

バリウスから見て後方、領内に存在する鉱山の方角に

目の前にいる上位魔導機兵を超える何かが出現しそちら

側から黒い粒子が広がっていく。


 バリウスだけでなく、ハグマール子爵の遠征騎士団も

混乱に包まれ子爵が乗って居るであろうバスターバベル

も僅かに身じろぎをしている。


 バリウスもたまらず後ろを向くと、天に向かって青い

空を引き裂くように黒いエネルギーの奔流が突き立ち、

闇より暗い魔導力の粒子があふれ出す。


 その魔導力が一気に収束して消えた後でバリウスは

そこにある筈の鉱山が一つ消えて居る事を理解する。


 

 そして爆音が大気を震わせ、消えた鉱山の方角から

大気を切り裂き漆黒の魔導機兵が現れた。


 黒い装甲の上に走るシルバーのライン。肥大した右手

には機体の全長である10mをはるかに超える巨大な槍

を構えている。左手には巨大な爪と巻き取り機のような

機構。両足は馬の様な蹄、その背には一対の異形の翼。


 ディテールこそメカニカルでスチームパンクな雰囲気

を纏うが、総体として見るならば巨大な槍を持った悪魔

以外の何物でもない。



 そんな化物染みた魔導機兵が一切減速をせずバリウス

とハグマール遠征騎士団との間に全力突撃を実施した。


 反応出来たのは3機のみ、バリウスは後ろに下がり、

白いスタンディスタは他の2機を庇うように引き戻して

前に出て、ハグマール子爵のバスターバベルは衝撃に

対して魔導障壁を展開する。


 そして着弾、暴力的な衝撃波が赤と青の騎士団を襲う

対応した3人はそれに耐えきるが、自動人形のエアリズ

は機体がバランスを崩し、ハグマール子爵の遠征騎士団

の下位魔導機兵の多くは吹き飛び転倒してしまった。



『あー、テステス、マイクテスト。通じてますか~?

 ミ・ナ・サ・マ! 聞こえてなかったらそう言って

 プリーズっ!』


 

 あの黒い魔導機兵は出力から見ると中級最上位、

場合によっては一部の上級魔導機兵を凌駕している

可能性すらある。確かにこれは切り札、目の前に広がる

遠征騎士団相手に致命的な被害を与えられるだけの力が

あると感じられる程の威圧感を持っている。



『それでは通じてるという前提でご挨拶の方を一つ

 本日はお日柄も良く、ハグマール子爵殿に対しては

 遠路はるばる我が領地を救う為にわざわざ危険な

 大荒野を渡って下さり有難うございました。我が

 主人レオナ=L=ローシュタインも心からの感謝を

 申し上げて居る事をお伝えいたします』



 言葉遣いは辛うじて丁寧にしようという意図が見受け

られるがその内容は完全に挑発だった。自ら名乗らず

直接ハグマール子爵に声をかけ、その上で本来格下で

あるはずのレオの言葉を間接的に伝える。


 贔屓目に見てもこの場で殺されても文句を言えない

レベルの無礼だった。事実先程までバリウスに詰め

よっていた青いスタンディスタの片割れが竜断砲を

構えて発射した。



『なっ!? やめ――』



 白いスタンディスタが止めようとするが既に剣弾は

発射されて真っ直ぐに黒い魔導機兵に向かって飛ぶ――

しかしその一撃は開かれた左手のクローによって無造作

に叩き落とされてしまう。


 その剣弾が大地に落下する前に土煙が上がり、黒い影

が竜断砲を構えた青いスタンディスタに向かって飛ぶ。

着地することなくそのままの勢いで正面から衝突。

 そのまま押し倒し、足掻こうとする前に巨大なクロー

で胴体を左右から挟み込む。



『失礼、俺の後ろに竜でも見えましたか? まぁどっちに

 せよこっちに向かって竜断砲を撃ったんだ。こうなる

 事もある程度は予想済みよなぁ?』



 ギリギリとガイトの魔導機兵はクローに力を込める。

青いスタンディスタのボディが歪み、その隙間から

エーテルの粒子が漏れだし、中のパイロットが小さな

悲鳴を上げた。周囲の機体が動こうとするがガイトは

それを察知して加える力を上げて牽制し――



『まぁ、言いたい事は一つ。竜の群を撃退したとは

 いえまだまだ領内が安全とは言い切れない訳で、

 あんた達だって今この場で突然に竜に襲われたい

 とは思わないだろう?』



 だから今すぐ帰れとアーク=M=ハグマール子爵に

対してガイト=オードは真正面から武力による脅迫を

叩きつけるのだった。


2016年02月13日…… に更新するにはストック不足なので次回更新は

2016年02月18日(木)ということで。KB的には前回と同量は書いてますし!

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