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バリウスとミリリリアがトカゲ40匹を壊滅させる
5分ほど前、ガイトは空中で10匹の飛竜に対して
突撃を開始した。
既に保険として用意されていた耐魔導力マントは
使い切っている。一撃当たればそこで終わり。
正面から1匹、左右に展開して時間差で攻める2匹
更に周囲に展開した飛竜がブレスを吐くチャンスを
狙って上下に広がって包囲網を形成する。
「その顔面にランスチャージっ!」
加速度×質量で一番手前の飛竜の頭を潰す。
ブレスを吐かずに魔導障壁の出力に回していたようだが
白兵戦なら魔導機兵はそれを中和し無効化出来る。
唯一の守りを失った飛竜は亜音速で突撃するトラッシュ
アッシュの運動エネルギーを全身で受け止めて爆発四散。
血よりも赤い赤色エーテルをまき散らし消滅する。
そこに二の矢としてもう1匹が飛び込んで来るがその
突撃は空を切る。初撃で派手にエネルギーを消費する事で
ガイトは機体を減速させ攻撃タイミングをずらしたのだ。
「まずは1匹……っ!」
そのまま突撃してきた1匹とすれ違いながら、
ガイトはレーダーと視界と直感で敵の位置を把握する。
これまでの経験と周囲の飛竜の動きから戦況を予測。
このまま戦えば後4手で詰みだと理解する。
「ちぃっ! 左かっ!?」
まずは左側に回った竜が吐いたブレスを上昇して回避。
これで先程のチャージで失った高度と速度の回復を図る。
次に再び突撃を仕掛けてきた飛竜の目の前にランスを
置いて攻撃を逸らす。十分な加速度が乗らない攻撃では
流石に飛竜の魔導障壁は貫けず僅かなダメージを与えた
だけで終わってしまう。
「上手いことカウンターは入らないか……っ!」
もう1手足掻く余裕はあるが、あえて回避を選ばず
左から回り込んだ飛竜の放つブレスが直撃するコースに
滑り込みあえて攻撃を誘った。
『お見事です、狙い撃ちます』
発射直前、自動人形のアインが放った剣弾がブレスを
吐こうとした飛竜の胴体を貫く。何が起こったのか理解
する事も出来ずにそのまま地に落ちた。
ゲーム内でも一般的に知られている自機を囮にした
このコンビネーションは魔導障壁の防御さえ貫ければ
一撃で倒せる飛竜に対しては絶大な効果を発揮する。
そして判断力が低い飛竜相手にこれを行えば行動
パターンの隙を付けるのが最大のメリットとなる。
確実に勝てるパターンを裏切られた飛竜達の
動きが一瞬固まった。
『援護します、高度を稼ぐ良い機会です』
「分かったァ!」
その隙をついてその場で100m程上昇し、
十分な速度と高度を手に入れる。
追撃しようと数匹がブレスを放とうとするが、
残り2体の自動人形による牽制射撃が食い止めた。
(レオは―― どうだ?)
機体を反転させ、隻眼の瞳を動かし森を見下ろす。
ガイトが緑竜を切り落とした地点から数百メートルの
木々が倒れている。
そして一種の闘技場と化した空間で、中位竜に対し
一機の魔導機兵が立ち向かっていた。
機体の名はガンルージュ。ガンフォルテの装甲を削り
機動性と格闘能力を向上させた魔導機兵であり、飛行能力
こそ持たないが十分な機動性と装甲を誇る生存性重視な
レオの専用機である。
緑竜は魔導咆哮を放とうとするが、その度にレオの駆る
ガンルージュが狙撃用の竜断砲を放って牽制。ヘイトを
稼ぎ主戦場に攻撃が届かないようコントロールしている。
(動きから見る機体の損耗無し。レオが予備弾倉を
持ってない場合、時間稼ぎは2~3分が精々か?)
『ガイト様、レオ様は現在中位竜相手に使用できる剣弾の
予備を持っていらっしゃいません。2分でこの場の敵を
殲滅して下さい』
嫌な予想が当たる。アインの行動ルーチンはレオが
組んだ物であり彼女の判断はレオの判断と等しい。つまり
予想通りレオの状況に余裕はない。
「じゃあ1分でケリを付けてやらぁっ!」
高度600m、速度は最高速度一歩手前、敵に対して
十分な速度と高度の優勢は得られている。更に支援による
カバーも十二分。後はこの優位を生かすだけだ。
「まずは――っ!」
降下を開始し追撃して来た一匹をすれ違いざまに両断。
急造の突撃剣槍を支える柄が付け根から軋むが許容範囲。
そのまま位置エネルギーを速度に変えながら降下を続け
二匹目の頭を蹴りつける。ペダルを通し鈍い抵抗が伝わり
胴を踏み抜かれた飛竜はその場で絶命した。
「あと6匹!」
下方に4匹の飛竜を確認。そのままの速度で突っ込んで
2匹を槍で突き飛ばし1匹を足蹴にし推進方向を上に。
「一発は防ぐ、アイン。狙える方を落とせ!」
そして残った一匹の首を左手で掴んで振り回す。
トラッシュアッシュの細腕に過剰な負荷がかかるが
慣性制御で強引にそれを打ち消す。
「Gru、Gr!?」
意識と感情のある脳と、魔導力を生みだす魔導炉を
繋ぐエーテル管を圧迫され竜の力が弱まる。このまま
絞め殺すことも出来るのだがそれでは意味が無い。
甲高い金属音と共に1匹の飛竜がアインの放った
剣弾に撃ち抜かれ、予定通りに最後に残った1匹が
ガイトに向けてブレスを放つ。
「そんなもんがっ!」
だが予定通りにガイトはトラッシュアッシュの左手に
掴ませた飛竜の体でその一撃を受ける。障壁を貫通した
ブレスが握った飛竜の肉を半ばまで貫くが機体にダメージ
は届かない。
「これで――」
最後の1匹に向け、防御に使った飛竜を投擲。
それを避けようとバランスを崩した処に突撃剣槍を
叩き込んで胴体を撃ち抜いた。
「――ラストっ!」
そう叫びながらレオと緑竜の戦いに目を向ける。
まだどうにか、レオの駆るガンルージュはダメージを
受けてはいない。
しかし、上から見れば徐々にブレスによって周囲を
薙ぎ払い行動半径を広げている緑竜に対して追い詰め
られているのは明白だ。
『ガイト! 頼む、後1分持たない!』
レオの助けを求める声が聞こえる。けれどそこには
悲壮感や絶望は無い。単純な信頼、ガイトが来れば
状況を切り返せるという確信に満ちた言葉。
それに対してガイトは――
「待ってろ、30秒でそっちに向かう!」
これまで以上の死地に向かうと理解しながら、その上で
獰猛な笑みを浮かべ、決戦の舞台に向け突撃を開始した。
次回更新は2016年01月23日(土)になります。




