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遅少年と早少女  作者: 粉巻 まひる
ゲーム開始
23/25

そのゲーム、裏アリ。

このガラッと雰囲気の変わったウサギに、どう反応したらいいのか分からず、ただ痛々しいものを見る視線を向けた。


「そんな、ノリの悪いお前らにサービスをしてやろう」


ウサギがいかにも悪そうな顔をして、笑う。

それと同時に自分の前にメニュー画面が表示された。

少年の方を見てみると、彼も私と同様に画面が表示されていた。


「一番右下に注目だ」


ウサギが言った場所には、『save』とかかれたボタンがある。

そういえば、セーブしてなかったな……。


「全員見てるな?じゃあ、行くぞ」


いやな予感がした。というか、そんな予感しかしない。だから、ボタンに手を伸ばす。


「ポチッとな」


私がセーブボタンに触れたと同時に、セーブボタンはその場から『消えた』。

「なっ!?」と呟く少年の声が聞こえる。予感はしていた。でも、だからって……。


「驚いてるみてぇだなぁ。言っとくが、それだけじゃねぇぜ?リセット、そして、ゲームをやめることもできないようにした」


今度はあまりのことに声も出なくなった。


「おおー、どのプレイヤーも顔面蒼白だなぁ。怒って、モノを投げつける奴もいてるなぁ。まあ、どっちにせよ、そういうこった。言っておくが、これはこのゲームの設定でも何でもない」


ウサギは片唇をクイッとあげた。


「さぁて、このままお前らがゲームをし続けたら、現実世界のお前らの体は一体どうなるだろうな?」


ゲームをやっているから、体は関係ない、なんてことはない。ゲームをしている間も、心臓は動き続け、普通に生きている。そう、だから、ずっとゲームの世界に居続ければ、栄養がとれていない体は死に至る……。ザアーッと血の気が引いていく。


「まあ、全員分かったみテェだが、そう、体は死んじまう。でも、誰かと一緒に生活してるヤツなら、相手が病院に連れて行ってくれるかもしれないな。そうすれば、生きることはできるだろう」


ホッと胸を撫で下ろす。私は父、母、弟と共に暮らしている。きっと、気づいてくれるだろう。

ふと、少年の方を見る。左手が震えており、顔は真っ青だった。……一人暮らしなのかもしれない。


「でも、一生意識は戻らない。……なんてのは、さすがに嫌だろうなぁ?」


嫌に決まっている。家族に心配はかけたくない。


「俺だって、そこまで悪いやつじゃあない。ある事を成し遂げられれば、お前らを元の世界に戻してやろう」


ゴクリ、と唾を飲む。汗がツーッと流れ、着ている服に落ちる。


「その、ある事っていうのはな……」



ウサギが怪しく笑った。

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